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102 第一試合

「第一試合 関東校三年次席 星川楓 対、関西校二年主席 石郷司。両生徒、入場してください」


そうして入場してきたのは、片や厳つい顔立ちで全身を覆う鎧を着こんだ男子と、片や軽装で弓を背中にしょった女子。しかし、その姿には少し見覚えがあった。


「...あの子、俺に破魔(ディスペル)使ったやつだな」


そう、俺が少し前に体育館に不法侵入した時、俺の虚影を見破り、それを解除した女子生徒。特に思うところはないが、どのようにして森羅万象の感知をすり抜けたのかと、虚影を使った状態の俺をどのように察知したのかがとても気になる。


両者のレベルは魔力だけで見ると、星川さんが90くらい。石郷くんが60と言ったところ。まぁ、武器や防具的に能力値の偏りの分を考えれば、互いにレベル70~80くらいだろう。


少しワクワクしていると、試合の行われる範囲の舞台を覆うように結界が形成され始めた。学校に張られていたものと同種の結界のようだ。そして、結界が完成すると同時に審判らしき人が合図をする。


「礼」


両者が開始線まで距離を詰め、軽く礼をする。


「始め!」


そして、試合が開始された。


「うおぉおおおおおおお【一閃】ッ!」


【跳躍】


始めに動いたのは石郷くん、腰に下げたショートソードを片手に突貫するように距離を詰める。しかし、星川さんの方はそれを見切っており、躱したうえで更に距離を取った。


【風よ導け】


そして、星川さんは背負っていた弓を手に取り、流れるように弓を矢筒から抜いて射る。その弓矢からは風の力.... 魔力よりも純粋な力が感じられた。


「マジか! 精霊!?」


それは確かに権能に類する力、俺の扱うアネモイの風雷支配と同種の力だ。大精霊顕現を用いたような完全な魂力ではないが、風の精霊の力であることに変わりはない。


精霊.... 大精霊ではないが、風の精霊と契約しているのか。確かにそれなら俺の虚影を見破ることは容易だろう。この前のオロチのように、物理的な接触による感知までは虚影で欺くことは出来ない。オロチは毒沼で接触していたが、彼女は風での接触で虚影を見破った可能性が高いな。




放たれた風の矢は、石郷くんの急所を的確に狙っている。だが、彼もこの交流試合に選出されるに値する手練れのようで、その一撃をスキルによって躱して反撃に転じていた。


「【ブリンク】ッ!」


彼は瞬間移動のように、元居た場所から10メートルほど離れた位置に出現した。ああいうスキルは緊急時の回避に便利で、俺もオーク相手に”空蝉”などをかなり多用していた記憶がある。


そして、その場所は星川さんを捉えるのに十分な間合いであり、移動からの流れるような攻撃が彼女に迫る。しかし、そこで予想外のことが起こった。


「ぐッ!【投擲】ッ」


明後日の方向へと飛んで行ったはずの矢が、旋回して背に突き刺さったのだ。彼はなんとか手に持っていた剣を投擲して一矢報いたが、その隙に星川さんは跳躍で距離を取る。



あれは、風による追尾? 興味深いな。


俺の扱う銃撃にも応用して、追尾弾のようにできればかなり強いだろう。もちろん制御は難しいだろうが、撃った後はアネモイに制御を任せれば... イケるなこれ。


そんな考察しているうちに、石郷くんは負けじと攻めに転じていた。


【阿修羅】【武器庫】


そのスキルを使った瞬間。彼の背から四本の半透明な腕が飛び出し、更にショートソードが四本と、盾が二つ出現する。その姿はまさに阿修羅像のようであり、盾で体を守りつつ星川さんへと迫る。


対する彼女は石郷くんに対して矢を放つが、その攻撃は盾によって易々と防がれた。そして彼の間合いに星川さんが入った瞬間。


「【乱戟】いッ!」


スキルの補正が乗った連撃が星川さんに迫る。しかし、彼女は冷静に迫る剣の雨を対処した。


【レインアロー】【風よ守れ】


上へと向けて放たれた一本の矢が、分裂して雨のように降り注ぐ。石郷くんはその矢を頭上に展開した二重の盾によって防ぎつつ、剣戟を星川さんへと浴びせる。しかし、その猛攻も風の障壁で防がれていた。


スキルによる攻撃が終了すると、その間を結技によって埋めて更にスキルを発動する。そんな連撃によって障壁がひび割れて破壊されるが、次の瞬間にはその中から彼女は姿を消していた。


【エスケープ】


石郷くんのものと同じ、短距離転移のスキルなのだろう。それによって星川さんは、矢をつがえた態勢のまま彼の背後に転移していた。そして、すぐさま一矢が放たれる。


【剛弓】【風よ穿て】


今度は追尾ではなく、純粋に威力を強化する風の力が矢に宿り、それによってスキルによる一矢が更に速度を上げ、無防備な石郷くんの背中に突き刺さった。


ビィーッ! と、試合終了のブザーが鳴り響き、会場が歓声に包まれる。


石郷君もかなり善戦していたが、星川さんの戦い方が終始安定しており、完成されていたのが勝敗を分けた戦いだった。彼も、もう少し突破力のある攻撃スキルを手に入れていれば、結果は変わっていたかもしれない。


個人的には、かなり参考になる戦いだったな。



「いやぁ、とても素晴らしい戦いでしたね。お二人はどう思われますか?」


司会者席に座った実況の人の質問に、百武さんが答える。


「星川さんの戦闘スタイルの完成度の高さに驚かされましたね。特に風魔法による弓術の強化と防御や移動などがとても素晴らしい。本来は隠れた状態で使われることが多い弓術で接近戦を行えるというのは大きな強みと言えるでしょう。しかし、攻撃系のアクティブスキルを多用しているように見受けられましたので、長期戦になりやすいダンジョンでの探索ではどのように戦っているかが気になります。そして石郷くん、彼のスキルによる手数の増加はかなりの強みです。しかし間合いを詰めない限りその強みを発揮することは難しいので、移動系スキルをダンジョンで多く試してみて、スキルレベルとレパートリーを増やすといいかもしれません」


「ありがとうございます。では、第一試合からアツい試合を魅せてくれた星川さんと石郷くんに盛大な拍手を! そして、続けて第二試合を始めます!」






第二試合以降は一部省略するかも


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評価     喜び Lv.3

感想     歓喜

レビュー   狂喜乱舞

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― 新着の感想 ―
ダンジョン攻略してから主人公が主人公してない気がする 隠密破られた時も安易に暴くのは命を危険に晒すぞ!と言いながら強者ムーブで全員威圧で気絶させるとかして欲しかったかも 逃げるだけってなんの学びもなく…
なんというか・・・武闘大会をやらなきゃいけない呪いが ある世代にはかかってるんじゃないかなぁ・・
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