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日記の一枚目
わたしは、怖いことがあった。
それはたとえば、誰もが抱く死の幻想でもなく。
それはたとえば、誰もが願う生の夢想でもなく。
ただ、何も知らないまま壊れていくことだった。
わたしが望むには、おおきすぎること。
わたしが願うには、ちいさすぎること。
わたしが抱いたのは、いろんなことを知ることだった。
それがかなったなら、別に止まってしまってよかった。
わたしの中に流れる時間が止まってしまっても、よかった。
忘れられても良かった。一人ぼっちになっても良かった。
ただわたしは、いろんなことを知って。
生きていたのだと、
存在していたのだと、
世界に許されていたのだと、
そう、思いたかった。
それだけだった。
だれかに覚えていてもらえるほど、すごいことが出来るわけじゃない。
だれかに褒めてもらえるほど、すごいことをしたわけじゃない。
だれかに認めてもらえるほど、すごいわけじゃない。
だから。
だからわたしは、わたしだけが願うこの切望を、
かなえられるだけでよかった。
それだけだった。