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槍と違和感

太陽が沈み切った時、僕達はマルマー帝国の港町に着いていた。

流石に半日ではイレイサ王国には届かないのでここで一泊しようという算段だ。

それを見込んでかその分の物資は船に積んである。


まぁ、ここまでは何も問題はない。


「なん、で……」


「言ったでしょ?留学から帰ってくるのを楽しみにしているって。」


何故かテリジアさんが港町にいた。

明らかにフリージアを帝都に連れて帰るつもりだ。


「別に留学から帰ってきた訳じゃ──」


「どう足掻いても一度呼び戻す事はメビウス帝の決定よ。なら一度戻るくらいならここで引き取った方がよくないかしら?」


「まぁ、そうですね。」


「おいっ!」


そうフリージアが言うと同時にフリージアの方に引っ張られ小声で話しかけられた。


「礼儀作法なんて私の方がいないと出来ねぇんだよ。」


「えぇ……」


うーん……よし、決めた。


「テリジアさん。」


「反対されても連れてくのは決定事項よ、今更何を言われたって──」


「フリージアをお願いします。」


「あら、そう?」


「なっ!」


僕が言える事ではないがこういうのは出来た方がいい。

特にフリージアは一国の姫だ、作法で何か言われるのは国としても痛いと思う。

たとえ一朝一夕であっても知らないよりはいいと思う。


「おいっ!」


「ルーク!」


テリジアさんがそう言うとどこからかルークさんが降ってきた。

フリージアはあっさりとルークさんに捕まってしまい身動きが取れない状態にされる。


「離せ!」


「……いつもならもっと抵抗してくるのに、今日はやけにおとなしいですね。」


今はソリアがいないから竜の力が使えなくて抵抗したくてもできないんだろう。

その証拠に一切魔力が感じられない。


「じゃあ私達はこの子を連れて帝都に行くわ。」


「分かりました。」


「セフィちゃんに会いたかったけど、それはまたの機会にしておくわ。」


そう言い残してテリジアさん達はフリージアを連れて行った。

僕は二人を見送って船に戻っていく。






暫くして僕はルナミスの部屋に行った。

船酔いが心配で来てみたんだけど、今は大丈夫そうだ。


「止まっている間はいけそう?」


「うん、今の所はね。」


そう言って背伸びをするルナミスを横目に僕は考え事を始めた。

何かというと僕の種族に関してだ。


独歩族……まず父さんと母さんのどちらが独歩族かが重要だ。

もしかしたらどちらも独歩族かもしれないがそれは相当確率が低いだろう。

一応魔界の生物だ、この世界でたまたま出会って恋に落ちて結婚するなんてそう楽観的に考えてはいけない。

問題なのはどっちも強い事だ、これじゃあ簡単に決めつけられない。


単純に考えれば剣で戦っていたらしい父さんと互角だった母さんがそうだと思う。

しかしながら父さんはそこらの人じゃ相手にならない程強かった。

そうなると……正直両方共独歩族と考えざるを得ない。


後、これは根も葉もない考えなのだが二人共生きているんじゃないかと思っている。

根拠がないわけではない、シキザの反応から僕はそう思っている。


ソーダルトとマルマーとの戦争の中で出てきたシキザは確かに両親を殺したと言っていた。

だがしかし、急に狼狽えたと思ったら憤慨していたのだ。


おそらくだが、あれは僕に毒が効かない事から僕の事を独歩族と考えその両親である父さんと母さんも独歩族だと推測したとしたら?

あそこまでの反応に納得がいく、少なくとも僕はそう思った。


なら一体父さんと母さんはいったいどこで何をしているんだ?

ここが一番の問題点、なんで僕を一人にしたのかという事。

まだあの時は子供だった僕を一人にして生活出来るとふんでいたとは少し考えたくない。


もし、そう考えていたのなら……少し寂しい、な。


「ねぇ。」


「ん?」


「何かあった?」


「何かって、特に無いけど、どうしたの急に。」


「なんか、寂しそうな顔だなって、思って。」


どうやら顔に出ていたらしい。

少し考えすぎてたのかな?


「そういえばメイの話だと勇者になる時に武技みたいにしてたらしいけど、本当?」


「うん、そっちの方が強くなれるって言われたから。」


武技みたいなんだな、勇者の力っていう物は。

そう考えると異世界の人は羨ましいな、そんな強力な力をもっと強く使えるんだから。


「……やっぱり少し戦ってみた──」


「絶対にやらないよ。」


予想通りだけど断られてしまった。

だけどその強さの片鱗を僕はまだ近くで見ていない。

……いつか戦ってみたいな。






あれから暫くしてイレイサに戻り数日が経った。

今の所何も問題なく日々が流れていく。


今僕は第六聖の訓練の様子を上から一人で見ていた。

なぜ一人かといえばただ単純に今は休憩時間中というだけだ。


「あの、先輩?」


「あれ、カトリーナさんどうしたの?」


訓練している筈のカトリーナさんが僕に話しかけてきた。

なんでここにいるんだろう?


「あの、この前のお願いを聞いてほしいんです。」


「あぁ、あれね。いいよ。」


確かにあの時また後でって言ってたな。

何をお願いするんだろうか?

まさか告白──なんて、ないか。


僕はカトリーナさんの事だから少し変なお願いだと思っていた。

だがしかし、彼女のお願いは単純なものだった。


「私の目を見てくれませんか?」

KHRBよろしくお願いします。

この次の章はオムニバスをやりたいと思いやったので少しだけ投稿量が増えますが文量が多くなった訳ではないのであしからず。

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