槍と招待状
「ねぇセフィ。」
「はい。」
「アイルジニアさんってどんな人なの?」
「アイルジニアさんですか……私も一度しかお会いした事がないので上手く説明出来るか分かりませんが、
歴代の中で一番慈愛に満ちた方だそうです。」
慈愛に満ちた、か。
とても優しい人なのだろう。
でも、セフィが一回しか会った事がないってのは不思議だな。
「彼女ほど不治の病に蝕まれてなければと思われる人はいないでしょう。」
「えっ、つまり……」
「私が聖女に任命された次の日に亡くなられたそうです。」
そんな早く……
「でも、最期は笑顔で亡くなられたそうです。」
「そうなんだ……」
彼女にとって満足のいく死に方だったんだろう。
そこは、よかった所なんだろうな。
「それ以降、と言っても二人だけですが聖女にはコール様の健康診断が毎月入る様になりました。」
「そんな事してたの?」
「コール様がいつの間にかしてくれてるんです。何もなければ触れないらしいので安心して生活出来ますね。
たまに、本当にしているのか不安にはなりますけど……」
「へぇ……」
「それでも遺伝的な物だったらしいので解決方法は聖女の座を引かないという選択肢しか無かったんですけどね。」
「それってまさか、固有魔法?」
「はい、生命維持力はどの魔法より高いですから。」
そっか……
「あの、先輩。」
「ん?、どうしたの?」
「隊長の様子見に行っていいですか?少し心配で。」
「あぁ、いいよ。ミラさんとタルトも任せていい?」
「分かりました、では。」
そう言ってルナミスのいる王城へとカトリーナさんは向かっていった。
「はぁ……終わった。」
「気を付けてないからです。自業自得ですよ。」
「いやまぁそうなんだけどよ。」
テリジアさんに目を付けられたフリージアは絶望感が漂っている。
メイはいつも通り容赦がない。
もう少し優しくしてもいいんじゃないかと思う事がある。
「帰ったら礼節の講座、始まるんだろうな……」
「それは、辛いですね……」
「テリジアさんってそんなに厳しいの?」
「厳し過ぎて学園の担当講師外されたんだぜ?」
そんなに厳しいのか。
そういう一面もあるんだな、あの人。
「帰りたくねぇ……」
「早くお兄さんにダーリンとの婚約発表をさせてこっちに住めばいいんじゃない?」
「それだ!」
「でもあれが一度呼び戻さないと限りませんし、第一自分の荷物はどうするんですか?」
「やっぱ無理だよなぁ……」
そんな会話をしているとクロタケさんがやってきた。
何か用事がある様に見える。
「やっと見つけたぞ。」
「クロタケさん、どうしたんですか?」
「うむ、 そこのフリージア殿を我が祖国に招きたくてな。」
「私、ですか?」
「あぁ、これを受け取ってくれ。」
そう言って五通の手紙を渡してきた。
表には1・2の様に順番に番号が振られている。
「クロタケさん、多くないですか?」
「我が国は面倒なしきたりがあってな、これだけ必要なのだ。」
なんか聞くだけで頭が硬そうな国だ。
クロタケさんが外に出てる気持ちがわかる気がする。
「名はアオギリ竜王国、ストアリオ大陸南東に位置する国。
他は砂漠である、見つけやすいだろう。」
「何か、目的でも?」
「うむ、我はぜひ祖国とマルマー帝国及びイレイサ王国と交流をしてほしくてな。」
「となると私が訪れる必要があるのですがまだ協定を結んでない国に行くとなると安全確認をしなければなりません。
なので、スランに行ってきてもらう必要があります。」
「僕?」
「副聖長なら誰でもいいのですけどね。」
正直もう少しイレイサで休みたいんだけど……
カトリーナさんは嫌がりそうだな。
かと言ってミラさん達は実質人質なので外に出れる訳がない。
つまり、僕が行く事が決定した。
「もう少し、イレイサでゆっくりしたかったんだけどね。」
「すいませんね、では二人で行くという事でよろしいでしょうか?」
「うむ。」
「あの……いいかしら。」
決まりそうな流れにアリーが何か気まずそうに声を上げた。
今の話で忘れてる大切な事でもあったかな?
「私、結婚する時の衣装を故郷で作ってもらってたの。だから、一緒に行ってもいいかしら?帰りに少しだけでいいの。」
「まぁいいけど。」
横から行くなら十王国に飛行するの邪魔されないしね。
長めに滞在していたからかもう既に少し懐かしく感じる。
「安全も確認出来てないですし、出来るだけ少人数の方が……」
「我の手紙を見せれば少なくとも最低限の安全は保証される筈だ。三人程度なら平気であろう。」
「ほら、クロタケさんもこう言ってるし。」
「……いいですよ、三人で。」
セフィは大分不満そうだが了承してもらえた。
……後で機嫌を直そう、長引いたら大変だし。
「さて、我は帰るとしよう。」
「もう行くんですね。」
「うむ、妻が待ちくたびれておるからな。では、またいつか会おう!」
そう言ってこの場を去っていった。
竜王国か、楽しみだな。
そう思っているとセフィが、
「そろそろルンちゃんの所に行きましょう、大怪我をしていないか心配ですし。」
「悪魔の反応的に大怪我はしてないと思うけど、行こうか。」
「ですね。」
そう言って僕達は王城に急足で向かった。
ルナミス、平気かな?
「ご主人様、私も──」
「駄目、ですからね?」
「うっ……はい。」
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