槍と優勝
「槍技:監獄!」
「蒼古の舞!」
「面倒。」
僕達の技を涼しい顔をして受け切る悪魔。
ルークさんの武技は僕より速い攻撃なんだけどね。
しかし何故か余裕のある悪魔が大きく後ろに飛んで刀を納刀した。
何か、来る。
「……嫉妬の──」
死ぬ!
僕達は本能でそう感じ取り急いで距離を取ろうとする。
だけど間に合いそうにな──
その瞬間イレイサ城の半分が消え去った。
悪魔の攻撃ではない、別の誰かだ。
まさか他にも悪魔が?
「えっ、えっ、行かないと。」
悪魔が大慌てで城の方へ行った。
あの様子じゃあの攻撃は悪魔ではないのか。
遠くを見るともう二人悪魔が飛んでるのが見えた。
誰か分からないけどすくなくとも四人いたのか。
そう考えると相当危険な状態だったな。
「そうだ、セフィは平気かな?」
自分の事で精一杯だったから気に掛けれなかったけど、平気かな?
そう思って槍で浮くと部屋の中に全員いた。
謎技術を使ってルークさんはもう中にいるみたいだ。
僕は槍に乗って皆のいる部屋に繋がる入り口に向かう。
入り口に着いて槍から降りて急足でセフィ達のいる部屋に向かった。
しかし近付くにつれて少しずつ違和感を感じ始めた。
「何か凄く壊れかけているな……。」
もしかして悪魔がここにいた?
なら誰がセフィ達を……
そう思いながら部屋の前に着くとそこには身体中が傷だらけで壁に寄りかかっているカトリーナさんがいた。
「カトリーナさん!大丈夫!?」
「……」
「少し待ってて、今セフィを呼んでくるから!」
そう言って扉を開けようとするが開かない。
どうやら何か仕掛けられているようだ。
でもこの扉にそんな機能があるとは説明されていないよな?
どうしようかと考えていると急に扉が開いた。
よく分からないけど開けるようになったらしい。
「スランが開けてくれ──カトリーナさん!?」
セフィが急いでカトリーナさんを治療し始める隣で僕は何故か憎悪を含んだ目で睨んでいるシルフィがいた。
その目はいつも嫌っているあいつを見る目と同じだ。
「どうしたの、シルフィ?」
「何でもないよ、じゃあ私帰るね。」
そう言ってもう一度カトリーナさんを睨んだ後、シルフィは帰ってしまった。
どう考えても何かあるだろ……
そしてその間にセフィがカトリーナさんの治療が終わった。
「カトリーナさん、何があったんですか。」
「確か……器を殺すとかなんとか。」
器?
誰だ?この部屋にいる人の中で器……
「私ですか、分かりました。」
「セフィ。」
「はい。」
「器って何?」
「そういえばスランには伝えてませんでしたね。」
そう言ってセフィがこちらに向きを変えた。
そして一息ついて話し始めた。
「実は私、神の力の耐性が高いんです。」
「神の力?」
「その名の通り神様の力です、なので私の体は神が私の体を借りて現世に擬似降臨するのに適しているんです。」
「ふーん……因みに普通の人はどうなるの?」
「爆発しますよ、私でさえ後遺症が残るんですから。」
「後遺症って……危なくないの?」
正直使って欲しくない。
そうなる前に相手を片付けるつもりだけど。
「死にはしませんね、重い場合は五感のどれかが使えなくなったり寝たきりになったりとかでしょうか。一生起きないとか寿命が減ったりとかもありますね。」
「絶対使うなよ。」
「えっ、あっ、はい……」
今、無意識に語気が強い言葉になって出てきた。
「あっ、ごめん。」
「いえ、心配してくれたんですよね。」
暫し気まずい空気が流れた。
僕、今なんで──
「夫婦漫才はやめてください、ご主人様。」
「あっ、ははっ、お見苦しい物を……」
忘れてた、そういえばあの部屋にいたのセフィだけじゃないや。
「仲がよろしいですね。」
「本当、そうよね。」
「私にもやって?ルーくん。」
「うん、後でね。」
二人はともかくルークさんにはとても申し訳ないな。
まぁ僕と同じ様に慣れてたりするのかな?
「さて、マルマーに戻りましょうか。」
「えっ!?でもまだ決着が……」
「ルーくんの負けよ、何回か死にかけてたんだから。」
「スラン君がいなかったら俺は死んでたよ、ありがとう。」
「あぁ、はい。」
なんか、複雑な気持ちだな。
多分あのままやっていたら負けてたかもしれないし……
「それにね、まだ私やらないといけない研究があるの。」
「それで、早く帰るんですね。」
「えぇ、そうよ。」
「上に直談判して期限伸ばしてもらったから急がないとね。」
「ルーくん!それ秘密!」
そこまでしてくれてたのか、満足させられたかな?
「お忙しいのなら無理をしてまでいらっしゃら──」
そこまで言ってセフィの口にテリジアさんは手を当てた。
「いいのよ、伝統なんだから。私の先代でさえ面倒はよく見てくれたのよ?むしろ、私は関わらなさ過ぎなの。」
「アイルジニアさんがですか!?でもあの人は体が……」
「えぇ、どんなに体調が悪くても毎日顔を見にきてくれたのよ?
本当にあの人は凄いわ。」
先々代の聖女がアイルジニアという名前なのか。
聞いた限り体が弱いのかな?
「さて、私達は帰るわね。いい物も見られたし。」
そう言ってフリージアの方を見る。
勿論フリージアは顔を全力で逸らした。
流石にあれじゃ隠し通せなかったか。
「留学から帰ってくるの、楽しみに待ってるわ。」
「あはは……」
「じゃあ、また聖女任命式で会いましょう。」
そう言ってテリジアさん達はここから去っていった。
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