表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/46

戦端

「射て!!」


 ザックの掛け声に、城壁の上の冒険者達が一斉に弓を引き絞り矢を放った。城壁から10メルにまで迫ったハイコボルトから悲鳴と怒号が上がる。


 急所を射抜かれたハイコボルトはそのまま崩れたが、大半は止まらず城壁にまで駆けてくる。


「槍兵、突けぇぇぇ!!」


 城壁に空けたレンガ四個分の穴に向かって、長槍が突き入れられる。槍兵を担当しているのは経験の浅い冒険者達で、その緊張が物見塔にまで伝わってきた。


「矢は腐るほどある! どんどん射つんだ!!」


 矢の雨は止まらず、城壁に取り付いても槍の穂先がその胴体を穿つ。油断は出来ないが、上手くいっている。まだ冒険者側には被害はない。一方、ハイコボルトは五十体以上沈んでいた。


「いけー!! やれー!!」

「ミャオオー!!」


 ローズとテトが物見塔の上から冒険者達を鼓舞する。意外と喧嘩はしていない。共通の敵がいると、手を取り合うようだ。


 次々と押し寄せるハイコボルト。しかし、攻めは単調。所詮は魔物ということか? コボルトキングによる狂騒状態は俺達に有利に働いているようだ。


 この流れなら、いける……!! 勝利は遠くな──。


『強力な奴が来る!! コボルトジェネラルだ!!』


 突然、馴染みのない魔物の名前が風魔術師から届けられた。慌ててコボルトの群れを見ると、一際体の大きなヤツが二体、物凄い勢いで抜け出てきた。


「デカい奴を狙え!!」


 ザックの声に焦りが混ざる。


 ──ウォォオオオンッ!!


 強烈な吠え声と共に、コボルトジェネラルの太い腕に矢が打ち払われた。


「まだだ!! 急げ!!」


 ダンッ!! 


 二体は示し合わせたように同時に踏切り、その身を宙に浮かす。


 高い! このままでは──。


【ボム!!】


 そうローズが叫んだ途端、一体のコボルトジェネラルの頭が炎に包まれ、そのまま弾け飛んだ。頭を失った体が、爆風に押されてそのまま地面へと落ちていく。


 凶悪な破壊力。これが戦闘系の上位ジョブの力……!?


 しかし、残り一体そのまま城壁の上部に取り付き、冒険者達に迫ろうとしていた。


「ミァオォォオオオ!!」


 全身の毛を逆立たせて、テトが叫ぶ。コボルトジェネラルの動きが一瞬止まった。そしてその背後に、可視化した大鎌が……。


 ジャキンッ!! と、死の神の鎌が振るわれる。


 これがテトのスキル?


 コボルトジェネラルの頭が城壁を伝って転がり落ちた。ハイコボルトの間に静寂が広がる。コボルト達の中では圧倒的な力を誇っていたであろう強者が二体、瞬く間に葬り去られたのだ。


「やるわね! テト」


「ミャオミャオミャ〜」


 お互いに讃えあうローズとテト。


 よし……。大丈夫だ。ローズとテトが居ればコボルトキングだって倒せる筈……。


 首を刈られたコボルトジェネラルの巨体を、ザックが「邪魔だ」と城壁の上から蹴り落とす。


 コボルト達の狂騒が一瞬、途切れた。流石に戦意を削がれたようだ。これならいける。俺達はコボルト禍に打ち勝てる!


 ──ウォォォォオオオンンッ!!!!


 俺の甘い希望を打ち消すような遠吠えが響く。


 コボルトの列は真っ二つに別れ、その間をコボルトジェネラルより更に巨体の魔物が歩き始めた。


 遂に出てきたか……コボルトキング。


「全員! アイツを狙うんだ!!」


 ザックの声と同時に弓の弦を引き絞る音して、矢が放たれ──。


 当たらない! コボルトキングの姿はかき消え、そこにはない。


「ザック!! 城壁の真下だ!!」


「なっ……!!」


 ──ダンッ!! と地面を踏み締め、コボルトキングはまた姿を消す。


【ボム!!】


 城壁の上で爆発が起こる。が、これも外している。速すぎる……。これ、当てられるのか……!?


「ちょっと! 止まって大人しくローズちゃんにやられなさいよ……!!」


 駄目だ。当たらない。コボルトキングは魔力を感知しているのか、ローズがボムを放とうとすると消えて見えるほどの速度で躱してみせる。


 テトも構えてはいるが、狙いが定まらないようだ。


 その間にもコボルトキングはその爪で次々と冒険者を薙ぎ払っていく……。


 ここまで準備してひっくり返されるのか……? そんなこと、させない……!!


「ちょっと、マルスちゃん!?」

「ミャオ!?」


 ローズとテトの声に応えることなく、俺は物見塔から駆け降りた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ