槍と旅立ち
「キョニョ助!」
タオの一撃でキョニョ助は遠くに吹き飛ばされてしまった。
いくら不死鳥だとしても今のは一時的に再起不能にはなる筈。
少しは足止めしないとキョニョ助が死んでしまうかもしれない。
そう思った僕はタオに足止めをしようとする。
が、それはタオ自身に防がれてしまう。
空中に黒い球が複数個浮き始めそこから無数の黒い炎が僕を襲う。
今の僕ではこの炎から身を守る事くらいしかできないな。
「君は、そこで、おとなしく、して?」
そう言い残してキョニョ助の方に飛んでいった。
僕も行きたい、けどこれを潜り抜けていくのは厳しそうだ。
どうやら僕が動いても黒い球は追ってくるらしいし。
ここは、仕込んでおいた魔法を使ってなんとかなる事を祈ろう。
そして僕はその魔法を放ち、槍で自分を覆う様にして時が過ぎるのを待つのだった。
頭が痛い。
全身も痛い。
だけど今すぐあいつを殺さないといけない。
でも立てない。
もう数秒あれば立てるのに、その時間さえあいつは許してくれない。
もう、死んじゃうのかな?
「じゃあ、ね!」
パパっ……
痛くない、どうして?
私は、恐る恐る目を開けた。
目の前にはいい人が私を守ってくれている。
「邪魔……」
「殺させねぇ!」
いい人はあいつの攻撃を抑えている、でも、これ以上は無理そう。
でもその間に立てる様にはなった。
私が一撃を当てたら、勝ちなんだから!
「操魂流:水龍転!」
いい人が技を使ってあいつの体制を崩した。
それと同時に前からパパの放った十個の魔法が飛んできている。
これなら、当てられる!
「成長──」
この一撃で、殺す!
「時間。!?!?」
「紅玉──」
「怠惰なる世「好転っ!!」──」
轟音が鳴り響いたと同時に僕の周りにあった魔力が消えてしまった。
それを感じ取った僕は恐る恐る槍を元に戻した。
辺りを見渡すと空にあったいくつかの雲がなくなっている。
さらにはこの島の火山の一部がなくなっていた。
見た感じキョニョ助がやったんだろう、おそらく。
僕は急いでキョニョ助が吹き飛ばされた方向に行く。
そこには力を出し切ったのか息を切らしながら座り込んでいるキョニョ助と魔力がほぼ無いグレン君がいた。
近くにソリアはいない、どこに行ったんだ?
「パパ……」
「キョニョ助、怪我はしていないか?」
「うん、守ってくれたから……」
そう言ってキョニョ助はグレン君の方を向いた。
そしてそのままグレン君の方に歩いていく。
「ねぇ、」
「え?」
「お名前教えて?」
「……グレンだ。」
「ありがとっ!グレンっ!」
そう言ってキョニョ助はグレン君に抱き付いた。
そのままグレン君の頬に顔を擦り付ける。
そのせいでグレン君の顔が真っ赤になっている事は今はいい。
十中八九懐かれたな、これは。
なら……いけるかな?
「キョニョ助。」
「何!パパ!」
「グレン君と番になってって言ったらどうする?」
「え?」
「うぇ!?」
「パパ的にはパパ以外と番になってほしいしキョニョ助も懐いてるから提案したんだけど、どうかな?」
「……うーん。」
そうは言ってもすぐには決められないだろう、大切な決断だ。
キョニョ助がいいならそれが望ましいしそうでなければしないでほしい。
できれば僕が生きている間に決められればいいんだけどね。
グレン君なら竜人だから長生きだし長い間寄り添ってくれるだろう。
僕は人間だ、いくらセフィがいたとしても精々五十年が限界だ。
……いや、独歩族なんだっけ?
ならどれくらい生きるかわからないな。
「よくわかんない。」
僕が思案している間にキョニョ助が答えを出した。
まぁ想像通りといえば想像通りだな。
「そっか。」
「だからね、」
「うん?」
「一緒に行こっ!」
「えっ!?」
その言葉と共にキョニョ助はグレン君の手を取り飛んだ。
……
「じゃあねパパ!また会おうね!」
「うん。」
そう言葉を交わしてキョニョ助は火山の方へ飛んでいった。
「元気な子ね。」
キョニョ助が見えなくなったと同時にソリアが話しかけてきた。
いつに間に後ろにいたんだろう?
気付かないなんて気が抜けてたのかな?
「ソリア、どこに行ってたの?」
「戦闘が終わるまで空で待機していたの。悪い?」
「悪くはないけどさ、少しくらいは戦ってほしかったな?」
多分ソリアだけタオとの戦いで何もしていない。
「しょうがないでしょ、やる事があったんだから。後、今の私じゃあいつに殺されちゃうもの。」
「全力出せないのは知ってるよ?」
「そうじゃないわ、そろそろ時間切れ、っていう事よ。」
それと同時にソリアが倒れそうになる。
僕は咄嗟にソリアを支えてそうなるのを未然に防いだ。
「大丈夫!?」
「……っ、えぇ。」
そう言いながら頭に手を当ててソリアは立ち直した。
苦悶の表情をしているソリアは少し辛そうだ。
「何かあったの?」
「……特にないわ、そろそろこの子が起きるだけよ。」
そうか、フリージアが起きるのか。
どこか嬉しい感じがするな。
でも、違和感が……
「この子の事、よろしくね。暫くは私の力を貸してあげられないから。」
お知らせしましたが後5話分書き終わったら毎日投稿に移行します。
周年までに全て投稿するのが目標なのでお待ちいただければなと思う次第です。
KHRBよろしくお願いします。




