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槍と説教

「……タルト?」


「何かしら?」


なんだろうか、この嫌な雰囲気は。

身に覚えのある様な、ない様な、そんな感じがする。

今は近付かない方が良さそうだ。


だとしても離れるわけにはいかないので少し距離を取ろうとすると僕の服を掴んできた。

しかも僕が簡単に逃げられない様にするためか力は強い。


これは、セフィと同じだ。

あの悪魔がタルトに何かしたのか?

一体いつどこで……

いや、流石にそれはないか。


カトレアさんという天使がいる時点で悪魔は近付きたくない筈。

この前は正体を隠していたから知らずに来たんだろうけど今は隠そうともしていない。

わざわざ天敵を相手にするなんて、少なくとも僕はしたくない。


どうして?やるとしてもタルトにするのも不可解だ。

それこそセフィとかルナミスみたいな相手にとって面倒な人物にすればいい。

そしたらカトレアさんだけが面倒な相手になる、いくらかましになるだろう。


「どこに行くの?」


「いや、どこにもいかないよ。ただ少し近いかなって。」


「普段から近いでしょ、メイとかね。」


「それは……」


「本当は、私が近くにいると緊張するから、でしょ?」


「まさか、お前に──」


緊張するなんてありえない。

そう言い切る前に、僕はあっけなく押し倒されてしまった。

普段なら抜けられるだろうこの状態で、僕は感覚的に無理だ、そう感じてしまう。

どう考えても普段のタルトの力ではない。

僕と同等、またはそれ以上か?


多分あの魔法のせいなんだろうけど少なくともセフィの時には感じなかった。

いや、多分力は強くなっていたんだろう。

ただセフィの力を僕が特段強いと感じなかっただけで。

元々力自体はほぼなかったし、気付けなかったのも納得がいく。


成程、相手を魅了して力を上げる、そうする事で男を動けなくし、殺すんだろう。

今まさに、この状態を作る為に。


「結婚式の日、セフィリアには抜け駆けは禁止って、言われたけど、別にわからないと思うの。」


「はぁ!?ちょっ、おいっ!」


タルトはご丁寧に僕の服を脱がしていく。

しかも僕に抵抗を許さない様に魔法で腕を四本にしながら、だ。

どうしよう、このままじゃ僕はこいつに──


「……」


「あっ!ノレアーノさん!」


よかった、これで助かる──


「……お楽しみ中でしたか、お邪魔しました。」


あっ……


「邪魔者はいなくなったわね、それじゃあ──」


「いただきます、でしょ?」


「……」


「抜け駆けしようとするなんて、いい度胸ね。」


僕はなんとか、カトレアさんのおかげでこの窮地を乗り越えたのだった。




「反省してください!」


今、タルトは物凄くセフィに叱られている。

他の皆も一時的にこちらに来ているのでタルトの肩身は狭そうだ。

ただ当然と言うべきかフリージアは来ていない。

そして僕にはもう襲わせまいとメイとアリー、それにカトレアさんが囲んでいる。


「私は貴女だから何も言わずに任せたというのに、どうしてですか!」


「タルトちゃん、いつも男として見てないみたいな事言ってたけど、嘘だったんだね。」


「……」


もうタルトはこの件について何も言えないだろう。

僕もあんな事をされたんだ、無条件に何もなかった事にする訳にはいかない。

ただ、確認したい事はある。


「あの──」


「駄目です、ご主人様は大人しく座っていてください。これは私達の問題ですから。」


「そうそう、ダーリンはゆっくりしてればいいの。」


「そうよ、抜け駆けしようだなんて思う奴にはもう二度と出来ない様にするの。他の人が抜け駆けしようとするのを防ぐ為にも、ね。」


三人にそう言われたけど、あの様子だとタルトが心の底から望んでいたとは言いにくい。

悪魔の関与の疑いもある、そこに触れないのは不公平だろう。


「別に、僕も許す訳じゃないよ。」


「なら遠慮なく──」


「でも、もしかしたら悪魔の仕業なんじゃないか、って。」


「ご主人様、冗談はやめてください。天使がいると分かっていて近付く悪魔なんて馬鹿ですよ。」


「そうそう、大体なんで──」


「なっ、嘘でしょ!?」


「あるの!?」


やっぱりあったか、じゃないと説明がつかないし。


「色欲のやつ、いつの間に……」


「……色欲?」


「色欲ってセフィがおかしくなった薬を作った人だよね?」


「あれですか……」


「……」


天使のカトレアさん、それにその状態知っている三人には伝わっている。

薄々気付いていたのだろう、タルトもやはりという顔をしていた。

ただ勿論、伝わってない人もいる。


「色欲?何それ?」


「……?」


「いやミラ、貴女は分かりなさいよ。」


「そんな事言われても分からないものは分からないよ。」


アリーだけだと思っていたけど、ミラさんも覚えていない様だ。

結構印象に残りそうなものだけどな、悪魔って。


「ほら、マルマーとの戦争の時に愚兄に取り憑いてたあれよ。」


「えぇ?……あっあぁ!」


よかった、ミラさんは思い出したみたいだ。

そして想定通りアリーに色欲の悪魔の事を教えた。


「まぁ、大した事なさそうね。」


「僕からしたら親を殺した仇だけどね。」


「前言撤回、見つけたら殺す。」


と、これで皆に悪魔の事は伝わった。

後は、みんなの判断次第だ。

いよいよ明日から16話投稿です。

……忘れない様頑張りますね。

KHRBよろしくお願いします。

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