槍と旅
こっから各ヒロインの章が出てきます。
まずはこの人から。
「…さぁ?」
「内乱に巻き込まれて死んだと思っていたが
まさか侍女の真似事をやっていたとはな。」
意味がわからない。
奴隷として売られていたメイが王女様。
内乱が起こっていたなら奴隷として売られてもわかる。
しかしあれは元王族の扱いではない。
まだ買われていない状態で王族をあんな姿にする意味がわからない。
王族だから勿論顔はいい、それを餌にすればもっと売れた筈だ。
それを捨ててまで火傷やアザなどをつける意味がわからない。
例え売るとしてもそれくらいは誰でもわかる筈だ。
「………」
「今すぐその首を渡せ。」
「なっそれは──」
「一応ここはドワーフの国、ここに敵国の王族がいたとなっては
殺さなければならない。」
……相手の言い分はなんとなくわかる。
だからと言って簡単に割り切れるものではない。
先に国に帰しても何も変わらない、ここに来てしまった事が原因だし。
何か、いい方法は……
「…私はメイ。」
「だからそれがなんだと──」
「あんな所に戻る気もないし、関わりたくもない。」
「……王族の地位を失ってもか?」
「あの時の生活より、今の方が楽しいから。」
メイはそう淡々と言葉を続けた。
ただ、彼女が王族だとゆう事は変わりないし、
何より──
「メイ……お前長文話せたんだな。」
「…そこ?」
あそこまで喋るメイは初めて見てたのでつい話してしまった。
だがなんとなく察してしまう。
学園の時の入学試験、どうりで出来たわけだ。
王女様が勉強させられてない事は絶対にない。
ワニ語がわかったのも外交上覚えたんだろう。
て事は他の言語も覚えているはずだ。
この年で色々な言語を話せるのはすごい。
「……まあいい、だがあまりここに滞在することは許さん。いいな?」
「わかりました、では私達はこれで帰国しますけど。」
「かまわん、今はただの顔合わせだろう?」
「……では、失礼します。」
セフィがそう言って会見は終わった。
僕達は急遽帰国が決まったので帰る準備をする。
《さぁ!スラン君行こうか!》
「?、どうしたのシルフィ。」
《だってこれからスラン君とフォレスチナに行くんだよ?》
あー……それか。
確かに今行かないと一生こっちには来ない可能性があるな。
うん、行くかフォレスチナに。
「セフィ、しばらく休暇取ってもいい?」
「え!急にはちょっと……」
「フォレスチナにいる子に会いに行ってくるだけだから。」
「ですよね……じゃあ私も行きます。」
「え?」
いや、セフィが行く必要なんてない筈だ。
危ないからイレイサで待っていてほしい。
「ほら、呪いが発動したら帰ってくるまでに死んじゃうかもしれないので。」
「でも治ってるんでしょ、呪い。」
「うっ……」
セフィの呪いは解けている。
呪いは相当魔力を使う性質なのだがこの前その諸悪の根源を追い詰めた。
そこまで追い詰めたならもう呪いを維持している魔力は残ってない筈だ。
薬を媒介にして呪いをかけてるなら尚更だ。
あれは術者の魔力が少なくなればすぐなくなるので
もうかかってない事は気付いてる。
「……一年半です。」
「え?」
「それまでに帰ってくる事が長期休暇の条件です。」
「……はい、わかりました。」
そう言ってしばらくの間セフィとはお別れだ。
セフィ達が乗る船を見送りながら僕は一息つく。
「…で、獣王国はどうやって抜けるの?」
「そうだな……まずは欲望の町を抜けてってメイ⁉︎」
何故か横にいたメイに驚いてしまった。
確かにあの時船に乗った気がしたんだけどな……
「…最後にお父様とお母様の顔だけ見たかったから。」
「はぁ……まぁいいや、しばらくは二人旅って事か。」
「…ん。」
こうなったらしょうがない、連れてくしかないしね。
僕も僕で一人旅は辛いと思ってたんだ。
《ちょっと!私だっているんだよ!》
「シルフィはずっとこっちにはいないだろ?」
《まぁそりゃアリーちゃんの魔法練習に
付き合わなきゃいけないから無理だけど……》
「だろ、だから二人旅でいいじゃん。」
そんな事を話しながら僕達はアイン王国から出る道を歩いていった。
「… 欲望の町ってどんな所か知ってる?」
「いや、全然。」
「…なら教えよっか?」
「ならお願い。」
そう言うとメイは淡々と説明し始めた。
「欲望の町は言わば無法地帯、
弱肉強食、下克上が当たり前。
入るなら死を覚悟しろとも言われてる。
主に鼠の獣人がここに住んでいて
日々強盗や殺人、強姦など様々な事をしてるの。」
「へっへぇ……」
結構やばい所だった、欲望の町。
若干矛盾がありそうな所もあったけど気にしなければ問題はない。
「因みに弱肉強食と下克上が矛盾してるのにちなんで
反転の町なんて呼ばれてたりもする。」
反転か……
「なぁ、メイ。」
「何?」
「なんか喋り方が変わったな。」
「…!それは……」
「無理に戻さなくてもいいぞ、沢山喋ってくれた方が僕も安心するからね。」
「……」
「な、ナルム。」
と、わざと本名で呼びながら頭を撫でてみる。
するとメイは瞬く間に顔を赤くして離れた。
「な、な、何を……」
「へぇ……いつもは求めてくるのに
今回はそんな風に避けるんだ。」
「だって……名前呼ばれながらはちょっと……」
と言いながら俯くメイ。
名前か、変えた方がいいかな?
「…もう行く。」
そう言いながら先にどんどん歩いてしまうメイ。
……後でいっか。
そう思いながら僕はメイの後を追いかけるのだった。
ドリームタウン……ドリームランド……鼠……鼠ランド……ネズミーランド…………………
……権力に殺されたね、あの子。
あそこは権利に厳しいので有名だもの、しょうがないわ。
あ、感想と評価とかブックマークとかよろしくね。
え、そこいつものでよくない?
……あれ言うの恥ずかしいのよ。




