27.石榴
第三者視点
女王管轄下のジュリのいない、ジュリの部屋。
ルカはそこで、ベッドに腰を預け、ドアを見つめていた。
ルカの手元には、携帯。
落ち着かない様子で、携帯を指の間で回転させながら、ルカは脚を交差させ、先程よりベッドに身体を預ける。
『一人にして上げて』
リザからのメッセージ。
『新規メッセージはありません』
ラボのアプリメッセージ。
何度目か判らない、携帯チェック。
依然、リザとの会話もラボのアプリも、通知画面はずっと同じ。
ルカは交差させていた脚を戻し、そのまま背中をベッドに投げ出した。
天井を睨みつけ、イライラも露わな溜息を吐き捨てる。
そして、また、ルカは携帯のチェックを始める。
『一人にして上げて』
『新規メッセージはありません』
その2文だけが、液晶に光っている。
時刻の文字も、先程から二分すら経っていない。
ルカは細く長く息を吸い込んで、目を閉じ息を止める。
腕をベッドに広げて投げ出し、吸い込んだ時よりも細く長く、息を吐き出した。
再び、ルカは目を開けて、細く長い息を吸い、限界で息を止め、目を閉じて、ゆっくり長く細く息を吐ききる。それを何度か繰り返し、ルカは目を開けて、天井を無表情で眺める。
投げ出していた携帯を持つ手の手首を立てて、またルカは携帯を見る
『一人にして上げて』
『新規メッセージはありません』
ルカは、苛立ちを勢いに変えて、身体を起こした。
携帯のパスコードを素早く叩くルカの指。
ホーム画面が立ち上がった瞬間。
携帯が真紅の通知ランプと同時に振動する。
不意を突かれたルカは、危うく携帯を取り落しかけた。
ルカは瞬間で通知をタップした。
『Stay!』
画面に光る、リザの一言。
愛犬家のリザの、犬へのコマンドそのもの。
「なっ…」
行動を防犯カメラででも見ていたかのようなタイミングに、メッセージに、ルカが引きつった声をこぼす。
続いて、さらにメッセージが届く。
『一人にして上げて』
最初と同じメッセージ。
リザの表情や声となって、ルカの頭の中で再生される。
その表情、その声に、ルカはつけない悪態を溜息に変えた。
『一人にして上げて』
もう一度、画面上のメッセージを見て、ルカは頬の内側を噛んだ。
「…簡単に言うなよ」
呟いてしまってから、ルカは携帯をベッドに沈める。
そしてルカは、現実から自分を隔離するように目を閉じた。