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「天秤」
「天秤」
小さな女の子がいました。その子は生まれたときから病弱で、医者も手の施しようが無いほどでしたので当然に病院で生活しており、白い壁の部屋で毎日天井を見つめながら過ごしていました。
老いた男がいました。貧しい家に生まれながらもその男は絵の才能を持っていたのでいつしか町で有数の金持ちになることができ、引退してからの余生を幸福に送ることがかなっていました。
女の子が病気になりました。
苦しいという言葉も知らず、痛いという言葉も知らず、ただ表情を歪めるだけでした。
男も病気になりました。
苦しい苦しいと大声で叫び、痛い痛いとわめきちらし、ただ生きたいと願うのでした。
女の子が手術を受けました。
両親が必死の想いで頑張りやっとのことで溜めたお金でした。
男も手術を受けました。
彼の努力と才能が認められ儲けたお金を半分つぎ込みました。
次の日、女の子が死にました。
五日後、男が死にました。