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98 酒の席では気が緩む


事情聴取も無事に終わり、慰謝料とは別にオロチの魔石を換金した分を配分するために、八重樫さん、因幡さん、俺の三人は受付に集まっていた。


「とりあえず、私たちは今回助けられていただけなので、最低限の配分でお願いします」


「攻撃も全く通った感じしませんでしたし... ちなみに、あのボスのレベルはどれくらいだったんですか? 先生?」


「んーっと... 結構強かったですね。毒に当たってたら死んでたかもです」


そうしてパーティー報告も終了し、あとは解散... と思っていたのだが。



「打ち上げに、どこか店でも行きませんか? 臨時収入も入りましたし」


八重樫さんの提案である。


うちあげ...? と、なっている俺を差し置いて、因幡さんもそれに賛成のようだ。


「良いですね! 地下一階のお店とか.... 行ってみたかったんです!」


「では、新しくできた高級焼肉店でも行ってみましょうか。おすすめですよ」


と、いう事で。夕飯が焼き肉に決定した。


ついこの間も行った地下商店街を八重樫さんに先導され、店につくと意外と中は空いている。しかしよく考えてみれば、まだ時刻は午後5時に差し掛かったところなので、当然と言えば当然なのかもしれない。


「すみません、予約ないんですけど、入れたりしますか?」


「あ、はい。今日は予約が埋まっていないので入れますよ」


「それはよかったです」


カウンターでライセンスをスキャンた後。案内されたのはカウンターに面した個室で、巨大なホースが机に備え付けのコンロの上に固定されている。


三人で席に着くと、さっそく注文をすることにした。


「まずは...お通しに枝豆と酔い薬ですかね」


「私は冷奴とでお願いします」


「? 一応枝豆をお願いします?」


まず一つ疑問なのだが、お通しって焼肉屋で頼む物なのだろうか? 居酒屋ではなく? と、そんな疑問が浮かんだので、とりあえず聞いてみる。


「えっと、お通しってどういう?」


「実はこの店は焼肉屋ですが、店主さんが元は有名な居酒屋の店主さんなんですよ。私も地元に住んでいたころはよく通っていました。で、ここで新しい店を出すことになったので、せっかくならダンジョン料理を.... と思い、10層ボスのミノタウロス肉を使った焼肉もメニューに加えることにしたそうです」


「へー... 元は居酒屋なんですね」


「早川さんたちはまだ未成年でしたよね? 一応教えておきますと、酔い薬というのはレベルが上がってお酒で酔えなくなった探索者用に作られた薬で、なんでもアルコールに反応して特殊なアドレナリンを分泌してくれるという薬らしいです」


「ちょっと前に高レベルの探索者の人が、金に物を言わせて作ったとか話題になっていましたよね~ まぁ、薬事承認は受けているそうなので、安心して使えますね」


「「へ?」」


酔い薬を安心して使える? 探索者登録した時点で成人として判定されるとはいえ、いまだにお酒は二十歳になってからだ。


「ちなみに... 因幡さんはおいくつですか?」


八重樫さん... 女性への年齢質問とか攻めるなぁ。と思ったが、未成年飲酒疑惑は拭っておかなければなるまい。


「ん? ピッチピチの22歳です。ちなみに結構酒豪なんですよ?」


凄まじいな、迷宮のアンチエイジング効果。もはや若返って中学生に見え... これ以上はやめておこうか。


そんな話をしているうちに、お通しが運ばれてきた。ちなみに、ネコ型配膳ロボが運んできていた。小皿に盛り付けられた枝豆。味付けは塩オンリーではあるが、食べてみると止まらない。


ダンジョン内でもこういう植物は実っていたが、やはりこちらの方がよりマイルドな味で食べやすい。しかし、魔力が豊富に含まれていたダンジョンの方も捨てがたい....


だがまぁ、魔力という要素に立ち向かえる現代の品種改良技術はすごいものだ。


......思ったのだが、ダンジョン内で現代の野菜を育てたら、よりおいしいハイブリット野菜ができるのでは?




いつの間にか、お通しの枝豆は空になっている。なので、さっそく次の注文をしてみることにした。


「八重樫さん、注文いいですか?」


「はい。じゃんじゃん入れてください。こちらも丁度頼もうと思っていたので」


ということで、手元のタブレットで更に注文を入れる。


「俺は... 刺身の盛り合わせと、桃の濃厚ジュースで」


「やはりビールですかね、そろそろ薬も効いてきたと思いますし。あとは.... さっそく肉を頼んじゃいましょうか!」


「私の分もビールお願いします!」


そうして、5分ほどで頼んだ諸々が届けられた。


「では、30階層ボスの討伐を祝して... 乾杯!」


八重樫さんの音頭に合わせて、各々のグラスやジョッキを軽く打ち合わせ、ガラスの子気味いい音がする。


「キャリーですけどね!」


「それは言っちゃいけないお約束ですよ。まぁ、我々は証拠映像から攻略に貢献できていないという事で、まだBランクでしょうし.... リベンジですかね」


「上で待ってます」


「先生、ダンジョンなら下じゃないですか?」




そんな因幡さんの上げ足は置いておいて、さっそくお刺身を... まずはマグロから。




うん、美味い。


ダンジョン内では醤油もなかったし、そもそも生魚とかは食べにくかったからな。ダンジョン内の寄生虫とか... 腹を食い破ってきそうで怖かったので、基本的にナマモノは火を通してから食べるようにしていた。


しかし.... 今考えると、火を通しただけでステータスありの寄生虫を焼き殺せていたかと聞かれたら、答えはノーだ。火属性耐性の寄生虫とかがいたら、それこそ確実に生きているだろう。


俺、デビルサーモンとか食っていたけど、運良かったんだな。



と、そんな考えを巡らせているうちに、サーモンやカンパチやエビも完食した。


「刺身はしばらく食べられませんからねー。食べ納めに私も頼みますかね」


「ん? それはどういう?」


「二ヶ月前くらいに大規模な討伐隊が組まれた海帝竜のせいで海洋の生態系に大きな被害があったらしく、その保護のために世界中で漁業の縮小を行う条約が、国際海事機関やら国際迷宮対策連合とかによって新たに締結されるらしいんです。

 その影響で海鮮の値段も上がっていたり、漁業に携わる各所が悲鳴を上げていたりするんですよ」


「えぇ? マジっすか...」



そんな話を聞いて最後にもう一度刺身を食うと決意して、次は焼肉の方に食指を進める。


ちなみに、他二人は既にビールを一杯空にしていた。そして、因幡さんは続けてカウンターの奥にある棚に並んだ日本酒に熱い視線を送っており、店員さんに一升瓶を指さして注文を始めた。


対する俺と八重樫さんは、二人そろって肉を焼いては食べてを繰り返す。


「焼肉のタレ.... 美味いなぁ」


「肉も... 活力がわいてくるというか、旨味がスゴイというか... 言葉にするまでもなくおいしいですね」


二人で食べ放題のごとく、肉が腹の中に消えていく。




......そうして、1時間近くがたったころだろうか?



「うぅー もっと飲みたいでしゅぅ」


最初にダウンしたのは因幡さんだった。


そして、八重樫さんもけっこう出来上がっている。


「探索者わぁ... 累進課税のいいカモですからねぇ! 優遇措置があっても.... 税金の魔の手から逃れられんのですよぉ! 自営業なのでぇ、確定申告とかもありますしぃ.... だから私はクランを設立したいんですよぉ!」


「え? 確定申告とかあるんですか?」


「そうですよぉ! なので専門の税理士とか雇わないと...」


...そういえば、学校の方のライセンスは、そういった細かい処理を源泉徴収してくれるとか言ってたな... でも、俺のAランクの方のライセンスは.... まさかの確定申告があったり? マジかぁ...


「だから最近はクランの設立がアツいんですよねぇ... 極東とか、新選組もクランとして設立されたとかぁ... 早川君、一緒にクランとか始めませんかぁ?」 


「考えておきます。それと.... その、極東と新選組って何ですか?」


「新選組は... あれでえすよ、探索者を取り締まる警察組織で、政府の犬とか言われてますねぇ。あと、極東の方はというとですね、茨城の特級ダンジョンから日本の守り人と言われる... なんでも新たなEXホルダーという噂もあったり... なかったり?」


「そのEXホルダーというのは?」


調停者の円卓(ルーラーラウンズ)、EXランクの探索者のことですよぉ」




その極東って... あれ? 大吾軍団では? 


「なんか変な噂とかあったりします? その極東というの」


「うーん... いい噂なら多いですけどねぇ。 関東圏の迷宮氾濫(スタンピード)の鎮圧を率先して行っているらしいですし」


なるほど、大吾は力の使い方をいい感じに心得ているようだ。だが.... 俺への50億はどうなったんだろうか。あいつ、出し渋るつもりか?


せっかくキングに俺のAランクライセンスの番号を伝言してもらうよう頼んどいたのに、音沙汰が全くないし... また今度、取り立てに行かなきゃな。




そんな風に色々な世間話や馬鹿話をして、気づいたころには入店してから2時間が経過していた。


「.....あぁ、もう結構時間が経っちゃいましたねぇ... 締めのポーションを頼みましょうか」


「ポーション.... 締め?」


タブレットを操作して、届いたのはEランクのポーション。それを飲んだ二人は、スッと顔の火照りが抜けて、酔いがさめたようだ。


「....すみません早川君、ダルがらみしてしまったようで... 申し訳ない」


「いえ、良いこともいっぱい聞けましたし、ご飯もおいしかったですしね。楽しかったです」


「それはよかった。あと、勧誘の件はもし良ければ考えておいてくださいね?」


「いやー、こんなにいい酒が飲めるとか、先生万歳!ですね」


「因幡さん、まだ酔ってます?」


「失礼しちゃいますね。もう頭しゃっきりですよ!」




そうして、打ち上げは解散となった。この間のキングとの高級レストランも良かったが、こういうワイワイした感じの食事も楽しかったな。











あ...    刺身食うの忘れてた。


引き込まれる敵キャラって書くのムズいんだよな~


あと、ダンジョンで回転式拳銃を作れるとは思えないので、

リボルバー ⇒ マッチロック(火縄銃)に、変えときました。

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― 新着の感想 ―
因幡ちゃん22歳w
さすが居酒屋系の店主。 焼肉屋なのにお見通しどころか刺盛りまであるんだ!
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