囁き
僕は昔から甘いものが好きだ。
物凄く好きだ。
其のくせ歯磨きはおざなりで余りしない。
その為虫歯に成るのは当然の事だ。
今は亡き両親は鬼のように怒ったものだ。
歯を大事にしろと。
まあ~~今更だね。
其れで嫌だけど歯医者に行く。
そうでないと歯が痛くて甘いものが食べられないからだ。
歯の治療をすると当然ながら歯を削らないといけない。
削って詰め物をする。
そうなるとまた甘いものを食べ始める。
そうするとまた虫歯になる。
そして歯の治療をする。
そうすると当然ながら歯を削らないといけない。
何度も治療すると終いには殆どの歯が詰め物や差し歯其れにインプラントになる。
鏡を見た僕の口の中は酷い有り様だ。
両親が生きてたら僕のことを叱って止めてくれてたろうな~~。
そうして最後の歯の治療をした夜のことだ。
就寝している時に何かが聞こえた。
何が?
等とは分からない。
頭に響く音。
人の声。
砂嵐の様な音。
何だろう?
騒がしい音も聞こえた気がした。
最初は気にならない程の大きさの音だった。
其れは日を追う事に大きく成っていく。
ドンドン。
ドンドン。
其の音が大きく成り始めた時期から病院に通い始めた。
理由は此の音だ。
原因は不明。
様々な病院を渡り歩いた。
その間にも音は大きくなる。
音は大きく成ると其の内容がわかり始める。
人の会話。
其れが大半。
此の頃に成ると昼間も音が聞こえ始めた。
最悪だ。
ノイローゼに成る。
心が折れそうに成った時だ。
転機が訪れた。
原因が分かった。
歯だ。
治療した歯に含まれる金属。
其れにインプラント。
其れが偶然にも鉱石ラジオの様な働きをしていたらしい。
其処で歯医者に事情を話新たに歯の治療を行った。
すると治療した途端だ。
音が聞こえなくなった。
漸く平穏を手に入れた。
安息日々を送れる。
そう思い僕は安堵した。
筈だった。
深夜。
人の声が聞こえる。
人の声が。
僕を叱る声。
死んだはずの両親の声が聞こえた。