槍と答え
「なっ……」
「馬鹿な!まだ五年程しか経ってないぞ!」
議員達の議論が激しくなった。
今の発言を聞くとメイはそこまで奴隷期間は長くないのだろう。
「落ち着け、皆の者。」
「そうだ、我等には精霊女王様のご加護があるのだ。」
そう長老達が議員達をまとめた。
確かにあの人がいればなんとかなる気がする。
「そうだ、シルフィ。」
そう言いながら僕はシルフィを呼び出す。
《ヤッホースラン!どうしたの?》
「女王様って連れてこれる?」
《今?今はいないよ?》
その言葉で、場が一瞬で静かになった。
そして今度は長老も焦り議会は大混乱になったのだ。
「どどど、どうすれば……」
「せせせ精霊女王様がいない時に来るとは……卑怯な奴らめ!」
《え?!え?!どういう事?!》
「シルフィ、今は──」
僕はシルフィに一通り今の状況を説明した。
そして何故かシルフィも慌て始める。
《どうしよう!ルナちゃんいないとなると保険をかけれない……》
「なんか不都合でもあるのか?」
《大ありだよ!最悪精霊界ごと精霊が消えるんだよ!》
思った以上に重い事態だそうだ。
精霊が消えたら何が起こるかわからないし万が一に備えておこう。
勿論消えない事が一番だが。
こうして議会は直ちに作戦会議を始め、僕達は議会から解放されたのだった。
「ご主人様?」
「何、メイ?」
「普段こんな所で寝てたんですか?」
「そうだね、でも案外寝心地いいよ?」
家に帰ってきた僕達はとりあえずメイを僕の部屋に招待した。
が、予想通りの反応をされる。
「……まぁ納得しましょう、それよりもご主人様のここでの生活を聞きたいです!」
「ここでの生活?うーん……」
僕は唯一出せるあれを見せる。
「これくらいかな?」
「……これなんですか?」
「あぁこれは──」
「へぇ……これがそうなんですね。」
「結構大変でさ、ようやく最近完成したんだよ。」
「ありがとうございます。」
「全然いいよ、見られて困る物ではないし。」
セフィにさえ見せなければいいんだ。
他の人達も言わない様に言ってるしバレはしない。
「他に何かありませんか?」
「他?他はアリーとの思い──」
「結構です。」
「……思い出──」
「結構です。」
「……」
頑なにアリーとの思い出話を聞かないメイ。
多分僕と一緒にいられなかった時期にされたのが気に食わないのだろう。
そんな事思っているとメイが僕を押し倒す。
「ぅお、どうした?」
「ご主人様、一回、やってみません?」
「やらない。」
「……ケチ。」
これはもうアリーが散々やってきた。
なので僕は慣れてこれに関しては何も感じなくなった。
「……ダーリン?」
いつの間にか入り口の方に立っていたアリーが話しかけてくる。
これは若干怒ってるパターンだ。
「アリー?」
「何、してるの?」
「何って、押し倒されてるんだけど。」
そう言ったと同時に矢が放たれメイは避けて壁に矢が突き刺さる。
おぉ……怖い、普通に後ろから刺されてもおかしくはない。
「浮気、許しませんからね?」
「逆に貴女一人でご主人様を支えられると思ってるんですか?」
メイが浮気という言葉に対して反応した。
その声を聞きアリーはメイを睨む。
出会って初日なのに既にとても仲が悪い。
もう少し仲良くしてほしい物だ。
「……は?」
「ご主人様は貴女一人で支えられるほど小さな男ではないのです。」
「私ならダーリン一人くらい支えられます。」
「ご主人様の周りには魅力のある女性
が大勢いるんですよ、知ってると思いますが。」
「それは……まぁ……」
「どうせこれくらいで弓を引く貴女は
イレイサの聖女にも同じ事を何度もしてるのでしょう。」
その一言でアリーが図星の様な動きをする。
……図星なんだ、でもよく矢をそこまで打てるよな。
あそこまで遠いと当たらない気がするが。
「貴女がどれだけここに縛ろうとして
もご主人様は最終的にはここを出ていきます。」
「え……でもっ!」
「それこそ、シルフィードを捨てても。」
「……」
アリーはこっちを見てきた。
不安なんだろう、流石に僕でもわかる。
だが、これは多分僕はする。
何故なら僕は今の仕事を続けたいし、皆と一緒に暮らしたい。
アリーがついてこないのなら、そうする。
そういう意味を込めて頷いた。
「あっ……」
「貴女は愛せるという事にありがたみを感じてませんね?」
「……?」
「貴女が愛せるのは愛する人が貴女の前からいなくなる間。
いくら心の中で愛せるからと言ってももう直接愛する事は出来ません。」
「……でもっ!」
「だから貴女は愛せる様に、愛される様に動かないといけません。」
ここまで言ったらいいですか?と行動で僕に合図を出すメイ。
……とりあえず僕の事をよく理解出来る様になったメイは置いておこう。
今はアリーに話をするべきだ。
「アリー。」
「っ!」
少し怯えていた。
振られるのが怖いのだろう。
「一緒にイレイサに来てくれないか?」
「……え?」
「僕はここにはいられない、だけどアリーの事を見捨てる事は
あまりしたくないんだ、だから──」
その言葉を言う前にアリーに僕の唇に人差し指を当てて発言を止められた。」
「もうっ、言ってくれたらいいよって言ったのに。」
「それじゃあ……」
「行くよ、イレイサに。
お父様も許してくれる。」
そう言いながら満面の笑みを浮かべるアリー。
僕はこれ以降、アリーの笑顔が好きになるのだが、それはまた別の話である。
あけましてということで投稿しました。
KHRBよろしくお願いします。




