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戦国烈火  作者: 煌烙
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5.森長可

 とんだ変態を臣下にしてしまった事を今更ながら後悔している俺。それを慰める秀吉。そんな俺たちを見て秀吉に妬く蘭丸。

 ……って、だから蘭丸がおかしいんだってぇ! もうやだぁあああ!


 なんて事を屋上で繰り広げていると、ガチャッと屋上のドアが開く音がした。そちらを見ると秀吉より少し背の高い金髪金目のイケメンが欠伸をしながら入ってきた。


「ふぁあああ……。あれ? みんな、いんのかよ?」

長可ながよし、遅いですよ」

「悪ぃ悪ぃ。蘭はちゃんと起こしてくれたんだけどよ、寝ぼけながら用意してたらこんな時間になっちまった」


 な、なんか、髪型チャラいなこの人。てか、ピアス幾つ開けてんの? 少なくとも片耳だけで三つだな。俺が蘭丸を踏みつけながら観察していると、その視線に気付いたのかニヤリと笑って近寄ってくる。

 ま、まさか、この人も変態なんじゃ……っ!?


「信長様、久しぶりだな! 元気だったか?」


 俺の頭をくしゃっとして挨拶をする。あれ? 普通だ。


「あ、あんた名前は?」

「あ? もり長可だろ? あ、記憶ねぇんだっけ。呼び捨てでいいぜ」

「も、もしかして、蘭丸の兄貴?」

「おお、そこは分かんだな」


 兄貴の方は変態じゃないんだ…………。ほっとした。と思ったのも束の間。


 バンッ


 勢いよくドアが開いたかと思うと女子が大量に入ってきた。な、なんだぁ!?


「長可ぃ! 今日はアタシとデートよね?」

「あんたじゃないわよ、アタシよ! ついでにヤッてもらえるって約束したもんね! 長可!」

「違うわ! 今日はアタシを楽しませてくれるって言ってたわ!」


 突然の女子乱入に頭が追い付かずにぽかーんとする。な、なんか女子の言ってる事が……ヤバい。秀吉と蘭丸がすっげぇ冷めた顔になってるし、溜め息ついてるし!

 という訳の分からない状況の中、森長可というその人は冷静に女子に返答する。


「俺はみんな一人ずつ楽しませてあげるつもりだぜ? 今日じゃなきゃダメなんて言わせねぇくらい滅茶苦茶にイかせてやるけど?」


 その瞬間、女子の黄色い声が鳴り響く。五月蝿っ! その女子の反応を見てまだ彼は続けた。


「取り敢えず今はだーめ。教室で待っててくれたらみんなにご褒美やるよ」


 再び女子の甘い叫びが屋上を包む。だから、耳痛いって!


 長可が言った通り女子どもは大人しく帰っていった。いや、何人か倒れそうになってたけども、見なかった事にしよう。それにしても。


 この人、めっちゃチャラかった! 見た目だけかな? とか思ってた俺が馬鹿だった。見た目チャラい奴は中身もチャラいんだ。


 俺が蘭丸の兄貴をそんな風に認識していると秀吉が呆れた顔で彼に言い放った。


「相変わらず女性とそういう事をしているんですね、貴方は」

「男が女に欲情すんのは男のさがだろうが。まあ、んなこたどうでもいいんだよ。信長様、早く契約し……」

「嫌だ」


 食い気味で言ってやった。なんなの!? 森家は変人しかいないのかよ!? 変態の次はチャラ男とかキャラ濃すぎるだろ!? 蘭丸は嫌々臣下にしてしまったが、今回はそんなヘマはしない。拒否拒否! 断固拒否! 臣下にしてやんねぇぞ、本気で!


 俺が「嫌だ」と言うと長可は顔に青筋を作って低い声で告げた。


「……記憶がねぇとはいえ、前世であんだけ貢献してやった臣下と契約したくないだぁ? ざけんなよ、クソガキ。今はあんたのが年下だから存分に文句を言わせてもらうぜ!」


 ………めっちゃキレてる。でも、嫌なもんは嫌だ。と俺達が睨み合っていると、


「やめなさい」


 呆れた声によって頭に手刀が落とされる。一瞬目の前がキラキラと輝くが、すぐに戻る。どうやらチャラ男も手刀を食らったらしく頭を抑えている。


「おい、猿! 何しやがる!?」

「猿と呼ぶなと言っているでしょう、長可。こんな事をしていても無駄です。信長、貴方も。結局はこの人も臣下にする事になるんです、拒否しても意味がありません」

「だってよぉ、変人ばっか臣下にしてたらヤバい気がすんだもん……。まともなの秀吉だけなんだぜ?」


 泣き言めいた感じで言うが、秀吉は冷たく返してくる。


「まともじゃないのは昔からです。記憶を思い出したら割り切れますから」


 いや、そういう問題じゃねぇと思うんだ! 本当に嫌なんだよ! その意志が伝わったのか、秀吉が溜め息ながら長可と蘭丸に声をかける。


「長可、蘭。異能力を使う姿になって頂いても?」

「僕は構いませんよ!」

「俺も構わねぇ」


 そう言うと二人ともあの厨二くさい台詞を言い放った。


「吹き抜ける風の如き魂よ、我に宿れ!」

金色こんじきの雷の如き魂よ、我に宿れ」


 ほぼ同時に二人が言うと、光と共に蘭丸の方は風が、長可は雷が纏わりつく。光が消えたかと思うと二人の容姿が変わっていた。


 蘭丸は灰色と白の色彩で風の模様が描かれている着物をきっちりと着ており、灰色の羽織も着ている。元々長めの髪は更に長くなって膝の辺りまでになり、下の方で一つに結ってある。足袋と草履を履いており、弓矢を身につけている。家紋は左手の甲にある。

 長可は金色の刺繍が施されて雷の模様が入っている黒色の着物を着崩して胸元が大きく開いている。俺より開いている。草履を足袋を履かずに履いている。背中に大きななたを持っており、家紋は蘭丸と同じ所にある。兄弟で家系が一緒だからだろう。


「俺達はあんたの為なら戦うぜ。俺達にとってあんたは唯一の主だからな」

「信長様! どうか僕達の力を信じて下さいませ! 臣下にした事を絶対に後悔させません!」


 二人の意志を聞いて俺は考え直してしまった。これは自分の意志で決めた。


 こいつらを臣下にする。


 天下とかはどうでもいいし、分からない。けど、もし戦う事になるなら信頼できる奴らを味方につけておく方がいいのかもしれない。


「だから、長可。俺の臣下にしてやる」

「はっ、相変わらず上からだな、殿。んじゃ、契約するか」


 そうして俺と長可は主従の契約を結んだ。蘭丸みたいになる事はなかったので多少楽だった。あいつマジでヤバいわ。

 俺の手首に金色の腕輪が増えたところで丁度始業五分前のチャイムが鳴り響いた。

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