槍と子供
届く前に一筋の光がソリアに降り注いだ。
それと同時にソリアが膝から崩れ落ちた。
「あの、平気?」
「平気な訳ないでしょ、死にたいの?」
「ですよね……」
明らかに落ち込んでいる声で返事をした。
どうしよう、何かすべきなのかな?
「無駄よ、もう何もかも終わったの。」
「その、ソリア?」
「何?」
「ここで何やるか知ってる?」
「知る訳ないでしょ、なんで私に聞いたのよ。」
「いや知ってるかなって。」
確かアンゼスさんは調査とか運命が狂うくらいしか言われてないよな?
一体何をすればいいんだろう?
というかいつ帰っていいのか分からないな。
「もう帰りましょう、何言われても問題ないわ。要件を言わないあいつが悪いのよ。」
「あぁ、うん……というかさっきのはなんだったの?」
「ん?殺そうとしただけだけど、それがどうしたの?」
「そんな急に殺さないで欲しいんだけど。」
多分僕がソリアって言った事に問題があるのだろう。
王城での妙な反応も僕が心の中でソリアをソリアとして呼んだからかな?
「そうよ。そういえば、どこで知ったの?」
「どこって何が?」
「私の真名の事よ、私の真名なんて残ってる文献は無いと思うのだけれど。」
「えっ?いや……」
真名は……多分名前の事だろう。
知ったも何もなんか頭に思い付いただけなんだけどな。
「は?……まさかまぐれで私の真名を?」
「そういう事だね、後心読まないでよ。」
「嘘でしょ……」
どうやら僕はまぐれでソリアの真名を当ててしまった様だ。
でもそれだけで──
「それだけ片付けないで!」
「うわっ!?」
「貴方が私の真名を言わなければ私の寿命は無限だったのよ!」
「無限!?それは、その、ごめん。」
「ごめんですまないのよ、これは一生に一度の大技、もう戻れないの。」
多分今日は僕の人生で一番の過ちを犯してしまった日になるんだろうな。
そう思わせるほど今僕は自責の念に駆られている。
「はぁ、まぁいいわ。折角だし自己紹介でもしましょうか。」
そう言ってソリアは大きな息を吐いて心を整えている様だ。
そうして少し時間が経ち、ソリアが話始めた。
「私の名はソリア・ドラテリア、ドラグロス竜王国のドラテリア公爵家の次女よ。」
「ドラグロス?アオギリじゃなくて?」
「昔はドラグロスなの、滅亡して出来たのが今の国よ。」
滅亡した国の貴族か、もしソリアが強いなら長女はどれだけ強いんだろうか?
自分より強いのは二人と言っていたし案外あり得る話だな。
「確かに因子は姉様の方が強いけど戦闘の才能はないから実際に戦ったら私が勝つわ。」
「じゃあ実質一人なんだ、自分より強い竜人は。」
「そうね、あれには流石の私でも勝てないわ。」
相当の強者という事か。
少し興味があるけどもうすでに故人になってるだろうし無理か。
「さて、帰りましょう。そう遠くまでは行ってないだろうし飛べばわかる──」
その時後ろから大きな魔力を感じた。
咄嗟に僕は槍を伸ばしてそれを防ぐ様に構える。
さっきまであんな魔力は感じなかったから相当強い魔物だろう。
そう思って伸ばしたんだけど……攻撃が来ない。
なんでだ?
まさかあの魔力は囮か?でもそんなやり方の魔物なんていたっけ?
ここにいる固有の種の習性なのかな?なら一旦槍を戻して──
「油断のしすぎよ、これくらいどうにかしなさいよ。」
「えっ?あぁ、うん。ごめん。」
なんかソリアが人を一人捕まえていた。
僕が魔物だと思っていたのは一人の少年だったようだ。
なんかどこかで見た事がある顔だな?
「クソッ!なんで動けねんだよ!」
「雑種がこの私に勝てる訳ないでしょ?」
「離せよ!この暴力女!」
その言葉と共に重く鈍い音が辺りに響いた。
ソリアが人を殺す様な目をして少年を殴ってた。
「痛った!?骨折れるだろうが!」
「なんなら全身折るつもりよ。」
「待ってよ、ソリア。」
「何?」
「取り敢えず話を聞こう。」
ここは無断で立ち入るといけない筈。
というかここは危険だ、大陸の魔物なんて一蹴してしまう様な魔物が沢山いる魔境だろう。
保護しないで死なれるのは嫌だしまずは話したい。
ソリアは凄く不満そうな顔をしながら少年を投げ捨てた。
もう少し丁寧に扱って扱ってほしいんだけどな。
「っつ、もう少し丁寧にしろよ……」
「は?」
「まぁまぁ落ち着いて。それで、君は?」
「……グレン。」
俯きながらも少年がそう答えた。
グレンって、あの村にいた男の子か。
確かにこの子ならここに来ても変ではないな。
「なんでここにいるのかな?僕達は一応言われたから来てるんだけど。」
「それは……」
グレン君はこの質問をすると歯切れの悪そうにしていた。
確かに答えにくい質問だけど答えてもらわないと困る。
そう思っていると横から大きな魔力を感じた。
この感じこちらに攻撃するつもりで来てるな。
僕はすぐに槍を構えて襲撃に備える
「何か来るわね。」
「うん、まぁ問題ないよ。」
「?……まさか、こっちに来るな!」
グレンはどうやらその迫ってくる魔物関係でここに来ているようだ。
この反応からして間違いない。
そして会話が可能な種類の魔物の可能性が高いな。
そんな魔物なら気を引き締めないと。
そうして気を引き締めて構えたらその魔物が出て来た。
「……女の子?」
「変身出来る系統の魔物かしら?」
「どうしてっ……」
でも見た感じ攻撃はやめたようだ。
そしてその女の子は口を開けた。
「──パパ?」
KHRBよろしくお願いします。




