槍とエルフ
まだ体が動かしにくい。
麻痺毒は一日経ってだいぶ良くなった。
が、それでも槍がなければ動けない。
今はフォレスチナ付近にいるのでもう少し我慢しよう。
《久しぶりだねスラ──わっ!》
「……どうしたのシルフィ?」
《何してるの……?》
「何って、麻痺毒で動けないから槍で動いてるだけだけど。」
《そうゆう事なら早く呼び出してよ!
距離にもよるけどザラシらへんまでなら私解毒薬持ってけるからさ!》
……呼べばよかったな。
まぁ今頃嘆いたって何も変わらない。
あの状態じゃ呼べるかも怪しいけど……
《……ねぇ、スラン。》
「ん?」
《私が連れていってもいいよ?》
「誰を?」
《スランを。》
「どこに?」
《アリーちゃんがいる所まで。》
「……お願い。」
正直その方が楽だ。
体を動かすのは勿論魔力を使ってるのでさえ辛い。
単純に集中力がなくなりそうだ。
後まだ一睡もしてないので寝たい。
あの状態で宿を取れるほど僕は器用じゃなかった。
僕は槍をしまって木に寄りかかる。
《それでは、ジャンプ!》
その瞬間予想を超える風圧が僕にかかった。
流石大精霊と言われてるだけある。
僕には多分出来ないような魔法の制度でどんどん空に舞い上がっていく。
「……流石。」
《でしょでしょ!》
「でもね、着地はどうするのか気になるな。」
《あ……》
「あ、って何!ねぇあ、って言われたら気になるだろ!」
《頑張って!》
頑張ってじゃないよまったく……
さて、着地はどうしようか。
なんか逆に冷静に考えてられる。
……ん?
あれ、下に人がいるな。
いや、この場合はエルフか。
どうしよう、ぶつかったら大怪我になりかねない。
槍はしまってあるしシルフィもあてにならないだろう。
後は僕の魔法でなんとか出来るかどうかだけど……
「まぁ、やってみればいいか。」
僕は全力で魔法を使って体を少しずらした。
そして、一応風のクッションを作り安全も確保する。
そしてそのまま僕は地面に落ちた。
《……大丈夫?》
「そうやって心配するなら魔法をしっかり使ってよ。」
《はーい……》
「あの……」
その声に振り返ると僕は驚いた。
何故なら僕とそっくりな女性が話しかけてきたからだ。
それは相手も同じ様でシルフィと僕の方を交互に見ている。
髪色と目の色はまったく一緒で背も僕と同じだろう。
違う所は髪型と体型だろうか。
ポニーテールで体型は女性らしい体だ。
まるで自分が女だったらこんな感じなのだろうと感じさせるエルフだった。
……眠い。
せめて挨拶だけ──
「……あれ、寝てる?」
《多分寝てなかったんだろうね。》
「?、何かあったんですか?」
《内緒、それよりもアリーちゃん。》
「はい。」
《お家まで連れていってよ、私報告しなきゃいけないし。》
「……どうして私の家に飛ばさなかったんですか?」
《アリーちゃんの所に行くって聞いたらいいって言われたから……》
「はぁ……まぁいいです、でも早く帰ってきてくださいね?」
《勿論!起きる頃には帰ってくるよ!》
うぅ……
《おーい、起きてー。》
「……しるふぃ?」
僕は重いまぶたを開けた。
すると目の前に知らない女性が立っている。
「誰?」
《見てわかるでしょ!》
「……全然。」
《えぇ!?》
正直こんな人見た事がない。
そう思っていると何か決心したのか魔力を込める目の前の女性。
《これでどう?》
「……シルフィ?」
《そう!》
と言いながら先程までの姿に戻る。
言われてみれば確かにシルフィだ。
最近はあんまり見なかったが最初の時とかは確かにあんな感じだった。
《そもそも魔力で判別できるでしょ?》
「寝起きだからそんな事は出来ない。」
そう言いながら体を伸ばす。
そういえばどれくらい寝てたんだろう?
「シルフィ、」
《何?》
「どれくらい寝てた?」
《えぇっと……ざっと十時間かな?》
そんなに……
朝方に寝たから多分今は夕方だろう。
「で、ここって誰の部屋なの?」
見た感じ女性の部屋だろう。
予想は出来るけど……一応ね。
《アリーちゃんの部屋だよ。》
そうだろう、まぁ少し疑念も残るけどね。
普通に客室とかないのかな?
これだけ広いとありそうなものだけど。
「挨拶しに行った方がいいかな?」
《大丈夫、後で来るし。》
「まぁそうゆう事ならいいんだけど。」
《来るまでフォレスチナの事を教えてあげようか?》
「……お願い。」
皆!元気!皆のアイドルコールちゃんだよ!
今日はフォレスチナの事を教えるよ!
フォレスチナ共和国は精霊林に囲われた五つのエルフの部族が集まった国だよ!
その五つはオレンジ、アップル、パーシミン、マロン、グレープなんだ!
議会は真ん中に定められた共和地域で話されるんだよ!
議員数は各部族族長含めて二十人!
計百人でフォレスチナの事を話しているんだ!
昔は仲が悪かったけど今では仲良しなんだよ!
後は……まぁ今はこれくらいでいいや!
それじゃ皆!まったね〜!
「へぇ。」
《そうなの!……もうそろそろ帰ってくるはずなんだけどね。》
「どこかに行ってるの?」
《うん、アリーちゃん学園に行ってるんだ! 》
学園か……珍しい。
そう思っていると扉からノック音が聞こえた。
その扉の先には
「あ、起きられたんですね。」
今朝あった女性のエルフだった。
7章開始!
KHRBよろしくお願いします。




