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Summer Snow  作者: 神崎 玻瑠音
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34.虹鱗

第三者視点。短め。

ざわつくのは、胸の中なのか、肌の上なのか。

ジュリの後ろ姿が、ルカの目を閉じた目蓋の裏に見える。


何故か。

ヒドく、ヒドく存在を感じる隔たり。


見えるジュリの後ろ姿は、無音の空間に包まれている。


普段、ルカの中でサブリミナルのように不意に浮かぶジュリとは違うジュリ。


いつものジュリは、くしゃっとした屈託ない笑顔や、邪気のない大きな瞳で、キラキラした笑い声が聞こえるのに。


見えないキューブの中のジュリの後ろ姿は、完全に無音で、目の前に見えるのに遠く感じる。


ルカは静に目を開けて、細く長い息を吐き出した。

真っ白な天井を見つめ、ルカは、再び目を閉じる。


目蓋の裏、再び浮かび上がるジュリ。

ルカの頬が強張る。

現れたのは、またジュリの後ろ姿。


ルカはギュッと目蓋を強く閉じた。

強く閉じたことで目蓋の裏、広がる不透明な虹がジュリの後ろ姿を隠し切るまで。


目蓋の裏、ジュリの姿を塗り潰した不透明な虹の鱗が消え始める前に、ルカは目を開けた。


ルカの視界に見える虹の鱗の残像は透明になり、じんわりと消えていく。


視界が真っ白な天井だけになってから、ルカはそこに、ジュリの面影を創り出そうとしている自分に気付いた。


「・・・」


自分の脳がジュリの面影を思い出すことに躍起になっていることに、ルカは言葉に出来ない焦燥にも似た不安を覚えるしかなかった。


数百年。

数百年、こんなことは一瞬たりとなかったのに。


「っ・・・」


ルカの顔が、わずかに歪む。


そしてルカは、再び、ギュッと目蓋を強く閉ざし、目蓋の裏に浮かぶ映像よりも先に不透明な虹の鱗で視界を塗り潰しながら、微かに苛立った吐息をこぼした。



とっても、お待たせしてしまいました。


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