槍と大会準備
僕が渋々椅子に座るとセフィ以外は外に出てしまった。
アリーと色々と話すらしいので僕的にはありがたいが、
「さて、まずはお帰りなさい、スラン。」
「あっ、ただいま。」
最初から怒られるかと思っていたがそうでもなかった。
セフィなら最初から怒られてもおかしくない。
「私的には、もう少し早く帰ってきてほしかったですけど……まぁそこはあまり関係ありません。」
「……怒らないの?」
僕は恐る恐るそう聞いた。
しかし、
「えぇ、怒りませんよ?一年半と言ったのは私ですので、怒れません。」
予想外の返答が帰ってきた。
呪いが解けたおかげか僕に対しての執着が━━
「ですが、」
まだ残っている様だ。
いや、違うかもしれない。
ここはセフィに期待━━
「メイまで連れてかないでください!ご飯が以前のものに戻っちゃったじゃないですか!」
……あぁ、そっち?
言われてみれば確かにその理由も考えられるな。
セフィに料理を出せたのは僕とメイだけだったからその前の料理人に任せるしかないのか。
「おかげでずっと食事の楽しみがなくなりましたよ!」
「そのーごめん。」
「なので、これからメイと同じ日に休みは取らせません。」
相当嫌だったのだろう、そんな事言い始めた。
特に問題なさそうだしいいんだけど。
「別にいいけど後でメイにも言っておいてよ?」
「分かってますよ!」
そう言った後セフィが姿勢を整えた。
そして僕に
「さて、本題に入りましょうか。」
と言ってきた。
まぁ武闘祭の事だろう。
「武闘祭まで今日を含めて九日後です、それまでにスランは準備を終わらせなければいけません。」
「九日か……」
「まぁ今日と明日は休みなので本当は七日しかありませんが。」
「今日は分かるけど……明日?」
明日って何かあったっけ?
僕に何かあったか?
もしくはイレイサ側の休みかな?
「忘れたんですか?明日はスランが指定した休みじゃないですか。」
「……あぁ!それか!」
完全に忘れていた。
一年半も休んでた後ので少し気が引けるが。
「明日は帰りの疲れを取る為の休みだと思ってゆっくりしてくださいね。」
「分かった、じゃあ明後日からはどうするの?」
「そうですね……まずは警備体制でしょうか、ある程度は決まっているので最終確認みたいなものですが。」
ある程度は決まっていてよかった、今から決めるなんて時間的に出来そうにないからな。
一部を除いた全聖団員が警備する分今から決めても間に合わないけどね。
「後は前夜祭と後夜祭の打ち合わせ位です、他は大体決まったので。」
「結構決まってるんだ。」
「一年半ありましたから。」
決まってないわけないか。
後は僕がどれだけ仕上げられるかだな。
「そうそう、前夜祭は明日からなので楽しんできてくださいね。」
「明日!?いなくていいの?」
「スランの出番は最後の方ですから、問題ありません。」
「ならいいけどさ。」
一瞬驚いたが問題無さそうでよかった。
なら、明日はゆっくり休もうかな。
「そういえばスランに新しい副聖長を紹介してませんでしたね。」
「新しい副聖長か、誰なの?」
普通に気になる。
それなりに実力はありそうだし負けない様に頑張らないとな。
「それはですね──ん?誰ですか?」
セフィが名前を言おうととした時にノックの音がした。
ルミナスとかじゃなさそうだし……
「呼ばれた気がしたので来ました!」
「あぁ、丁度いいですね。入って来てください。」
聞き覚えのある声が聞こえて来た。
セフィが丁度いいって言ってたしこの人が副聖長なのだろう。
さて、一体誰なんだろう──
「先程ぶりです!スラン先輩!」
「彼女が新副聖長のカトリーナさんです。」
なんとなく察していたけどやっぱりそうか……
印象に残っていたのですぐにわかった。
「というかスランはカトリーナさんに会ってたんですね。」
「名乗られなかったけどね。」
その瞬間カトリーナさんは膝をついた。
急な事で驚いていると
「先輩に名乗らなかった……ソウル──」
「セイクリッドガード!」
なんか急に魔法合戦が始まった。
カトリーナさんからは不吉な魔法名が聞こえたが……
「あ!何するんですか!」
「魔法で死のうとしないでください!自害より悪質ですからね!」
そう、ソウルまで聞こえたらそれはもう即死魔法なのだ。
ソウルクラッシュ、それは蘇生魔法並みの難度を持つ魔法だ。
蘇生魔法と違う点は努力次第で覚えられる所。
が、覚えている人は全然いない。
なぜなら自分の魔力以下の相手にしか通用しないからだ。
ランク5程度までならギリギリ通用するが普通に他の魔法を使った方が早い。
一度に一体しか対象に取れないのに魔力消費が見合わない。
しかも自分の魔力以下と言ったがそれは魔法を使った時の魔力以下、である。
つまり覚える苦労の割に使えない魔法、ソウルクラッシュって事だ。
いつでも自害出来るのは問題だけど……
「くっ、無念。」
「いつも魔法を防ぐ身になって考えてください。」
どうやら、自害癖があるらしい。
気をつけて接しないとな。
ここで紹介も終わり、アリー達がいる部屋へと向かったのだった。
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