29.紫紺
R15です。ルカくん視点。
現在軸と過去が入り乱れています。
重くて、少し性的です。露骨な表現はないと思うのですが。
リザからのメールで、ジュリが部屋に向かったらしいと知ったオレは、文面には存在しないアイツの言葉も読み取った。
だからオレは、隣室に移った。
静かな寝息が、オレの視界を誘う。
羽根布団に流れる黒髪。
ジュリの噛み痕。
何処から来たのか?
何で、あんな所に居たのか?
そして、ジュリは何故、コイツに呼応したのか?
オレがサイアした日すら、覚醒しなかったジュリ。
サイア後一度も吸血することなかった。
何で、突然、覚醒したんだ?
数百年、ずっとないままだったのに。
それに、あの覚醒状態。
あんなの普通じゃない。
あの光は何だったんだ?
吸血痕とともに刻み付けられたような鬱血痕。
ジュリの刻み込んだ、執着のような痕跡。
嫌な冷えが、オレの胸元に影を落とすように拡がっていく。
口腔内に広がる鉄の味に、唇を噛み締めていることに気づく。
抑えられ少し甲高い下卑た女の笑い声。
むせ返る百合の強い香り。
今、ここに存在しない、声とニオイ。
顔を包む細い指の感触が、二手に分かれて、頬から耳、耳から首、首筋へと、産毛を逆立ててイカレル感触。
鼻腔に絡みつくような、ニオイの香油に濡れた髪。
一筋、二筋、それが落ちて肌にわずかに貼り付く感触。
無理矢理再生されていく。
首筋を撫でてた少し爪の当たる指が、爪を引きずりながら鎖骨に辿り着く。
頭だけ冷静だった。
その日。
オレは、母親のカエになった。