槍と既視感
「メイ。」
「……何ですか?」
「フリージアのことお願いしていい?暫く起きないと思うから。」
明らかに不機嫌なメイにフリージアの事をお願いした。
「!、……はい。」
メイは少し驚きはしたがすぐに落ち着いてフェルを呼び出しその背中にフリージアを乗せ歩いて連れて行った。
「何か、あったのですか?」
「……何もありませんよ、フリージアも寝ているだけですし。」
「何かありますね、後でじっくり聞かせてもらいます。」
「……わかりました、アリーを迎えにいった後ならいくらでも。」
少し不満そうだが何も言わない辺り了承はしている筈だ。
後が怖いけど、今はそんな事言ってられない。
「後で私が彼女の容態を見ておきましょうか?」
「寝てるだけではあるんですけど、お願いします。」
「はい、ではアリーさんの事、お願いしますね。」
「了解しました。明日の昼前くらいには帰ります、では。」
「気をつけてくださいね。」
「はい。」
僕は槍に乗りそのままフォレスチナ方面へと飛んで行ったのだった。
フォレスチナに着く直前、シルフィの魔力が近づいてくる。
そういえばタオとの戦いで召喚を中断された後一度も呼んでいなかったな。
あんな状態で戻されてそれから音沙汰が無いんだ、心配なのも頷ける。
《……》
「どうしたの?」
《……本物だね、よかった〜。》
「本物かどうかなんて確認する必要あった?」
《あるよ!もし偽物だったら森が大変な事になっちゃうんだよ?》
「つまり僕が悪魔に勝てないと思ってたんだ。」
《うっ……だってあれ私と同じくらいだったから、勝てないと思って。》
確かにあれは僕が勝てる様な相手ではなかった。
キョニョ助がいなかったら絶対に負けてたし。
「僕一人なら負けてたと思うけど、キョニョ助がいたから。」
《誰、その子?》
「呼んだ時に妖精さんだって反応してた子。」
《あぁ〜、あの子ね。……えっ、本当に?》
「うん。」
《ただの不死鳥でしょ?確かに魔力量は多かったけれど悪魔の相手なんて無理でしょ。》
確かにキョニョ助が普通の不死鳥ならできなかった筈だ。
実際キョニョ助の兄の不死鳥は一瞬の内に殺されていた。
だがキョニョ助は僕とほぼ同じくらいの魔力量を持っている。
突然変異と言っても過言ではない。
シルフィがいない状態であれば魔法の扱いに関しては僕より上手かった。
何故こうなったのかは僕にもわからない。
単純にキョニョ助に才能があったのか、それとも環境による違いか、もしくはまた別の何かなのか。
どちらにしろ不死鳥の生態が明かされない限りわかりはしない。
「キョニョ助の魔法はあの悪魔と相性が良かったんだよ。」
《相性ねぇ……まぁ、いいや。》
そう言ったシルフィは僕が乗っている槍に手で触れた。
槍は少しだけ光った後何事もなく元に戻った。
「何したの?」
《私が出入りする為の精霊門の修復、壊れてていけなかったんだからね?》
「壊れる物なの?精霊門って。」
《壊れない事は無いけど、私のは特別仕様だからあれくらいの魔力じゃ壊れない筈なんだけどなぁ……》
シルフィは壊された事に対して不満があるのか文句を小さな声で言い始めた。
余程悔しいのだろう、シルフィの魔力が少しだけだがいつもより多く感じる。
このままフォレスチに行ってもいいんだけど、僕も少し精霊門に対して興味が湧いてきた。
少しだけここに止まって話を聞いてみようかな、シルフィのおかげで魔力の心配はないし。
「精霊門ってさ、どんな魔法だと壊れやすいの?」
《え、……空間に作用する魔法が大量の魔力を伴って短期間で高頻度で使われたら壊れなくはないって感じかな?》
「そんな魔法、タオが使ってたかな?」
《あの悪魔じゃなくて不死鳥の子がやったんだよ?》
「えっ!?」
キョニョ助が?
そんな様子なかった……ん?
キョニョ助がタオ相手に使った武技らしきものは二つ。
その内紅玉好転はどう考えてみても空間系には見えない。
とすると翠玉遂行が空間に作用すると考えるのが自然な考えだ。
あれは連打系だったし少ない回数でも壊れたんだろうな。
ならタオの弱点は空間系の魔法か……
分かった所で僕は空間系なんて使えないし意味が無いな。
《あっ!忘れる所だった!アリーちゃんが心配してたから早く来て!》
「元々そのつもりだ──うわっ!?」
僕が言い終わる前にシルフィが僕を魔法でフォレスチナ方面へと飛ばした。
槍はなんとか元に戻せたので失くさずにすみそうだ。
というか……
「今回は頼んでないんだけど?」
《早く行かないとアリーちゃんが可哀想でしょ?》
「まぁそれはそうだけど、……で、ちゃんと着地方法は考えたんだよね?」
《えっ?……あっ。》
「はぁ……」
《そっ、そんな目で見ないでっ!》
こうやって空を飛ぶのはフォレスチナに来た時以来の感覚だ。
だけどあの時とは違って僕の体は素直に動くし、覚醒も使いこなせる。
今の僕なら魔法無しでも……
そう考えている間に地面が見えてきた。
僕は覚醒を使う為に集中をする。
覚醒した感じが出てきたので目を開けると解除すればすぐに地面とぶつかりそうな距離だった。
僕はすぐに体制を立て直す準備をして手を地面につける。
そのまま何回か跳ね安全に地面に着地できた。
僕はすぐに覚醒を切ると後ろから抱き付かれた。
この感覚は見なくても分かる、これは──
それと同時に謎の煙が僕を取り囲む様に出たのであった。
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