槍と昔話
これだと
二人は一応人質なので形式的に拘束させてもらっている。
明日にはソードベル王国の使者が来て二人を解放する予定だ。
「……それ、外さないんですか?」
「外す訳にはいかないの。」
堅牢は拘束した後もずっと鎧を脱がなかった。
暑いし重い筈なのに……
「取り敢えず、朝食持ってきますから。」
そう言って僕は朝食を取りに行った。
最初は口に合うか心配だったけど今となっては平気だ。
「はい、今日もサンドウィッチです。」
「……スラン君、他のはないの?」
「ありますけど出せないんです。」
これは二人をここに置く為の帝国からの条件だった。
その中に質素な物を出す事が入っていたのだ。
僕も無視は出来ないので守っている。
二人とは基本的にソードベルの話をしていた。
単純に今国がどうなってるか気になってたし
何よりも二人の関係性が聞ける。
憧れだった二人の話を聞けるなんて普通はないのでとても興味深かった。
勿論堅牢からのサインはもらってる。
そういえばと思い父さんと母さんの名前を言ったらとても驚かれた。
なんでも仕事中は家庭の事は一切話さないらしい。
当然だけど……仕事中にイチャイチャするのはどうかと思う。
なんだかんだ言ってこの二年間で好きな騎士のサインが全部揃ってしまった。
他に有名な騎士はいない。
この五人と比べると劣ってしまうからだ。
「あ、そうだ。」
「どうかしました?」
「どうせなら教えてあげるよ、
スラン君のお父さんとお母さんの昔話。」
えっ……えぇ!
聞けるの?
あの謎だらけの両親の話を⁉︎
「……いいんですか?」
「勿論、ただ僕が見た物以外もあるからそこだけは注意してね。」
「オラッ!」
「くっ……」
その二人の戦いを見た者は皆口を揃えてこう言った。
「あれは人間の動きじゃない。」、と。
最終的には剣帝が勝つもののそれに数十分と付き合える魔帝もなかなかだ。
「今日もまた俺の勝ちだな!」
「うーん……今日こそはいけると思ったのに。」
「俺は負けないさ、じゃなきゃお前を守れないからな。」
「貴方……」
「リース……」
ご覧の通り、二人は結婚していてる。
男の方は剣帝、名をロットと言う。
赤黒い髪に青い目を持った男だ。
女の方は魔帝、マーリスと言う。
リースとは名前の下部分を結婚相手に呼ばせる名前だ。
まを取り少しいじったのがこの名前。
青黒い髪に赤い目をしている女性だ。
彼らは最初から仲が良かったわけではない。
むしろ犬猿の仲とも言える仲だった。
二人の出会いは単純明快、騎士団だ。
二人は同期で特に優秀だった。
そのせいだろうか、二人はライバルと認識し始める事になる。
例えば
「ここの荷物を二人で全て運ぶ様に!」
「なんでこいつなんかと……」
「なんでこんな男と……」
「返事はどうした!」
「「はいっ!」」
その言葉を皮切りに当時の上官は立ち去る。
扉を閉めたと同時に、二人の口喧嘩が始まった。
「貴方が外に出たからバレたじゃない!」
「はぁ!元はと言えばお前が無断で外にいた事がいけないだろ!」
「私だけだったらバレなかったの!」
二人は少しの口喧嘩の後片付けを始めた。
この間に上官が見にきたらまた怒られるからだ。
「……おい。」
「何かしら?」
「なんでお前、軽いのしか持ってかないんだよ。」
「私、か弱い乙女よ?」
「ゴリラの間違いだろ。」
「は?」
「怖っ、俺が重いの持ってってやるからあっちは頼んだ。」
と言ってロットは足早にその場を立ち去った。
「……死ねばいいのに。」
そう呟きながら任された所に行く。
するとそこは──
「アイツ……これの事知ったわね。」
そこには虫が湧いてたり、異臭を放っている物ばかりだった。
見るまでもなく人にやらせる部屋ではない。
「……まぁ私がやったほうがいいのはわかるけど。」
と言いながら虫と匂いをどうにかする為の風魔法を使った。
虫は死骸となり外に出て、異臭はどこかに消える。
異臭の元もこの時に取り除く。
「本当にアイツ、私に役割ふるのが上手いわね。」
「……ムカつく。」
二人はお互いを認め合ってはいたのだ。
が、二人は謎が多かった。
結婚などいつしたのかわからないくらいいつも通りだったのだ。
それ程二人はいつの間にか関わり方が変わっていた。
「……これくらいかな、他にもあるけど。」
「他にも?」
「……僕達が稽古をつけてもらっていた話、聞きたい?」
「あ……いいです。」
母さんは容赦ないから僕でもあんまり思い出したくない。
僕にやってたのだって優しめだったと言ってた。
本当に優しめかは置いといて二人には厳しかったと思う。
「じゃあしばらく僕は上にいますから何かあったら呼んでください。」
「わかったよ、また後でね。」
そう言って二人の元から離れた。
僕は地下の鍵をしてある本と紙を用意する。
「次は……これだな。」
そして僕はこの魔法の最終理論を基に作り始めた。
その魔法は──
夕方、セフィ達が帰ってきた。
メイは寮で本国からの書類の処理を頼んでいたのでまだ上にいる。
「ただいま帰りました。」
「おかえり、どうだった?」
「騎士達の治療はすぐに終わりました、ホーリーサークルって便利なんですよね。」
確かあの魔法は浄化と回復をするのに近くによるだけでいいので便利らしい。
でもすぐにって事はこんなに時間はかからないはずだ。
「じゃあ今まで何を?」
「少し早めにきてたソードベル王国の使者と話していましたね。」
成る程……
もうきてたのか。
「ちなみにこの後二人の身柄を渡すのに来ますので
準備をして置いてくださいね?」
……もう少し早く帰ってきて教えて欲しいよ。
いいな
KHRBよろしくお願いします。




