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Summer Snow  作者: 神崎 玻瑠音
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2.深黒

吐くとか、グロいのとか駄目な人は、自己責任で。

(そこまでとは、思いませんが念のため)


視点がや、時系列がグルグルしてますが、お酔いにならないよう、引き続きついてきて下さいませ。

日が随分と短くなったおかげで、ヴァンパイアのオレらでも早い時間から街歩き出来る季節になった。


いつまでも人間臭いオレの片割れは、人が多くて、ストアも沢山開いてて、電飾が賑やかになり始めるこんな季節が、馬鹿みたいに好きだ。


本当に、スレないよな。ジュリって。

約三世紀も生きてんのに。あれから。


ショーウインドウの中の、クリスタルとゴールドで細工された、キッラキラの回転木馬のオルゴール。

そんな、キッラキラなオルゴールよりも、馬鹿みたいにキッラキラの瞳で、ガラスに貼り付いて見つめてるジュリは、ムカつくけど、馬鹿みたいカワイイ。


なんなんだ、この生き物。


なんなんだ、本当。

この破壊的にカワイイの。


オレと同じ顔してんのに、なんでこんなクソ可愛いよ。


髪の色か?瞳の色か?

身長か?


オルゴールに見入ってたジュリが、突然走り出した。

オレよりも小柄で、はるかに虚弱なのに、馬鹿みたいに速い。


不意打ち食らったオレは、完全に出足が遅れた。


「待ってよ、ジュリ!」


まるでオレの声さえ、聞こえてない。


こんなの初めてだ。


それに、なんだよ、この禍々しい感じ。

胸くそ悪くて、吐き気すら感じる。


はえぇーんだよっ、バカジュリ…」


ヤバイ、見失う…。クソッ。

脈上がり過ぎて、心臓が焼ききれそうだ。


それだけでも、限界なのに、訳の分からない何かに頭が爆発させられそうで…。

それなのに、実際は、自分の感覚じゃないのが、すごい分かる。


「…はっ。かはっ」


見失った…。完全に。

ジュリ。何処だ、ジュリ。


「いっ…たぁ…」


呟いてしまうくらいに、心臓がヤバイ。

頭も爆発しそう。


吐く。吐きそう。


「ぐっ…」


馬鹿ジュリっ…。

吐き気を押し戻そうと、シャツの胸元を掴む。


ジュリのだ。これ全部。

間違いようない。


だって、オレの心臓、ちっとも脈暴走してねえし。

アイツ、何、転移させてくれてんだよっ。


今まで、こんなことやったことなかったじゃねえか。


人間だった時の、最期の頃感じたヤツより、ひどい。


ジュリ、何処行った?


嫌だ。

…嫌だ。


ジュリっ…。


闇雲に走り回れる状況じゃない。

ジュリから転移されてくる色々が、キツすぎて。


アイツが飛ばして来れんなら、こっちからも辿れんじゃねーのか…?


いや、辿ってやる。

辿りついてやる。


飛ばされてくるジュリの感覚を、かいくぐるのを、何度も失敗して、吐いたりしながら、縺れる脚を無視する。


ジュリ。


見つけなきゃ。

見つけないと。


ジュリっ…。


吐いたの何回目だ?

吐きすぎて、喉から血の味が上がってくる。


持って行かれそうな正気を留めるために、右手首に噛み付いた。

目線を上げる途中、夜闇の中でさえ見える深黒の場所が視野を掠めた。


なんの疑いもなく、其処だと思った。


ヤバイ。

ヤバイ、ヤバイ、ヤバイ。


ジュリ、嫌だ、ジュリ。


頭の中、狂ったみたいに、ジュリの名前呼び続けながら走った。


クソッ、こんな時は、脳裏に浮かぶのは、クッソ可愛い馬鹿ジュリの笑顔にしてくれよ。


なんで、何でっ、こんな時に、こんな…


『ルカ…』


何で、忘れられないんだよ。


『お休み、じゃなくて…』


嫌だ。嫌だ、思い出したくない。

もう、何年たったと思ってんだよ。


『バイバイ…だと、思う』


そう言って、綺麗に微笑んで、ジュリは起きなくなった。

何日も、何日も。


親も、村の人も、ジュリは天使だからって…。


我慢出来なかった。

何もかも。


オレは、ガキで…。


…しっかりしろ、オレ!

苛まれるのは後だ。


ジュリが先だろっ!


深黒の闇。

見えない膜を感じる。


なんだ、これ。入れそうにない。

それにこの、匂い…。


入れないんじゃない。

オレの身体が拒絶してんだ。


膜をぶち破るように、暗黒に踏み込んだ瞬間。


闇の中を灯すほどに、真白な光を放ってるような、ジュリの姿を見つけた。

黒い何かの前、跪いて。


その何かの周りの血の海。

嗅覚がつんざかれる根源。


死に血…。


ジュリ…?


ジュリの髪が、月のない夜なのに、やけに光ってる。

プリズムに輝く髪、磨きあげられた大理石みたいに浮かび上がる頬。

前髪の隙間から見える紫水晶の瞳が、夜行性の動物のように光を放ってる。


初めて、ジュリを怖いと思った。





























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