槍と変人
「はぁ、疲れた。」
僕はアリーをフォレスチナに送ってから休憩無しで竜王国まで戻ってきた。
魔力量は体感身体強化一回分くらいかな?
まぁ僕は元々魔力回復速度は早めだからそこは平気なんだけど。
フォレスチナで若干監禁されそうな雰囲気だったけど無事帰ってこれた。
時間が遅かったら安全性を考えて一晩泊まったけどやめておいた。
フリージアに何かあったら僕は殺されても文句は言えなかったからね。
連れて行くのが一番良いけどそれだと僕の魔力が持たないのだ。
もしくは僕の胃が限界を迎えるし速度も速く出来ない。
後単純に竜人に本当の悪人はいないと思った。
町中には騎士が巡回してるけど犯罪らしい物は起きていない。
竜の誇りなのかは知らないけど心の底からそう感じる。
人間の扱いは酷いけどフリージアには竜の血は入ってるしね。
フォレスチナへは竜王国との交渉が終わったら迎えに行くつもりだ。
予想だけど迎えにいけるのは遅くても一週間くらいだと思っている。
「そろそろ良いかな、ウインドサーチ。」
魔力が十分に回復してきたのでウインドサーチでフリージアを探し始めた。
普段なら騎士のお世話になる行為だけどこの町はどんな人でも魔法を普通に使ってる。
どうやら昨日と同じ所にいる様だ、これなら行き先を聞いておけばよかった。
僕がフリージアの所に戻るともう一人の人格が偉そうにしていた。
「お帰りなさい、サルにしては早いわね。」
「まぁ……」
相変わらず人間への当たりが強い気がする。
というかこの人格はなんて呼べばいいんだろう?
「何?……私の呼び方なんて好きにしなさいよ。」
「好きにって、というかやっぱり心読めるんだ。」
「前にも言ったでしょ?心を読むなんて出来ないの。」
そんな事言ったってタルトは心が読める。
そんなわけないと思うんだけど、そうじゃなきゃ辻褄が合わない。
「大方魔力の流れを見て判断しているのよ。」
「うーん……」
「あぁ……正確にはこの世界の法則だと読めない、ね。忘れてたわ。」
この世界の法則?
多分魔力を使った行動の事を言っているんだと思うけど。
「この世界の法則全てよ、操魂術だって例外じゃないわ。」
「じゃあなんで君は僕の心を読めてるの?」
「長年の経験よ、まぁ優秀な私だからこそ出来ているんだけど。」
「そう……その言い方からすると心を読む方法もあるの?」
「あるわよ、貴方コールフィアって知ってるでしょ?」
コールフィア?コール様の事かな?
思い当たる人はあの人しかいないけど。
「そうそいつよ、あんな感じの立場の奴らの力はこの世界に属さない、どの力よりも超越した力なの。」
「へぇ、というか自然に心読まないでよ。」
「あらごめんなさい、とにかくそういう力じゃないと出来ないのはクリムゾンが証明したでしょ?」
「知らないけど、またあの人なの?」
あの人どこにでも出てくるから正直怖い。
実在してるのは知ってるけどさ。
「あいつだってやりたくてやってる訳じゃないの、成り行きね。」
「なんか、実際に見た事ある様な言い振りだけど。」
「産まれた時代が同じだもの、知ってるに決まってるでしょ?」
産まれた時代が同じって、つまり──
その答えに辿り着く前に強烈な蹴りが腹に入った。
咄嗟に腹を手で覆ったけど意味が無いのかとても痛い。
「失礼ね、まだ十六よ。」
「ゲホっ、じゃあなんで……」
「私の操魂術で魂の年齢を止めてるのよ、つまり年頃なの。」
「じゃあ実年齢──」
僕がその言葉を発していた途中でまた蹴られた。
もうこの話はやめよう、もう蹴られたくないし。
後心読まないでよ。
「懸命な判断ね、私はもう寝るから大きな音立てないでよ。」
そう言って寝に行ってしまった。
痛みが引いてきたし、あの子の呼び方でも考えるか。
……駄目だ変な呼び方しか出てこない。
昔キョニョ助でやらかしたので反省して少しは勉強はした。
勉強をして自分がどれだけ酷かったかは分かった。
けど良くて無難な名前、そうじゃなければ酷い名前になる。
どうしよう、シェオ?ニョーン? ……蹴られそうだな。
……ソリア。
あ、結構良いかもしれない。
なんか頭に急に浮かんできた言葉だけど良さそうだ。
よし、一応色々考えてからあの子に使ってみよう。
セフィ達が来るまで時間もあるし頑張ろうかな。
セフィ達が竜王国に着き、今は竜王陛下の前にいる。
前回とは違い見慣れない人が一人偉そうに立っていた。
こっちには追加でセフィとルナミスとメイがいるのでこちらも見慣れないんだろうけど。
「Hello everyone!私は青霧竜王国の最も優秀な者、アンゼスでございます!以後お見知り置きを。」
勢いが凄いな、このアンゼスとかいう人。
そう思っているとアンゼスさんはセフィの顔をまじまじと見た。
「いやぁ、画面で見るよりとても美しい!」
「ありがとうございます。」
「月にはの中で一番好きなんですよね、貴女は誰が好きですか?ルナミス嬢。」
「……」
ルナミスは無言で僕を指差した。
多分ルナミスの前世の話かな?
分かっていた事とはいえ気恥ずかしい物だ。
でも、なんでこんな事を知っているんだ?
「そこですか?面白い方ですねぇ。」
「順当でしょ?」
「はぁ……」
なんかお互いの意見が食い違ってる?
その時の僕の感が良かったのかその感は合っていたのだった。
規定数書き上げたので更新です、今日中に十章が書き終わらなければ周年に移行させていただきます。
まぁ後一つ書いてメモなので十分射程圏内ですが。
KHRBよろしくお願いします。




