13.鈍銀
第三者視点。
短めです。
城の奥、リザの居住スペース。
古のものと、世に出ている物の何年も先の最先端技術が奇妙な調和を保っている。
忽然と現れたルカを、そこに居る者たちは最敬礼で迎える。
無造作にまとめたブルネットの女性が、ルカを迎え出る。
リザの一番の腹心の孫娘。
「…」
ルカが目配せをすると、女性を従え長い廊下を歩き始めた。
リザのライブラリーに入り、テラスから中庭に抜ける。
この庭は、かつて、リザの母のものだった。
リザの母と、リザ、ジュリとルカ、よく4人で過ごした場所。
庭の中、リザの母が建てさせた、リザとジュリとルカのための月見小屋。
ルカと、侍従の孫娘はその小屋に入った。
小屋の中、本棚の中、リザの母の香水ビンの置かれた棚の奥に、にルカが手を入れる。
タイル敷きの床が、静かに上がり、ガラス張りのエレベーターが現れた。
ルカと侍従の孫娘は、エレベーターに乗り込んだ。
「殿下、こちらですが…」
エレベーターから出てすぐ、侍従の孫娘がその場にいた眼鏡の女性からタブレットを受け取る。孫娘は、何度かスワイプて出した画面を、歩きながらルカに見せる。
歩きながら画面を見たルカの、足が止まる。
「…」
ルカが侍従の孫娘の顔を見る。
「第2ラボです」
侍従の孫娘からの回答に、ルカが走った。
王太子さえ存在を知らない、リザの秘密組織。
王宮見取り図にも存在しない組織の本部。
「これ、何っ!?」
ラボに入るなり、ルカの張り詰めた声が飛んだ。