槍と嫌々
そんな危ない所に行っても平気かなぁ……
「はぁ……」
「本当に嫌そうね。」
「……言うけど今回は馬車の前にいなくていいからな。」
「なんで?」
「……ルナミス綺麗だから外にいる男に狙われるよ?」
「なっ!……お願いするわ…」
ルナミスを軽くからかいながら安全を確保する。
護衛は最小人数だ。
僕、ルナミス、メイ。
この三人で護衛をする。
僕とルナミスは主要護衛なので確定。
メイはセフィか王女殿下が連れ去られた時のもう片方への護衛だ。
もしかしたらルナミスが連れ去られる可能性も考慮してこの人選で行く。
まぁそんな事は無い、攻撃が分かるのに連れ去られたらその魔眼を疑う。
馬車はどうするかとゆうと馬は槍で代用する。
その方が護衛の削減に繋がると思ったからだ。
「さて、出航するまでもう少しかかるらしいから休憩。僕は寝てくるね。」
「私は船ダメだからパス。メイ、頼んだわよ。」
そう言って主要護衛の二人離れた。
僕は最高三徹するつもりだから今のうちに寝る為。
途中で寝たら殺されるからね。
ルナミスは船酔いするから却下。
ここはメイに頼んだのだ。
「…頑張る。」
「ふぅ、メイ。こちらに来てください。」
「…何?」
メイが顔を傾げながらセフィの元へ向かう。
二人はスランが寝ている時に段々と仲良くなっていった。
「今日は無理ですね、寝顔観察。」
「…私が怒られる。」
「分かっています。でも……カコラ帝国ですか。」
「…どう思う?」
「正直言うと信用はしてません。」
「…やっぱり。」
「私はカコラ帝国と繋がっている人に攫われましたから。当然です。」
「…ご主人様平気かな?」
「難しい所ですね。いくら私達が最短日数しかいないとしても。」
「…三日間だっけ?」
「三日ですね。移動の今日と祭りとパーティがある明日と帰国する明後日です。」
「…油断しない。」
「お願いしますね、スランとルンちゃんがいない時は特に。」
「…ん!」
「……なんか嫌な予感がするんですよね。」
「…何が?」
「何かが変わってしまう気がするんです。大切な何かが。」
ふぁぁ……
よく寝たな……
時計を見ると後三十分くらいで着く時間だった。
もう直ぐか…と思いながら着替える。
全て着替え終えると丁度いい時間になったので馬車の準備をしに行く。
ここで第六聖の人達とはお別れ、一旦ゴーラーダ王国で待ってもらう。
これも対策で船があると占拠された場合面倒な事になるからだ。
燃料は魔力だからそんなに問題ない。
昨日沢山魔力を入れたしね。
馬車の準備が終わるとセフィ達が来たのでドアを開ける。
四人が馬車に入った後窓の外を絶対に見ないように言ってから馬車に槍を引っ掛けた。
「さて、行くか。」
そう言って気合を入れて出発する。
槍は魔力で引っ張ってるだけなので馬の形はしてない。
槍先はこちらに向けており市民に危険がない様にした。
一応この国の人達も少しくらい理性が──
皆?理性は?本能のままに動いてるんだけど?
……あんまり見ない様にしよう。
それが最低限の気遣いだ。
王城に着いたがそこでも降ろせる様な状況では無かった。
仕方なく馬車収納庫まで行かせてもらう。
「ここが王城ですね、少し気合を入れないといけませんね。」
「…イカ臭い。」
「メイ、ストップ。それ以上何も言うな。」
「…?、わかった。」
「ふぅ、やっと酔いが醒めたわ。」
「さて、皆さん行きましょう。カコラ帝王が待っているらしいです。」
王女殿下の言う通り帝王が待ってるそうなので早めに行く。
適当に因縁つけられても困るしね。
……臭っ!『デオドラント』!
なんかとてつもない臭いがしたのでつい消臭魔法を使ってしまった。
騎士にバレない様に発動したけどね。
……どうやらバレてない様だ。
皆にも一応魔法を使った。
メイ以外は特に反応しなかったがメイは大きく深呼吸している。
そうだよな、狼だし臭いきつかったよな。
もっと早く使っておけばよかった。
応接間の前まで行くと案内してくれてた騎士達が去っていく。
セフィがドアを叩くと中から返事が返ってきた。
ドアを開けるとそこには──
「おぉ!よくぞ参ってくれたぞよ!我輩の名はエライボゴ・カコラである!」
そう言ってセフィに抱きつこうとするので僕が静止させる。
エライボコはとても不満そうな顔をしながら言葉を発した。
「……なんじゃ?護衛の分際で我輩を止めると?」
「すいませんが聖女様達女性陣には触らないでください。」
「……退かせ。」
そう言って周りにいた騎士達が動くが魔法で直ぐに撃退する。
僕に喧嘩を売るなんていい度胸だね。
僕はそう簡単に負けないよ?
「なっ……」
「僕がただの人に見えました?一応実力でここにいるんで。」
「くっ……」
そう言って席に戻るエライボコ。
……マジで気持ち悪い。
なんでいきなり初対面の女性に抱きつこうとするの?
ハグで挨拶する文化はフリア大陸にあるけど飛びつく様なハグはしないよ?
しかも他の女性の上半身を見て少しガッカリしてるし……
もしかしてデリカシーがない?
そうか!こんな国で育ってるからデリカシーがないんだ。
いやぁ、悪い事したな。
デリカシーのデの字もない奴はデリカシーなんて理解できなかったな。
そう思ってる中、メイだけが気付いた事、それは──
(…また怒ってる。)
少しだけ魔力が漏れ出てる事だった。
一月で完全に漏れ出さない様に訓練していたスランだがまだ詰めが甘かった様だ。
KHRBよろしくお願いします。
四百話くらいで終わる予定なんだけど……終わるかな?