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助っ人

あけましておめでとうございます!! 今年もよろしくお願いします!! やっと休みだぜ!!

「ボーワダッテ……さん、戦況はどうなってます?」


 死の壁からマルス領に戻った俺は仮眠をとっていた。しかし高揚しているのか、昼前には自然と目が覚める。作戦本部ではボーワダッテ……と数人の冒険者がテーブルを囲んでいた。


「起きたのかい? もう少しゆっくりでもよかったのに。戦況はマルス君達のおかげで有利に進んでいるよ。コボルトは数を減らし、進行の速度も緩やかになった。これならこちらの援軍も間に合いそうだ」


 そう言いながら、ボーワダッテ……はカイゼル髭を扱いた。


「援軍? 辺境伯軍ですか?」


「あぁ、そうだよ。さっきまで未確定だったから伏せていたのだがね」


「どれくらいの規模でしょうか?」


 マルス領が軍の駐屯地になる……。コボルトの襲来を前に既に百名強の冒険者が寝泊まりしているが、更にスペースが必要になるな。


「一人だよ」


「一人……!? ふざけているんですか!?」


 カッと頭に血が昇るのを感じた。辺境伯も支援したという実績を作りたいだけじゃないか……。ふざけやがって。


「マルス君……。違うんだ。辺境伯は今回の事態を軽んじているわけではない。ただ、辺境伯軍というのは寡兵でね。それにそのほとんどが冒険者上がり。通常の軍とは考え方が全く違うんだ。辺境伯に仕えている冒険者って考えの方がしっかり来るかもしれない」


「だからって、一人はないでしょ?」


「その一人が【爆炎魔術師】のジョブを持っていても?」


【爆炎魔術師】


 火魔術師の上位ジョブで非常に殲滅力の高いスキルを持つという。そのジョブを持っているだけで各国から引き合いがあるような人気の戦闘系ジョブだ。


「そんなに強力なんですか? その人は」


「あぁ。今マルス領にいるどの冒険者よりも強力なスキルを持っている。君が作ることのスペシャリストなら、彼女は壊すことのスペシャリストだ」


 ボーワダッテ……の周りの冒険者達も頷いている。


「分かりました。期待して待ちます」


 さて。どんな奴がやって来るのか……。冒険者達の顔が若干引き攣っていたのを、俺は見逃さなかった……。



#



 ──ドンッ! ドンッ! ドンッ!!


 突然、大地が揺れる。


「ミャオ!?」


 テントの中で俺と毛布に包まって寝ていたテトが跳ね起きた。


「なんだ? コボルトの到達は明日の筈なのに……?」


 慌てて外に出ると、一斉に焚かれた灯りの魔道具が城壁のある一点を照らしていた。そこには、人間が一人だけ通れるような穴が空いている。


 何人もの冒険者がテントから出て武器を構え、城壁の穴を見つめている。一体、何が現れるのか──。


「ローズちゃん! 到着でーす!!」


 この状況に全く相応しくない明るい声がマルス領に響いた。その声の主は赤く燃えるような髪色をした、小さな若い女だった。


「あれー? ローズちゃんが到着したんですけど……!?」


 何処からともなく現れたボーワダッテ……がローズと名乗った女に近寄り、礼をする。


「お久しぶりです。よく来て下さいました」


「ちがーう!! ボーワちゃん!? 私に会って感じたことを先ず言わないと!!」


「……ローズさん。今日も可愛いですね……」


「そう!! それよ!! ボーワちゃんは素直ね!!」


 テトと顔を見合わせる。


 壊すことのスペシャリストはいきなり、マルス領の空気まで壊してしまった。恐ろしいやつだ。何故、爆炎魔術師なんてジョブを持っているのに辺境にいるのか、ほんの一瞬で分かった気がする。


 遠巻きに眺めていると、ボーワダッテ……がこちらを向いた。


「マルス君、ちょっと来てくれるかい?」


 えっ……。俺?


「はい……」


 仕方なく前に出て、ボーワダッテ……の横に並んだ。


「マルス君だ。【レンガ職人】のジョブを持っていて、この防衛拠点を作ってくれた。今回のコボルトキング討伐の要だ」


 そう紹介される。


「ローズちゃんです! マルスちゃんがこの城壁を作ったの!? すごーい!!」


 なんだろう……。全く褒められている気がしない。


「マルスです。よろしくお願いします」


「あれ……? 緊張してる……!? ローズちゃんの可憐さに、手も足も出ない感じ……!?」


 チラリとボーワダッテ……を見ると、目配せがあった。仕方がない。


「はい。こんなに可愛い人は初めてなので……」


「うんうん! そーだよね! 私も毎朝鏡を見る度に思うもの!! マルスちゃんも素直ないい子ね!! 一緒に頑張りましょね!!」


「はい……。よろしくお願いします」



 ボーワダッテ……に連れられて作戦本部に案内されるローズを尻目に、俺は城壁の穴を直すためにレンガを取りに行くのだった。

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