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先代と暴食

イレイサで悪魔が倒された頃、マルマーでは激しい攻防が繰り広げられていた。


「紫電!」


暴食なる世界(グラトニーワールド)!」


現在、暴食が有利の状況で戦いは進んでいる。

皇帝の攻撃は暴食に全て無効化される。

対して暴食は攻撃が無効化されることはない。


この時点で皇帝が勝つには暴食に無効化される前に一撃を入れる以外に方法がない。

逆に暴食は相手の攻撃を受けきって相手が疲れ切ったら自動的に勝利となる。

皇帝に時間制限がある以上、そこにも気を付けなければいけない。


ただ当然暴食はその情報は知らない。

よって無限に攻撃をしてくる彼に余計な時間をかけたくなかった。


「ちっ。」


「そろそろ終わりにしようか!」


そう言って暴食は信じられない程の魔力の塊を投げつけた。

その塊は闘技場を埋め尽くす程の大きさであり、今から避けるのは至難の業だ。


「紫電分裂!」


ただ彼には一日一回の回避技がある。

しかしながらこの技は魔力を持つ攻撃なら当たってしまう。

ただそれは当たった時の話であり、当たらなければ問題ない。


彼は暴食の背後を取り、紫電集合で実体化する。


「ふぅ、これでやっと終わ──」


「紫電竜跡!」


「はぁ!?」


彼の最高威力の武技を受け、暴食は地面に叩きつけられた。

そして彼も、地面に向かって自由落下していく。


皇帝の体はもうまともに動かせない程の疲労が蓄積していた。

今日はもう戦えない体になっていたのだ。


「はぁ、はぁ、はぁ、勝った。」


「んなわけねぇだろうが!」


皇帝は横腹を蹴られ、壁に衝突した。

もう彼に立ち上がる気力すらなく、そのまま倒れこむ。

立ち上がった暴食の体に、何一つ傷はなかった。


暴食は、確かに攻撃を受けている。

技も使えず、直撃。

何故彼が無傷なのかと言えば、単純に言えば魔力の差だろう。


彼の技である暴食の時間の性質上、魔力を沢山抱えて過ごす事が多い。

消化した魔力は自身の魔力に変換し、それを使って攻撃しているのだ。

そんな暴食は基本、戦闘で使わなかった魔力は取っておいている。


他の悪魔達と戦う事が多い暴食には大量の魔力が蓄積されていた。

先程の攻撃は今回の戦闘のみの魔力だ。

貯蓄している魔力は一切使われていない。


圧倒的な魔力量に差が無ければまず起こらない現象が、今まさに起きてしまった。

代償として受けた魔力分魔力を消費するのだが、そもそもそこまで差があるのなら代償として成り立っていない。


現在の魔力量ではもう一度同じ攻撃は耐えられないが、もうあの攻撃は使えない以上彼の敗北は確定したも同然だ。


「はぁ、面倒なことしやがって。」


「……」


「さて、とっとと殺しておくか!」


暴食は面倒事が起こる前にさっさと殺しておこうと考え、斧を振り下ろす。

ただし、その攻撃は皇帝に当たらなかった。


「……誰?」


「今殺されると困るんだよね。」


先代聖女の護衛であるルークがその攻撃を受け止めていた。

暴食がそのまま押し込もうとするも、少しも動かなかったので距離を取る。


「面倒な事に──っ!?」


暴食が下がった地点に、火の魔法が無数に飛んできた。

それも相当な威力で当たったらいけないと感じる程。

すぐさま暴食なる世界を発動し、魔力を防ぐ。


「うーん、魔法を無力化ね。ルーくん少しだけ足止めしてて。」


「分かった。」


先程の魔法を放ったのは先代聖女であるテリジアだ。

天使からの要請を受けた彼女は、学校の生徒を避難させ生徒全員が無事な事を確認してから来ている。

その為ある程度魔法を仕込みながらの移動をして、今ここに到着したのだ。


「さて、ほぼ死にかけですね。皇帝陛下。」


「はは、面目ない。」


「一人で行くからですよ。」


そう会話しながらも彼女は魔法を使う準備をしている。

その量はどんどんと多くなっていき、暴食にも無視は出来ない位にまで膨らんでいく。

妨害もルークによって防がれる為、邪魔は出来ない。


「君は……何をしようと……」


「私が研究している対象の成果、ですかね。」


「邪魔、だぁっ!」


「っ!、受けきれないか。」


「いえ、もう十分よ。」


先代の魔法が完成し、辺りに魔法陣が展開されていく。

ただそれは暴食が考えていた物よりずっと貧弱な物だった。


「ふっ、思っていたより随分とちっぽけな魔法じゃないか。」


「でも、今からこの魔法に殺されるのは貴方よ?」


「はぁ、あのさ、その程度で死ぬ程弱くないんだよ。そんな貧弱魔力──」


「『魔魂連結(ゼーレル)聖炎(フレイメリジ)』。」


その一言を聞いた後、暴食は身の危険を感じていた。

反射的に後ろに下がる程、感じていたのだ。


彼女の魔力が知らない魔力に上書きされている様な感覚になり、警戒する。

そしてその魔力は、悪魔に特攻を持つ”聖”の魔法とどこか似ている。


「なんだ、それ。」


「『聖域(フレジール)』。」


その魔法は瞬く間に闘技場に広がり、暴食は避ける事が出来なかった。

それと同時に体が焼ける感覚が全身に広がる。


長くこの場にいるのは危険と判断した暴食は即座に逃げ始めた。

しかし、彼女の魔法から逃げ出すことは出来ない。


「っ!なんで……」


「この魔法から貴方みたいな悪側の生き物は逃げ出せないの。『聖炎』。」


テリジアは暴食に休ませない様に魔法を放つ。

当然暴食は”暴食なる世界”で防ごうとするが何故か発動しなかった。

仕方がなく避けるがその魔法は追尾してくる。

打ち消すために斧で攻撃しようと考えるが、体が動かなかった。


結局その魔法に暴食は当たってしまい、酷い激痛が全身に走る。

その痛みは思わず膝をついてしまう程だった。


「ぐっぅ、はぁっ、はぁっ、はぁっ。」


「貴方は魔法を発動出来ないし、体を思うように動かせず、私の攻撃は必ず当たるの。」


先代聖女、テリジアは魔法学における秀才と言ってもいい。

聖女という立場にいながらも学者になれたのは彼女だけだ。


そんな彼女の専攻は固有魔法である。

そしてその研究の成果が、彼女の使った魔魂連結だ。

これは固有魔法ではない魔法を固有魔法にする技。

言うなれば、魔法の固有化だろう。


詳細は省くが固有魔法とその他の魔法の違いの一つに魂が関連している。

固有魔法は魂の力をほんの一部だけ流用し、それ以外の魔法は一切使っていない。

そこに気付いた彼女は固有魔法以外の魔法も固有魔法と同じ威力を出せるのではないかと考えたのだ。


なんとか彼女の火の魔法で固有魔法と同じくらい、いやそれ以上の魔法が使える様になった。

固有魔法とそれ以外の魔法にある隔絶した性能差を縮められる可能性を見いだせたのだ。


「くそっ!体が……!?」


「まさか、君から回復される日が来るなんてね。」


「私も継承してから人を回復させる事があるなんて思いもしませんでした。」


皇帝が先程の傷を何事もなかったかの様に立っていた。

『聖域』の効果に正側の人を回復するという効果がある。

そのおかげで彼はこの場に再び立てていた。


「さて、もう殺していいかな?」


「えぇ、もう十分試せたし、突破されても困るから殺しましょう。」


そう言われ彼は双剣を振り下ろす。

その一撃は暴食に当た──らなかった。


「まだ動けるなんて、悪魔は凄いね。」


「こんな所で、死ねないんだよ!」


暴食は今まで貯めていた魔力を使って体を無理矢理動かす。

魔力が底をつけば命の保証はない、諸刃の剣状態で戦っているのだ。

果たして、暴食は魔力が尽きる前に勝つことが出来るのだろうか?






一方、とある場所。


「あっ!また変な人だ!もうっ!うるさい!」


『なるべく早く来てね。』


『分かってる。』


「……パパ?」


スランの声が聞こえた事により、協力していなかった一人に心境の変化が起きたのだった。

KHRBよろしくお願いします。

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