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槍と孤独

「独歩族はね、完全に悪魔に擬態して悪魔を殺す種族なの。」


「……ダーリンを悪魔と見間違える要素がありませんよ?」


「ふふん、見た目が似てるかどうかなんて関係ないのだよ。」


そう自信満々に言いまた何も無い空間から大きい白い板を出した。

そして一瞬の間に板の上に絵が描かれその絵を使って説明は続く。


「魔界の悪魔はね、体から毒を放出して悪魔特有の魔力と魂を持っているの。」


ここが魔界でなくてよかったと心底思う。

もしここが魔界で、普通の人間だったとしたらまず戦いの土俵に立ててない。


「しかもね、なんと悪魔は今言った特徴を魔力で悪魔かどうかを判別しているんだ。」


「目で見ないんですか?」


「魔界は毒性の魔力の所為で物凄く見通しが悪いの、目で見るくらいなら魔力で見た方が何百倍も見やすいんだよね。」


そう言うとルナローズさんは両手の人差し指を僕達に見せ、左方に桃色の煙を出した。

この煙……なんだか……


「何も無い方がこっちの魔力ね、どう、見辛いでしょ?」


「何も……見えませんね。」


「でも?魔力を少し使うと……」


そう言ってルナローズさんが魔力を込めると、先程まで桃色だった煙の色が若干変わった。


「……全然見えません。」


「目で見ないって言ったでしょ?ほら、目を瞑って!」


僕達は言われた通りに目を瞑るとすぐにはっきりとルナローズさんの右手が見えた。

二人とも魔力は込めていないのでルナローズさんがやってくれたのだろう。

なるほど、これなら目を使わない方がいいな。


「もっと近付いてもいいよ。」


そう言われたので出来るだけ煙のあった方に近付く。

……


「これが、魔界全体に広がってるんですか?」


「うん、勿論多い所と少ない所はあるけどさ。」


もう……我慢出来ない。


「きゃっ!?」


美味しい、もっと、もっと、モット、タベタイ。


「痛っ!」


「何してるの、ダーリン?」


何故かアリーがお腹をつねってきた。

鬼の形相だ、物凄い不機嫌な事だけは分かる。

でも何も心当たりが無い、ただここで話を聞いてただけだし。


「うーん……食べた事無かったんだね。」


「何がですか?」


「……」


横にいるアリーの無言の視線が痛い。

流石に僕が何をしたのか考えてみよう。

食べた……今僕が何かを食べたって事か。


そういえばルナローズさんが出していた桃色の煙がなくなっている。

それを食べたのかな?話を聞く限りだと毒らしいし。


「その、なんかすいません。」


「別にいいけどさ、()()()()()()()()一大事だったんだからね?」


「一大事って、そんな大袈裟な……」


「まぁ、信じないよね……」


そう言って空を見たルナローズさん。

……本当に一大事になってたかもしれない。






フォレスチナで一夜を過ごし、僕達は竜王国に戻ってきた。

あの後アリーが


「私の指も咥えて!」


と言い始めた事以外は特に問題はない。

昨日の内に起きていた事は説明したし、後はもう帰るだけだ。


フリージアだが、まだ起きていないらしい。

ソリアが体を開け渡してからまだ一日も経ってないしそんなものなのかもしれない。


フリージアは僕達が竜王国に着く前に船に運んでおいたそうだ。

一応船にはメイがいる、並の相手なら襲撃されても問題ないだろう。


「これでお別れですか、貴方達が運命に打ち勝つ事を願います。」


「我々竜王国は今回の運命には干渉出来ぬ、であろう?」


「はい、我々が協力しようとした所で結局邪魔になるでしょう。」


セフィに下された神託に今回竜王国は協力しない方向だ。

アンゼスさんが言うのならその通りになるんだろう、あくまで勘ではあるのだけれど。


「では、またお会いできる事を楽しみにしています。」


「はい、では。」


気が付くと既に船の中にいた。

元々アンゼスさんが転送してくれるのは知っていたのであまり驚きはしない。


実はフリージアを船に運んだのもアンゼスさんだ。

ソリアは嫌がりそうだけど今は意識がないからね。


「じゃあ、後はお願いね?」


「うん、ルナミスもゆっくり休んできて。」


ルナミスは船酔いする前に部屋に入っていった。

僕はいつも通りセフィを部屋に連れて行こうとした時、後ろの突き当たりの部屋からメイが出てきて走ってくる。


「ご主人様、起きました。」


「分かった、セフィの事頼んでもいい?」


「はい、では行きましょう。」


「そうですね、ではスラン、また後で。」


そう言って二人は廊下を歩き始めた。

さて、僕もフリージアの所に行こう。






突き当たりの部屋に着き三回扉を叩いてから僕は部屋に入った。

部屋に入ると当然だがフリージアが起きていた。


「起きた?」


「あぁ……」


頭に右手を当てていてなんだか少し体調が悪そうだ。

ソリアの事はまた後にした方がいいかな?


「なぁ……」


「ん?」


「私はどこに行ったんだ?」


「別にどこにも行ってないよ。」


「じゃあなんで反応しねぇんだよ!」


急に大声でそうフリージアは言い放った。

大声に少し驚いたけどフリージアはそれどころではないな。


「何も、何も反応しねぇんだよ……」


「大丈夫、今少し力を使い過ぎて寝てるだけだから。」


「本当か?嘘じゃねぇよな!?」


「勿論、嘘なんか付かないよ。」


「そう、か。」


そう言いながらフリージアは僕に寄りかかってきた。

暫くは一緒にいよう、ソリアがいなくて不安だろうし。


「よかった……私は消え、て……」


「どうしたの?」


そう聞くとフリージアは即座に僕から離れた。

顔を赤くして右手で口を隠している。


「ねぇ、どうしたの?」


「なっ、なんでもねぇから!暫く一人にしてくれ!」


「えっ?でも──」


「いいから出てってくれ!」


「うわっ!?」


そう言いながらフリージアに部屋から追い出されてしまった。

……まぁそういう事なら一人にしておくか。

KHRBよろしくお願いします。

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