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CHAIN_37 副将シングルス -2-

「くっ……。念力の誘導 《サイコムーヴ》」


 ケイタは近くのサボテンを引き抜いて思いきり投げつけた。


「技の凝縮 《テクニカルチャージ》」


 けれどそれは軽やかな身のこなしで受け止められてそのまま投げ返された。


「――ッ!」


 間一髪で避けたもののすぐに次が来る。


「速の凝縮 《スピードチャージ》」


 加速したエルキがうしろに回り込んだ。とっさにスキルを使うが、


「念力の緊縛 《サイコバインド》」

「力の凝縮 《パワーチャージ》」


 間に合わない。ケイタは人形のように吹っ飛ばされて地に伏した。


「……くそッ……」


 是が非でも勝ちたい相手。絶対に負けたくない相手。それなのに手も足も出ない自分に心の底から腹が立ってたまらない。


 悔しい。情けない。申し訳ない。


 それでもケイタは起き上がって前を見る。


「念力の波動 《サイコウェーヴ》」


 手から放った念動力の波による衝撃波。地を走って土煙を舞い上げていくそれは一時的にエルキの視界を遮った。その間に周囲の遮蔽物を探す。


 とりあえず目に入った岩のオブジェクトの背後に滑り込むケイタ。


 運がないと言っていいのかもしれない。この荒野のようなバトルフィールドには隠れられるような場所がほとんどない。地形を利用した戦術的なヒット&アウェイもこれでは使い物にならない。


「隠れても無駄だって」


 やれやれとため息をつきながらエルキは堂々と歩いている。


「念力の震動 《サイコショック》」


 ケイタは見つかる前に近づいてきた相手に不意打ちを浴びせた。


「……ぐッ。速の凝縮 《スピードチャージ》」


 見事にヒットしたがエルキは怯むことなくスキルを使って加速。


「力の凝縮 《パワーチャージ》」


 そしてケイタに急接近したのち、


「おらおらおらおらおらおらおらおらッ!」


 その赤く光る拳で機関銃のように乱打を浴びせた。


 ケイタの体力ゲージはどんどん減っていって赤色の危険域に。


「……念力の 《サイコ》」

「遅いって」


 スキルを使う前に止めの一撃が決まり宙を舞うケイタ。儚くも地面に叩きつけられて第一ラウンド終了のゴングが鳴った。


 そのあまりの試合展開に彩都高校一同は肩を落とした。無千高校側は勝って当然だろうという雰囲気で見守っている。


 §§§


 続けて第二ラウンドが始まる。短いインターバルの間にケイタは気持ちを切り替えた。


「あのさあ、一つ提案があるんだけど」


 開始直後から話しかけてきたエルキは意地悪そうな笑みを浮かべている。


「提案……?」


 また良からぬことを言い出すのではとケイタは身構えた。


「あんた部長だろ? このままボロ負けして戻ったらかわいそうだからよ、もしこの場で土下座でもしてくれたらこのラウンドあんたにやるよ」

「断る」


 ケイタは即答した。


「それで勝ちを拾っても他のみんなに誇れない。僕自身にも」

「じゃあとっとと負けてくれよな。こっちは本選のこと考えなきゃならないからよ」


 まあいいかとエルキは体勢を整えて、


「速の凝縮 《スピードチャージ》」


 ケイタのほうへ向かって加速した。


「力の 《パワー》」

「念力の緊縛 《サイコバインド》」


 ケイタは相手より先にスキルを使った。見てから使うでは間に合わない。なら来る瞬間を可能な限り予測して、置く。


「君のスキルは切り替え式。全身を拘束されれば変更できないし同時使用もできない」

「くッ……」


 拘束されたエルキは宙でもがいている。力の凝縮状態なら抜けだせたそれも今は不可能なほどにきつく縛られている。


「念力の震動 《サイコショック》」


 近距離からの溜めに溜めた震動波。緊縛状態から解放されたエルキが今度は弾き飛ばされて地面を転んだ。


「……やってくれるじゃん……雑魚のくせによお……ッ!」


 起き上がるエルキにケイタは念力の波動を浴びせたあと近くのオブジェクトのうしろに隠れた。


「どこにいるかなんて分かってんだよッ! 速の凝縮 《スピードチャージ》」

「――念力の誘導 《サイコムーヴ》」

「ぐふッ……」


 頭上に現れたエルキに対してケイタは隠れ蓑にしていたオブジェクトを念動力で打ち上げた。思わぬ伏兵に怯んだエルキ。


「念力の緊縛 《サイコバインド》」


 ケイタはその隙を逃さずに再び拘束して、


「念力の震動 《サイコショック》」


 溜めた震動をその体に打ち当てた。


「ぐはッ……。技の凝縮 《テクニカルチャージ》」


 放物線を描いて吹っ飛んだエルキはとっさに受け身をとって衝撃を和らげた。

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