槍と甘さ
甘い≠砂糖多めの展開
ですのでお気をつけて。
……セフィの所へ戻ろう。
そう思って歩き出した。
ほんの少し歩くとある一人が僕の前に立つ。
「……どいてくれない?」
「……」
勇者の一人、絹川が僕を睨みつけて動かない。
避けて行こうとするがそれに合わせて動くので困る。
「……どうして見捨てたんですか。」
「は?」
「だからどうして三人を見捨てたのかをきいてるんだ‼︎」
えぇ……
なんだよ、犠牲を三人に抑えたからいいじゃん。
「貴方ならあの三人も助けられただろ‼︎」
「無理、あそこであの三人を助けたら僕が死ぬし。」
死んでまで助けるような義理はない。
セフィなら仕事だしやるけど。
「……結局一番大事なのは自分の命なんですね。」
「勿論、僕の仕事はあくまでも聖女様の護衛だよ?
勇者達の命を守るのは騎士達の仕事、そこまで積極的にやる必要はないね。」
「いいですよね、後ろで安全に見てるだけなんですから。」
そう言われた時、僕は気が付いてたら手が出ていた。
気が付いたら槍が絹川の首に巻きついて少し締めている。
「甘いよ。」
「……」
「本当に甘い考えだよ。」
勇者達に向きなおって言う。
「君達、勿論ここに出てくる魔物の特徴は調べたよね?」
そう言うが勇者達は俯いてしまった。
はぁ……
「君達、魔物を狩る事を舐めてない?」
「……そんな事は」
「ならなんで調べなかったの?」
「……」
「まずそれがいけないんだよ。
騎士達がこのダンジョンをクリアしているから魔物の事を聞くとか、
聞いたらその魔物の特徴について調べるとか、やれる事があっただろ?
いくら一人が魔物の能力を解析出来るとはいえ情報の伝達は遅くなって当然だ。
別に誰も知らない魔物を倒せって言ってるわけではないんだよ?
調べないから死んだ、ただそれだけの事。」
そう言った後騎士達にも言う。
「貴方達がダンジョンをクリアした人達かは知りません。
が、それでも勇者達に教えれる事はあった筈だ。
魔物の情報を細かく伝えるだけで勇者達の死の確率は相当下がるよ?」
「「「……」」」
「勇者、確かに才能はあると思うよ。
ただね、覚悟が足らない。」
絹川を槍から離す。
彼は少し咳き込みはしたがすぐに息を整えた。
「僕達が命を狩るなら、
君達も狩られる覚悟が必要だ。
もし狩られる覚悟のないやつがいたら帰れ。」
そう言っている間に後ろからハイコボルトが来た。
……丁度いい。
「例えばあのハイコボルト、
普段はゆっくり歩いている。
しかし今みたいに背を向けてたり獲物だと認識されたら」
ハイコボルトが目で追いかけられない速さで走ってくる。
そして嚙みつこうとしたが事前に用意した魔法であっけなく倒れた。
一応トドメをさしながら
「こうやって物凄い速さで追ってくる。
対策としては魔法での地形変化か攻撃魔法での撃退
ハイコボルトは疲れやすいから数秒しかあの速さが保てないので数秒まつとか、
知っているだけである程度倒し方のシュミレーションが出来る。」
そのままにすると消えてもったいないので一応解体する。
「君達がどんな環境で育ったかは知らない。
けどこのままこれを続けるならその甘い考えは捨てろ。
あいつらの様に死なない為にもな。」
そう言って解体作業に集中した。
解体し終わったのと同時で一時休憩と聞こえたのでセフィの方に戻る。
「……お疲れ様です。」
「すいません、助けられなくて。」
「いえ、いいんです。スランの言う事も分かりますし。」
そう言って自分の手を見る。
「私が蘇生を出来たらいいのですけれどね。」
僕は何と声をかけていいのか分からなかった。
セフィは優しい、だからこそ自分の実力が足りないと感じたんだろう。
本来蘇生は九十九人いた聖女の中で三人しか使えなかった超高難易度の魔法だ。
確率だと三%の確率で使える様になる。
ただ本人の努力が必須なので確率なんてあてにならない。
前に一度蘇生の魔術式を見たがあれは魔法の全てを知らないと出来ないと思う。
通常魔法式は長くて二十行らへんなのだが蘇生は二百行だった筈。
あれは使えても覚えられる自信がない。
詠唱込みだと多少楽にはなるだろうけど多分全部合わせて発動まで一時間はいる。
勇者召喚の時の魔法式は見てないが セフィの話によると一つのマークだけだったらしい。
……あれか、確かにあれならコンパクトに出来る。
ただ二百か……相当時間がある時じゃないと終わらないな。
その後僕達は更に深層へと潜っていった。
先程より雰囲気は重いが緊張感を持って前に進んでいる。
因みに非戦闘職と呼ばれる職業の人達はダンジョンから出た。
最深層ではゴブリンとオーク、コボルトの王が出てきた。
仲間がいないので格段に弱かったと思う。
仲間がいると無制限にランクが上がっていく王系統は単体だとそんなに驚異ではない。
今の勇者達には丁度いい相手だろう。
「さて、今から転移石を使う‼︎
皆の者、集まれ‼︎」
そう言ったその時
「それは、困りますねぇ……」
聞きなれない声が聞こえた。
声のする方向を見るとそこには
「貴方達を殺す為に、来たのですから。」
怪しく光る椅子に座った細身の男がいた。
KHRBよろしくお願いします。
だっ誰なんだアイツはー(棒)




