95 キングよりも狂戦士
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レビュー 狂喜乱舞
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作者の反応
このオロチと戦う上での警戒すべき点を、脅威順で大まかに挙げると、
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多種多様な毒
再生系のスキル
龍鱗による魔法耐性
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の三つがあげられる。
まず、オロチのスキルリソースの半分以上を占める毒系スキルが厄介だ。
EXランクの毒スキルを状態異常無効でどれくらい防げるかは未知数だし、毒沼領域や神経毒、毒性遅効など、様々な搦め手まで完備と...
とにかく、直接的な毒は致命的と考えて行動すべきであり、毒沼領域や毒霧などの防御しようがないスキルは甘んじて受け、耐性とクズノハの回復スキルで対処。
神経毒のスキルなどでスキルが使えない状態に陥ることも考慮して、高位の解毒ポーションも口に含んでおく。
次に、再生系のスキルも厄介なことこの上ない。
たしか伝説では、八岐大蛇は首を斬られても死なずに、バラバラになった体を各地に封印したとかなんとか... あとは、神話に出てくるヒュドラとか、ウロボロスとかの蛇系は大体えげつない再生能力を持っていたような気がする。
そして、このオロチももれなく不死再生というスキル、それもEXランクを種族スキルとして保有していた。
このスキルの底は分からないが、再生しなくなるまで削るか.... もしもこちらのSPとMPが先に切れるようなら、何かしらの拘束手段を取る必要が出てくる。
最後に、こいつは俺につくづく因縁のある”龍鱗”の魔法耐性まで持っている。
オークエンペラーの槍についていた龍鱗しかり、リヴァイアサンの持っていた龍鱗しかり、そのどちらもが高い魔法耐性を持っていた。一応、それぞれ武器破壊と権能による攻撃という抜け道で突破したものの、今回はその方法はどちらも使えない。
相性はかなり悪い.... というか、最悪の部類に入るだろう。
だが、殺れない相手では無い。
没入と思考制御による状況把握は完了、この間0、1秒ほど。
視線で互いを牽制し合う均衡を崩したのは、先手を取った俺だった。
【影界】
周囲の影が揺らぐと同時、それらは一斉に混ざり合い、周囲一帯を球状に覆い尽くした。その影界の結界内は完全に闇で包まれ、生半可な感知系スキルは阻害出来る。
そして、更に虚影で保険を掛けつつ....
「あっぶなッ!」
なぜか、森羅万象によって見えていた周囲の空間に、ひときわ大きな魔力を宿した液体が出現し、こちらにめがけて一直線に飛んできた。
泥沼に軽く足を取られるが、すぐにその場から離脱して回避する。
「.....」
何故バレた? 影界で周囲は真っ暗だし、虚影も使っているので、熱源感知に引っかかるわけもない。
しかしすぐに追撃があり、その標的は確実にこちらを向いていた。今度の攻撃は俺のいる場所へ向かって、まるで巨大ホースから放たれる激流のような毒液が、周囲一帯を薙ぎ払うように放たれる。
多分だが、過重水砲と毒魔法の合わせ技。軌道を回避するように周囲を駆けまわるが、その攻撃は正確に俺を追尾していた。
「ッチ...【網糸結界】」
平面でダメなら縦横無尽に、だ。
影界に沿うように糸の結界を展開し、その内部に無数の糸を張り巡らせる。そして【鳶糸】のスキルで、行動範囲を空中まで広げて回避を行う。
....そう思っていたのだが、俺が糸を足場にした直後に、毒の激流は見当違いの方向へと向かっていった。
これは.....
「泥沼領域に触れている対象を感知しているのか?」
一瞬、毒霧の線も頭をよぎったが、空中で感知から逃れた時点でその線は消える。
となれば必然的に、泥沼領域での感知が最有力候補になる。あとはパッシブスキルである【縄張】で、感知能力が強化されているのもわかった。
地に足つけて戦うのはダメ。しかし、そうなると剣で戦うのは少し厳しい。他に武器糸技も考えたが、先ほど因幡さんを助けるために糸で毒を防いだ時、その糸を伝って毒がこちらまで侵蝕してきていたので、糸での直接攻撃もあまり長くは使えない。
が、しかし。魔法も龍鱗で防がれる。
...であれば、だ。
【二刀流】
片手には星月夜、片手には網糸結界の糸。それらを武器として選択し、二刀流のスキルによって一時的に武器自体のステータスを共有することが出来る。
さらに、【朔望】を解放することによって、糸に光のエネルギーが循環し、それらが光の刃を成してゆく。
龍鱗はあくまで魔法スキルを防ぐ物で、この朔望は対象外。つまり、この攻撃はオロチに通用するのだ。
光の帯が瞬き、それらが一瞬でオロチに向かって収束する。血肉が飛び散るが、その飛沫すらも光の帯によって焼き焦がされ、更にオロチの肉をガリガリと削り取る。
そうして朔望のスタックを一つ使い切ったわけなのだが...
「しぶといな」
ものの十秒でHPは完全に回復しており、吹き飛んだはずの首も完全に再生されていた。しかも、それでいてMPの消費は一割弱。MPを使い切らせるよりも先に、こちらの朔望が切れるということだ。
....どんだけ燃費良いんだよ、あのスキル。
あれほどまで肉体が削られてもHPが0にならないなら、一撃で大ダメージといった技はこちらのSPを無駄に消耗するだけになる。
「........よし。ならスキルから先に潰すか」
そういって取り出したのは、神の呪縛。
これを武器スキル【如意】によって、糸闘術を発動可能なレベルの極細糸に形成する。
目的は、神呪による再生スキルの封印。レベルが高い対象への効きは弱いが、弱らせれば呪いは通るだろう。
オロチは今の一撃に危機感を抱いたのか、こちらへと沼を滑るように接近し、肉弾戦を仕掛けてくる。
まぁ、俺としては傷つけると毒を周囲にまき散らすような奴と接近戦を繰り広げるつもりは毛頭ないので、上空の糸を足場に退避し、移動する合間にアドミラルを周囲へと展開していく。
そして、いい具合にアドミラルが展開したところで、まずは弱体化を狙う。
....と言ってもやることは単純。毒が伝ってくる前に、一瞬でオロチの首を落とすだけだ。
【二刀流】
【武器糸技・天命殺】
二刀流によって、攻撃力を持たないアドミラルに星月夜の持つ攻撃力を上乗せし、オロチの持つ八つの首を切り落とす。その切り落とした首はすぐさま糸で絡め取り、離れた所で魂縫によって縛り付けておいた。
オロチは声にならない悲鳴を上げて首の再生を始めるが、そのタイミングが狙い目だ。
周囲に展開していたアドミラルを手繰り、オロチの全身を拘束。そして、首の再生に全力を出している、無防備な体に神呪を発動させる。
【神呪】【桎梏】
予想通り。ジュクジュクと音を立てていた首筋の肉が動きを止めた。
「よしッ!」
桎梏までは発動しなかったが、神呪の方は無事に発動した。こうなれば、全力を以て必殺の一撃を当てても問題ないだろう。
「さて、ちょっとばかし本気を出してみようか」
スキルが封印されたことによって、周囲の毒沼は既に消え去っており、俺は地に足をつけて構えを取る。
使うのは、超電磁砲、神通・神足通、居合抜刀、天命殺、そして発頸剣。
腰を落として星月夜を鞘に納め、左腰に佩いた状態で鯉口を切る。
そして、その鞘の内部で超電磁砲を発動、まずは斬撃の初速を上げる。
更に、神足通によって強化された敏捷によって刃が加速。
居合抜刀の補助によって放たれる美しい所作の抜刀に、天命殺が付与され、その一刀が発頸剣によって飛翔した。
最新のスキルから放たれる、刹那之一刀。
編み出した当時ですらオークエンペラーを一刀両断.... はしていなかったが、城の壁を余波で粉砕する程の一刀は、オロチの体躯を一撃のもとに消し飛ばし、そのまま影界と網糸結界という二重に張られた結界を、いとも容易く両断する。
流石の威力を見せてくれた。
「ふぅ..... 気持ちがいいな! スカッとした」
日常生活よりも、ダンジョンでモンスターを屠るほうが生を実感するというか.... なんだろう。俺はあれか? 戦闘民族の家系だったりするのか? マジで、思考が戦いを求める狂戦士だな。
これが社会不適合者という奴なのだろうか?
まぁ、そんなことはどうでもよくて、だ。
光の粒子になって消えていくオロチのあとには、短剣と、スキルオーブと、巨大な魔石が残されている。
「さーて、戦利品も楽しみだな」
まさかのブックマーク5000件突破とは.... 処女作でここまで行けるとは、正直思っていなかった(歓喜)