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Summer Snow  作者: 神崎 玻瑠音
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18.碧宙

ジュリくん。

素足で歩く、大理石の上。

ひんやり、気持ちいい。


だからなのかな?


だから、なのかな?


なんか、ここ、胸の隅っこが…、こう、歌いたくなる。


自分がいた部屋の隣。

ドアを開けようとして、止まった。


Ivyが刺さってたからか、寝間着の両袖が折り上げられて、固定されてた。


静脈の針の痕。

ルカの一瞬のあの顔。


なんて表せばいいか分からない、見たくない自分の感情が、いきなり起伏する。

それを掻き消したくて、感情のままに、両袖を下ろした。


『一度。一度ね、目を閉じるの。一回…、二回…、三回…、吸って、吐いて、深呼吸する。そして目を開ける』


頭の中で、聞こえる声。


『ほら、痛いの飛んでった』


優しい、大好きな声。

大好きな、大好きな声。


もう一度、僕は、その声を、言葉を、頭の中で再生した。


声に合わせて、目を閉じる。

一回…、二回…、三回…、深呼吸をして。


母上がやったように、目を開ける前に、閉じてる目蓋に少し力を入れて、そして目を開けて、ドアを開けた。


部屋の真ん中にあるベッド。


近寄ると、記憶通りの黒髪の少女が眠ってる。


「Snow white…」


つい、声が溢れてた。


深い森みたいな、黒髪。

長い睫毛。

紅色の気配のある頬。

母上の薔薇みたいな唇。


母上が、一番最初に僕に読んでくれたお話。

それを思い出さずには、いられなかった。


ベッドの近くにある椅子に座って、僕は、黒髪の少女の寝顔を覗き込んだ。


ふわり。

ふわりって、優しい匂いがする。


シトラスみたいな、レモンみたいな。

ローズみたいな…。


懐かしくて、泣きたくなる匂い。

匂いの元を、辿りたくなる。


花は飾られてない。

寝具からでもない。


この子…?

この子から?


匂いの元を、確かめたくて。

匂いの正体を、確かめたくて。


なんだろう?

この匂い。


優しい、優しい匂い。

やっぱり、この子から?


身体が急に止められた。


「おい」


低い声が降った。


「?」


身体が、浮くような状態で動かない。


「馬鹿ジュリ」


声では、誰か分からなかったけど、これで分かった。


「ルカ?」


首だけで振り返り、見上げると、やっぱりルカだった。


「…何、やろうとしてた?」


静かで、いつもと違う低い声。


「なんか、怖いよ?ルカ」


ルカに吊られたみたいで、動かせない身体。

それに何か、居心地悪くなるくらい、ルカの声が低い。















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