閑話 鏡と思い 変わりゆく運命 1
祝!一章終わり!
「鏡の悪魔だぁぁぁ、逃げろぉぉぉ!」
「魔法を使うな!奴に吸われるぞ!」
「助けて…メビウス…様」
僕は何をしているんだろう。
「ガァァァァァァ!手がぁぁぁ!」
どうして戦場にいるんだろう。
「悪魔め!死ねぇぇぇぇぇ!」
誰か…教えて?
僕の名前はミラ。
昔はよく可愛い可愛いと言われたけど騎士になるくらいから男みたいと言われ始めた。
一人称は昔から僕なんだけどたまに私になっちゃうんだよね、なんでだろう。
今はマルマー帝国との戦争の真っ只中、その最前線にいる。
今年で十八歳になるのに男の人との出会いは無し。
くるのは女性の人ばかり…はぁ、悲しくなってくる。
「ミラ大将!作戦会議の時間です、準備を。」
「わかりました、直ぐに行きます。」
会議かぁ…嫌だなぁ、ナルシストがいるんだよなぁ…
ナルシストってこの国の第二王子カード・ソードベルの事。
あいつは本当に気持ち悪くて…
会議場に入るとナルシストはいなくて代わりに堅牢がいた。
「堅牢ちゃん、おはよう。」
「そう呼ばないで欲しいの。」
「じゃあなんて呼べばいいの?t」
「それで呼ぶなの!普通に副隊長と呼びなさいの!」
堅牢ちゃんが怒っちゃった。
「ごめんね、バレたらまずいもんね。」
「…わかればいいの。」
話しているとあれがきた。
「おぉ、ミラ大将殿。今日もお美しい。」
はぁ…人が折角楽しく話してたのに。
「…カード隊長、何ですか?」
「いやあ、今日も美しかったのでつい。」
…はぁ
聞きたくも無い話を永遠に聞かされると思ったらすぐに他の人がきて話は続かなかった。
会議が終わって僕はすぐに部屋からすぐに出た。
作戦の内容は僕以外がこの前線に残って戦い、僕がもう一つの戦場で戦う事になる。
何で僕が一人で戦場を任せられるのは僕の固有魔法があるから。
僕の固有魔法は鏡魔法、名前だけだとそんなに強くなさそうでしょ?
能力は全ての魔力を持つ攻撃を反射する魔法。
しかもある程度の攻撃も受け付けなくなるし、魔力強化などの非接触の魔法は吸収する。
強いでしょ?でも本当は堅牢ちゃんがいた方がもっといいんだけどね。
最初の方は全く使えなかったけど一年位で完全に使いこなせてきて気がついたら大将まで登っていた。
戦場に着くと王国軍がもう帝国軍と接敵していた。
「ミラーウォール!」
魔法を発動させて飛んできていた魔法を全反射させる。
「うわぁ!魔法が跳ね返ってきたぁ!」
「悪魔だ!悪魔が出たぞ!」
「お前ら!ミラ大将がきたぞ!もう一踏ん張りだ!」
僕がきてから戦況が一気に傾く。
魔法を反射や吸収して相手を壊滅させていった。
気付くと相手の軍は全壊。
仕事を終わらせて僕は他の最前線に向かった。
この後帝国側は降伏、戦争は終わった。
次の日の休日、僕はある物を提出するために王城へ来ている。
城内を歩いていくと僕の数少ない友達がいた。
「タルト王女殿下、お久しぶりです。元気でしたか?」
「…久しぶり、今時間はあるかしら?久しぶりに話しましょう。」
「これを出してからでもいい?」
「わかったわ、じゃあ私の部屋で待っているから。」
そう言って一旦別れて騎士団長室に行く。
「失礼します。」
「今は団長殿はいらっしゃらない、少し待たれよ。」
今いないのか、なら都合がいいね。
第二王子に聞かれたら絶対に辞めれないし。
「いえ、いなくても大丈夫です。今日はこれを提出しにきただけなので。」
私からこれを提出した、それを見て驚いているのが見える。
「…本気なのか、騎士団をやめるとは。」
「はい、騎士団をやめたら買取所の職員にでもなろうかと。」
「…わかった、この事は伝えておこう。」
提出した後タルトちゃんの部屋に行く。
通してもらうとタルトちゃんが座って待っていた。
「あら、案外早かったわね。何を出してきたの?」
「退職書だよ。」
そう言うとタルトちゃんが驚いた。
タルトちゃんは小さくて可愛らしい顔をしている。
金髪蒼眼で将来は美しくなると思うな。
その代わり僕は…うっ!
「退職書!あなた、騎士やめちゃうの。」
「うん、買取所の職員にでもなろうかなって。」
「…あなたがそうしたいなら応援するわ。私からの推薦状も書いておきましょう。」
「ありがとう、でもそこましなくてもいいよ?」
別にそこまでしてもらう必要はないからね。
「あの兄様がなんかしてくるでしょ?私が推薦すればあんまり変な事、出来ないはずよ。」
「…確かにそうだね、じゃあお言葉に甘えさせてもらおうかな?」
「私が推薦すれば一番上にもすぐになれるはずよ。そうすれば安泰じゃないかしら?」
その後、少し話してから部屋から出た。
「じゃあまたね。次はいつかわからないけど。」
「うん、タルトちゃんもまたね。」
城から出て買取所に行き就職書を出す。
先程書いてもらった推薦状を見せると驚いてるのがわかった。
そのあと無事就職して地道に仕事を積んでいく。
その間になぜか僕がトップになっていた。
一年も経ってないのになれているのは考えなくてもわかる。
そして大体二年の月日が経っていた。
その間特に覚えている出来事は槍を使っている子が登録した時かな。
この国で槍を使う人がいるなんて…
そういえば最近ワイバーンが出てくるらしい、ここらじゃ見かけない魔物なのに…
いつもの様に仕事をしているとワイバーンが倒されたと聞いた。
誰が倒したか聞いてみるとスランらしい、あの槍の子だ。
と、すぐに思い出した。
しばらく仕事をしていると倒した張本人がこの部屋に来た。
スラン君は緑髪で紅眼でまるで伝説の吸血鬼、紅を連想される。
「はじめまして、スラン君。僕の名前はミラ。よろしくね。」
「こちらこそ、はじめまして。えっと、ミラさんは…その…」
スラン君が戸惑っている様子だ、まぁそうだろうね。
「僕は女だよ、よく間違えられるけどね。」
「すいません、どちらかわからなくて。」
うっ、確かに僕は女性が使う場所に行くと間違われるけどさ…
それから色々と話していると気がついたら時間が少し経っていた。
あの王子の愚痴を喋っていて気付かなかった、反省反省。
いつの間にか魔法が使われている、防音と風か、スラン君がやってくれたのかな?
魔法の事を話しても認めようとしてくれないから騎士だった事を言うと凄い勢いで聞いてきた。
スラン君は騎士になるのが夢らしい、槍なのに?
お父さんがやってたのを聞いてどこにいるか聞くと顔を沈めた。
やってしまった、謝らないと。
謝って僕ができる事があったらなんでも…あっ。
何言ってんの私、それで変な事を…いや別に…
混乱していたら『二つ名はなんですか?』と聞かれた。
二つ名…昔はよく悪魔悪魔言われてたなぁ。
取り敢えず一番気に入っている鏡の戦乙女を出したらスラン君が更に興奮した。
尊敬とかサインとか言われた事無かったから少し嬉しいな、と思ってしまう。
僕の事を褒めてくれるし、珍しい人がいるんだなぁ。
…第二はノーカンだよ?
最後に友達になってと言われて戸惑う。
男性に一切接点のなかった僕に男性の友達が!やった!
様付けされた後に呼び捨てをされて僕の少ない男性免疫力が壊されていった。
サインを書いている間に気になっている事を聞く。
「どうして僕が好きなのかい?」
「えっ?」
「ほら、僕って悪魔とか呼ばれてるから人気はないかなと思っていてね。」
「…僕、その呼び方嫌いなんですよね。」
えっ、
「人につける様な名前じゃないので嫌いなんです。戦場なんて全員が命を狙う悪魔みたいなものなのに。」
「…」
「だからミラさんは自分をそう蔑まないで欲しいんです。」
…
「僕達にとってはヒーローなんです。だから自分を嫌いにならないでください。」
…もし騎士をやってる時にあっていたらまだ続けてそうかな…
「僕が大好きな騎士ですから、嫌いにならないでください。お願いします。」
涙が流れそうになる、今までそんな事言われた事ないから。
小さな頃、僕はある子が好きでその子が騎士が好きだった。
その子に好きになってほしくて騎士になる事にしたのは覚えている。
固有魔法がわかってから国に教育させてもらっていたらいつのまにかその子はいなくなってた。
兵士試験の前日僕はスラン君と食事に来ていた。
待っていると女性から遊ぶ誘いを受けてしまう。
僕にはそういう趣味はないので断っていたらスラン君が向かってくる。
その人たちに断りをなんとか入れてお店に入った。
メニューを見てスラン君が高くないかと言いはじめた。
スラン君はなんと一つ五千コール以上の買い物をした事が無いらしい。
話していると今度僕の家にくると言われちゃった。
家汚いし断ろうとしたらいつのまにか行く約束をしてしまう、どうしてこんな事に…
試験当日、僕は王城まで来ていた。
今日から聖女様もくるらしくて護衛の増援を頼まれたんだ。
最近来たばかりだけど前回はタルトちゃんと話せなかったからなぁ。
廊下を歩いているとタルトちゃんがいた。
「お久しぶりですタルト様、お元気そうで何よりです。」
「久しぶりねミラ、どう?話せるなら話したいんだけど。」
指定の時間は三時間先なので平気だろう。
「二時間くらいなら平気です。」
「じゃあ平気ね、私の部屋で話しましょう。」
タルトちゃんの部屋に来て座って話し始める。
「今日はなんだか機嫌が良さそうね、何かあったの?」
僕に男友達ができて最近食事にも行った事を話した。
「貴女に男友達?…っはは、貴女に男友達なんて…えっ、本当にできたの?」
「疑ってるようだけどちゃんといるよ!」
「ふーん…ねえ、ミラ。」
「何?タルトちゃん。」
「貴女…その子のこと好きなの?」
「…そそそそそ、そんなわけないでしょ!会ったばかりなのにそんな事、」
「好きなのね、わかったわ。」
そうだった…タルトちゃんは魔力の流れが見える魔眼を持ってた…。
その魔眼を使いこなしてなぜか嘘か本当かわかるまで判断出来るまでになってたんだっけ?
「…その魔眼、どうにかならないの?」
「生まれつきなんだから仕方ないでしょ、常時発動でやめられないし。」
でも、好きか…久しぶりにこんな感情が湧いてきたなぁ。
少し話して別れると丁度いい時間になっていた。
集合場所に着くと少し慌ただしくなっている。
丁度知り合いの中将がいたので話しかけた。
「何かあったんですか?」
「?、おぉ、ミラ元大将ではありませんか!どうしてここに?」
「警備の要請を受けたから一時復帰してるんだ。」
「それは頼もしいですね。おっとそうだ、実はですね…」
話を聞くと魔物が接近しているらしい。
「…そうだね、じゃあ僕が西を押さえておくから他の方面は任せてもいいかな?」
「平気ですか?元大将といえど戦闘は久しぶりでしょう。」
「心配しなくてもたまに大魔王の森に入っているから平気だよ。」
「…せめて一小隊程は連れて行って欲しいのですが。」
「いいよ、まぁいらないと思うけど。」
そう言って西側に向かう。
しばらくして魔物達が攻めてくる。
まず、ミラーフィールドを貼ってうち漏らさないようにして魔法を準備していく。
「これから少し真面目に魔法を打つから気を付けてね!」
「お前ら!魔法には気を付けろ!」
魔力を一気に変換する。
「ミラーブレイク!」
そう宣言するとミラーフィールドが割れて中にいる魔物達が死んでいく。
仲間に当たらないのは昔からやっているので慣れたもの。
魔物が居なくなり処理をしていてしばらくすると物凄い勢いで王城に攻撃してきたのがわかった。
だが風の魔力で一瞬で吹き飛ぶ。
「この魔力はスラン君、かな?」
その後聞いたんだけどワイバーンが襲ってきたらしい。
ワイバーンか…最近変だな、ここら辺にはいない魔物が多く出てきてる。
出現量も増えてきたし、何が起きているんだろう?
次の日、スラン君が来た。
要件は二つあるらしい、一つ目は会員証明書の返却。
聖女様に護衛を頼まれてそのまま騎士になるらしい。
そうだよね、騎士になれるんなら他の国に行っちゃうよね。
この大陸では聖女の予言があった時には国ぐるみで協力する事になっている。
これは初代聖女様と初代勇者様が制定したので拒否すれば他の国を敵にする行為。
僕が止めても無理だろう、寂しいけどまたいつか会えることを楽しみにしよう。
二つ目は休日を知って私の家に行く…えっ。
やってしまった、気付いたら来ていいって言っちゃった。
だ、大丈夫、来る前に片付ければ平気なはず…
次の日の朝ドアからノックが聞こえてきた。
隣のおばあちゃんの差し入れかな?
寝間着のままドアを開けるとスラン君がいた。
ドアを閉めようとしたけど身体強化でいともたやすく入られてしまう。
「これは…」
…終わった、僕は家事が出来ない残念な子に見えちゃう。
全部の部屋を見て回って掃除のプランを立てて早速掃除を始めていた。
昼までに僕の部屋以外は掃除をし終わったので昼食の準備をする。
材料はスラン君が持ってきたもので一緒に作った。
たまに手に触れてきたりして緊張してしまってうまく出来なくてボロボロになってしまう。
スラン君は毎日作ってるだけあって上手だった、僕もあんな風にいつか作れるかな?
昼食を食べ終わって最後に僕の部屋を掃除を始める。
僕一人でやってみてと言われたので一人でやっていく。
後ろで見ているスラン君にいい所を見せたくて張り切って一歩前に踏み出すと転んでしまった。
「キャァァァァァァ!」
いててて、転んじゃった。
…何か嫌な予感がする。
後ろを振り返るとスラン君が黒い布を持っていた。
黒い布…三角形…あっ!
とっさにそれが何か思い出してスラン君から奪い返す。
これ以上恥ずかしい思いやかっこ悪い所を見られたら嫌だから少し強引に部屋から追い出した。
掃除をし終わってドアを開けたらスラン君が立って待っていた。
追い出した事を謝るとスラン君も謝ってくる。
男の人を部屋に入れるのはちょっと嫌だけどスラン君なら…
中が綺麗なのを確認してもらって休憩してそのまま晩御飯も食べた。
今度はスラン君一人で作ってもらった、昼とは違ったスピードで驚く。
僕の料理を楽しみにしてると言ってスラン君は帰っていった。
だんだんと離れていくにつれて涙が出そうになる。
それを我慢してなんとか家の中に入った、そして涙が止まらなくなった。
スラン君が国を離れて一週間ほどたち、また王城に来ていた。
今日は元々タルトちゃんと話すために呼ばれたので普通に部屋の前まで行く。
部屋に入ってタルトちゃんと話し始める。
「今日はなんで呼んだの?いつもなら二ヶ月くらい間を開けてるでしょ。」
「…今日は親友を慰めようと思ってね、どう?気持ちの整理はできた?」
「…」
「出来てないようね、…はぁ。」
そう言って僕に近づくタルトちゃん。
「いい、めげてちゃ何も始まらない。自分から行動しないとダメだからね。」
「…」
「今、彼がいなくても出来ることはある筈、それを出来るだけやりなさい。」
涙が出そうになるがそれをこらえて喋る、声はブルブルと震えている。
「…私でも女の子として見られるかな?」
「貴方の努力しだいで結果は変わるから、頑張ってね。私には応援とか悩みを聞くくらいしか出来ないけどさ。」
涙が溢れでてタルトちゃんに寄りかかる。
もしスラン君と会う機会があったらとびっきり驚かせよう。
…でもその時は気づかなかった。
「チッ!」
外で私達の話を聞いていた誰かがいた事に。
KHRBお願いします。
果たして聞いてた人物とは誰なのか…
では二章でまたお会いしましょう。