101 全国探索者高校交流会
一時間ほどバスに揺られていると、八角形をした銅板葺き屋根の建物、武道館が見えてきた。
「でけぇ」
バスでの移動時間はなかなかに苦痛だったが、やっとその時間も終わりという事だ。
そして、バスが停車すると先生の先導に従って館内に入っていき、着いたのは二階の観客席。周囲の席もかなり埋まっており、人数的に見てうちの高校だけが来ているという事ではなさそうだ。
全国探索者高校交流会という名前の通り、日本にある探索者専門高校の内の三校である、関東校、関西校、東北校が集結しているのだろう。
大体の座席が埋まったころ、時計が10時半を指すと同時に二人の男女と、彼らを守るように立つ数人のスーツが中央に向かって歩いてきた。そして、男女を見た周囲の学生たちに衝撃が走る。
その姿は俺も知っている人だった。
一人目は、いつもお世話になっている百武さん。利益に超貪欲という点を除けばだが、最近は気軽なノリで話すことも増えたことで近所のおっさん化している彼。しかし一応は世間一般の肩書として英傑序列71位の”律令”や、日本探索者組合の会長という物を持つビックネームだ。
そして二人目は、いつぞやの調停者の円卓で俺が一方的に認知していた英傑序列六位”八百万の巫女”。百武さんも霞むほどに、その美貌と覇気は研ぎ澄まされていた。もちろんその名声も、世界に両手で数えるほどしかいない50階層突破者なので、ここにいる誰もが彼女を知っているだろう。
「静粛に」
SPらしき人の中から、一人の小太りな男性が顔を出して話を始めた。
「これから、第一回全国探索者高校交流会開会式を始めます。今日は皆さんの日頃の精進のお陰で、武道館を貸し切っての開催と相成りました。また、特別ゲストとして”律令” 百武 勇仁様、並びに”八百万の巫女” 神々廻 澪様にお越しいただきました」
そして、男性の手に持っていたマイクが巫女さんに手渡される。
「EXランク探索者、神々廻澪です。今日は交流会の最後に私たち二人がエキシビジョンマッチを行う予定ですので、是非その見聞を己の力に変えてください」
「Sランク探索者、百武 勇仁です。今回の交流会は他校の生徒とも腕を競えるいい機会となるでしょう。この機会を逃さないよう、参加者はその力を出し切り、観戦者はその戦いを目に焼き付けて、皆さんの活躍を期待しています」
うん、声も顔もまんま百武さんだったわ。
二人のゲストの紹介が終わると、先ほどの男性にマイクが戻され、交流会の説明が続く。
「今回の交流会では、各校から選出された上位8名のトーナメント戦が行われます。また、武装は各選手が迷宮で扱う本物の武器、防具を使用可能であり、更にスキルの使用も許可されます。そして、それを可能とするのがこのアイテムです」
そういう男性の手には、腕輪形のアイテムが握られていた。遠目から見てもかなりの魔力を秘めており、AランクかBランクくらいのマジックアイテムだろう。
「こちらは使用者のダメージをHPと同じ程度に肩代わりしてくれるという物であり、効果の数値が五割を切ると赤く発光するとともに、信号を発して試合終了のブザーが鳴ります。この最新技術は試験的に導入されたものではありますが、既に多くの検査をパスしているため安全性については問題なく、新時代の新たな競技としての期待が高まる探索者同士の戦いを安全に行うためのアイテムとして導入されることも決定しております。選手の皆さんは、安心して試合に臨んでください。では、これで開会式を終了します」
開会式も終わったところで、周囲の人たちの多くがトイレへ行ったり、知り合いと話したりしている。そうして11時になったところで第一試合が開始された。
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評価 喜び Lv.3
感想 歓喜
レビュー 狂喜乱舞
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