30.消炭
R15。ルカくん視点。
時間軸グルグル回転中。
淡々と壮絶で、薄く性的。そして粛々とグロくて重いです。
ジュリの瞳が、陰り切って。
ボロ人形のように、ジュリの寝台に捨て置くようにされた、霧深い早朝。
『…じゅ、…ジュリ』
母さんがジュリを名前で呼んだのを、初めて聞いた。
何処を見るでもなく、ただぼんやり開いてるだけのジュリの目。
たどたどしい言葉のかわりに、表情豊かでキラキラしてた、ジュリの大きな瞳は、曇ったガラス玉になってた。
『ジュリっ、ジュリ』
聞いたこともない、悲鳴のような母さんの声が響いてた。
痩けた頬。パサついた髪。
色を失くした頬に唇。
母さんは、その指で手で、何度も何度もジュリに触れて。
何度もジュリの名を紡いだ。
オレはただ、そんな母さんとジュリを、ぼんやり見つめていた。
なんとなく。
ジュリは家に帰って来れたんだと、思った。
もう、あの教会に連れて行かれることはないって。
でも、その次の瞬間。
母さんは、連れて行かれた。
母さんの音にならない泣き声。気持ちの悪い男たちの声。
嫌なニオイと香油のニオイ。
そして母さんの血のニオイ。
そんな空気が充満していた、何日目かの夜。
母さんはこと切れた。
ジュリとよく似た顔だけは、やけに綺麗だった。
鼻をつんざくようなニオイの中で。
…間違ってたって、最悪な気づき方をしたんだ。
母さんは、ジュリのこと、ちゃんと愛してたって。
乱れ千切れた衣服から見えた、無数の擦り切れ破れた皮膚。
そして、それをわざわざ見せつけるように、男たちに見せられた意味。
悟った時には、気を失わされていた。