槍と顔見知り
「で、なんなのあの絵。」
「あれですか?あれは……」
「──あっスラン!」
ルナミスの声が聞こえたので振り向くと僕の方に来ていた。
「……あの絵の事でしょ?」
「え?まぁそうだけど。」
でもよく分かったな。
僕何もルナミスには言ってないしあの距離じゃ聞こえない筈。
そう思っているとルナミスは口を重そうに
「あれ、私が書いたの。」
と言った。
「え!?じゃあなんで作者がセフィに──」
「絵が酷かったのよ、セフィのが。」
そう言って頭を抱えながらルナミスは話を続ける。
「スランを書いてる筈なのになんか化け物みたいな絵になっちゃって大変だったのよ?」
「その……何故か上手くいかないんです。普通にならなんとか描けるのですが。」
「じゃあ普通に描けば──」
「ダメに決まってるでしょ!」「そんな事出来るわけないじゃないですか!」
「えぇ?」
二人に物凄い剣幕で言い返された。
別に僕は普通な感じがよかったんだけどなぁ。
「そんな絵では他国に見下されてしまいます!」
「どれだけ格好良くて原型を崩さないかで国の力の入れようがわかるのよ!」
なんとなく言いたい事は分かった。
つまり戦いは似顔絵から始まっているってことか。
「通例通りだと私が描かないといけないのですが……ルンちゃんの方が上手かったので。」
「まぁ私はそのまま描いているつもりだったけどね。」
「ふーん……」
あの絵が、ねぇ。
つまり、
「ルナミスから見たら僕はあんな感じなんだ。」
「えぇそうよ。……はっ!」
「あら、そうだったのですね。」
「えっいや違うって!」
「別にいいんですよ?私は何人いても平気ですから。」
「そう言うのじゃないんだって!」
怒りながら言うルナミスを横目で見ながら僕は辺りを見渡した。
軽く見た感じフリージアとタルト以外で第六聖絡みの人は見当たらない。
勿論近くで待機はしていると思うけど。
そして僕はルナミスとセフィの話を止めた。
いつまで経っても終わらなさそうだしね。
「ルナミス、もう言っちゃったら?」
「……」
「え!?何かあるんですか?」
「まだ秘密、がいい。」
「わかった、じゃあ少しだけ席外すからよろしくね?」
頷いたルナミスを見て僕は歩き出した。
なんかさっきから見てたけどタルトの様子がおかしい。
なんか紳士みたいな人と話してるみたいだけど……
「──お願いしたいのです!」
「言ってるでしょ?結婚なんてしないの。」
関わるのはやめておこう。
うん、絶対に面倒な事になりそうだ。
元々は安易に自分の名前を出したタルトがいけないわけだからな。
「待ちなさいよ。」
「その手を退けてほしいなぁって、思ってるんだけど?」
「許すわけないでしょ?」
ここで無理矢理逃げ出す程僕の心は強くない。
しょうがない、話くらい聞こう。
「レピアン、こいつでいいならその話受けるわ。」
「ほっ、本当ですか!」
「レピ、え?」
「レピアン、ソードベルの外交官よ。」
へぇ、そんな人がいるんだ。
「では、一応証明をしてほしいのです。」
「え、証明?」
一体何を──
その瞬間、僕の脳は考える力が無くなった。
「……これでどう?」
「えぇ、分かりましたとも。では、楽しみにしております。」
「──タルト?」
「レピアンがどうしてもお世継ぎをって煩いからあんたを隠れ蓑にしてもらったわ。」
「いや、それはそれでいいんだけど。」
「ごめん、しばらく私一人で休んでくる。」
「……」
ハァッハァッ……
ダメ、抑えなきゃ。
あの時からあいつを見ると体が疼く。
魔眼もあれから調子が良くないし。
どうなっちゃったの、私は……
少し考える力が戻ってきた気がした。
今、タルトは僕にキスをした。
場所は口だ。
驚いてないわけではないがそれよりもあの顔。
あれはどう見てもおかしかった。
調子が悪いというより、何かに魅了されている気がする。
「……なぁ。」
「うわっ!なんだフリージアか。」
「なんだってなんだよ、まぁいいけどよ。」
後ろにいたフリージアに気付かなかったか。
……もう少ししっかりしないとな。
「で、どうしたの?」
「今第一ブロックの決勝が始まるから、一緒に見ようぜって話だ。」
「え、今から行く──」
その言葉と同時に空中に試合の風景らしき物が見えた。
「いつの間にあんなのが……」
「最近出来たんだとよ。」
「へぇ……」
凄い便利な物が出来たな。
考えれば考える程使い方が湧き出てくる。
使い方を考えないと色々と危なさそうだ。
「ん?あれって、クロタケさん?」
「なんだ、知ってるのか?」
「うん、十王国にいた時に少しだけね。」
カコラ帝国に行って目当ての人は見つかったのかな?
「なんかカイシと結婚してるとか言ってたな。」
「へぇっえぇ!?」
凄い衝撃を受けた。
カイシさんってそんなに強かったっけ?
イメージないなぁ……
「まぁやっぱり勝つよね。」
「予想通りと言えばそうだけどな。」
確かにあの試合の感じを見れば勝つのは容易に予想出来る。
しかも、余裕を感じる。
あの時は腕力勝負だけだったが今回は油断出来ないな。
「あっ、そろそろセフィの所に戻らないと。」
「俺も行くよ、もうこっちには居なくてもいいからな。」
そして僕とフリージアはセフィの方へ向かったのであった。
朝にやるの久し振りかな?
KHRBよろしくお願いします。




