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Summer Snow  作者: 神崎 玻瑠音
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5.白濁

ジュリくん。

口の中。

ベロに開いてた、穴2つ。


舌出して、鏡を見ても、もう分からない。

頬や、額にあった擦り傷も。


シャワーの前に、リビングであちこちについてた血を、拭いたつもりだったけど、鎖骨のくぼみに、顎の先に、乾いた血がちょっとついてるのを見つけた。


髪、あちこち血で固まってる。


「…」


背中が、ザワザワしてる。

腰が、なんかゾワッて、ゾクってしてて。


心臓が、ドドドドッて。


耳も、聞こえ過ぎてて。

それなのに、聞いてる音が、聞こえてるほど近くじゃない。


舌が、…震えてて、止まらない。

鼻の奥に残ってる、匂いとか。

喉の奥に残ってる、味とか…。


指先に残ったままの感触とか。


身体の外側も内側もザワつきっぱなしで、薄く鳥肌が立ったままな感じ。


何もかもが、落ち着かなくて。

そういうのから、かきむしりたいくらい抜け出したくて、頭からシャワー浴びた。


髪の毛、あちこち何かがへばりついてて、固まってて、髪をすく指が、毛束に絡まる。


頭からも、身体伝って流れるお湯からも、血の匂いがする。


アイボリーの床、排水口に流れてくお湯も、血の色が混ざってる。


シャワーを熱くしても、強くしても、皮膚の下が粟立ってて、止まらない。


シャンプーも、ボディーソープも、匂いの記憶の方が強くて、かき消される。


ザワザワ、ゾワゾワしてる感覚から、逃げ出したい。


バスタオルで身体拭いても。

パジャマ代わりのパーカー着ても。


ザワザワ、ゾワゾワ。

ザワザワ、ゾワゾワ。


落ち着かなくて、落ち着かなくて、頭からバスタオルかぶったまま、リビングで小さな円を描いて、グルグル、グルグル歩いてた。


いつもより、だいぶ、速歩きで。

いつもより、足音立てて。


「ジュリ?」


急な声に、呼吸がハネた。


「っ…。ぁっ」


声の方向に向くと、僕と同じように、シャワー浴びた後らしいルカ。


目が合っても、何故か上擦った変な音が、口から漏れただけだった。


何でか、分かんないけど、落ち着かないのが止まらなくて、グルグル、グルグル、リビングのあちこちで歩き回らずに居られなかった。


ペタペタ、ペタペタ、フローリング鳴らして。

グルグル、グルグル。


ペタペタ、ペタペタ。

グルグル、グルグル。


ペタペタ、ペタペタ

グルグル、グルグル。


ペタペタ、グルグル。

ペタペタ、グルグル。


グルグル、ペタペタ。


「…何やってんの?」


ルカの声に、身体が勝手に動きを止めた。


「ひゃっ…」


また、びっくりしたせいで、音が詰まる。


反射的に止まった僕に、ついてこれなかったバスタオルが、物理の法則通り、頭からずれ落ちる。


バスタオルがなくなった視界には、ルカが居た。


「何やってんのさ」


改めて、きくルカ。


「…」


何?って聞かれても。

分からないし。


止まってるの、我慢出来なくなって、何かが、いたたまれなくなって、ルカから離れた。


また、頭から、バスタオル被って、そこで、グルグル、ペタペタ。


グルグル、ペタペタ。

ペタペタ、グルグル。


ルカが、大きく溜息をついて、ソファーに座った音がする。


ペタペタ、グルグル。

グルグル、ペタペタ。


ペタペタ、ペタペタ。

ペタペタ、ペタペタ。


グルグル、グルグル、グルグル。


「…きかないの?」


ルカの呟きに、今度は自分で足を止めた。


「え…?」


バスタオルを肩に移して、ルカを振り返った。

僕を見てる、ルカと目が合った。


質問されてることが、すぐには分からなかった。


「きかないの?」


いつもとは違う、観察するようなルカの目。


「…きかないの?…って?」


ルカの質問の意図がわからなくて、オウム返しみたいになった。


「連れて帰って来た子のこと」


その言葉に、鮮烈に黒髪に縁取られた女の子の顔の映像が、頭の中に差し込まれた。













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