表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
Summer Snow  作者: 神崎 玻瑠音
13/35

12.古桃

第三者視点。

在位80年を超える、95歳の女王。

王配を亡くしたのは、50になるより先だった。


子は、王太子一人のみ。


史実の限り、これ以上の繁栄はなく、始まりの王以上に天使の寵愛と祝福を受ける女王。


ベッドの上、出逢った頃から、少しも変わらないジュリを見つめながら、リザは己の国民達からの、そんな敬愛からの自身への謳い文句に、自虐的になる。


天使の寵愛には縁などなかった、と。


眠りに戻ったジュリの寝息を、ただ聞いている女王。

天使の意志を無視した祝福は、リザの時の進みを歪めた。


軽いノック音に、リザが居ずまいを正す。

リザの許可の合図より先に、ドアが開く。


普段聞かない雑な音に、くすりと笑って、振り返る。


「やっと、ノックは覚えたのね」


からかう口調で言う女王は、ムスっとしたルカを見上げる。


「ジュリと住んでるからな」


ルカが、呟く。その呟きに、リザが小さく吹き出す。


「フフッ。ジュリらしい」


ルカからジュリへと、リザは視線を戻す。


「お気に入りの天使のままだよ、…ずっとな」


少し言いにくそうに、ルカが言う。


「お気に入りの天使のまま…」


ルカの言葉を繰り返す、女王。


「お前、化粧臭え。つか、その髪も似合ってないし、薬品くせーよ」


リザは、ルカの言葉に驚いた。


「…」


ルカとリザの目が合う。


「退位ってのしたら、それ辞めろよ。化粧も、髪も。…しんどかったな…、普通のフリ…」


不器用な言葉を紡ぐ、ルカ。


「馬っ鹿じゃないの?いまさら、何カッコつけてんのよ、オレサマルカ!気持ち悪くて、鳥肌立つっ!気持ち悪っ」


リザが、わざとらしく身震いを見せて、ルカに悪態をつく。


「なっ、お前っ、口、わっるぅっ!!お前、それでも本当に女王かよ?!」


リザの台詞に、条件反射でルカが声を荒げる。


「口悪いのは、ルカのが移ったから、ルカのせいでしょ!?」


二人の口喧嘩に、眠っていたジュリが微かに目を覚ます。


「リザ、ルカ、お声が大きいです」


眉間に深い皺を刻んで、リザとルカに言ったかと思うと、ジュリは布団に潜った。


女王とルカは顔を見合わせて吹き出し、慌てて笑い声を押し殺す。


「母様、そっくり…」


小声で、泣くほど笑いじゃくりながら、リザが言う。


「母上、ね?」


ジュリの声マネで、ルカ。


「懐かしー。よく言われたわ。母様そっくりのお小言、沢山」


目元の涙を、拭いながら、リザが懐かしむ。


「…百年の恋も、冷めたろ?」


ルカが、呟く。


「っ…。なっ、はっ?…」


真っ赤になって、狼狽えるリザ。

ルカが、声を殺しながら笑いじゃくる。












評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ