8.避けられないもの
朝、1階に降りてくるとアンナさんではなく健太さんが準備をしていた。
「おはようございます、アンナさんは?」
「おはよう、アンナは大事をとって休みだ」
「大事をとってって何かあったんですか?」
「あー、えーっと、俺の口からは…」
え?もしかして病弱とか不治の病とか?
「ちょっとアンナさんのところへ行ってきます!」
「あ、おい!」
----------
コンコン
「はーい」
「アンナさん、大丈夫ですか」
「?、大丈夫よ」
「取り敢えず入りますね」
中に入ると、何故かアンナさんは部屋の掃除をしていた。
「なんで休んでないんですか!?」
「いやー、退屈で」
「退屈って体調崩したんじゃないんですか?」
「さすがに動き回る仕事は辛いけど、ただの生理だしね」
「せい…り?」
「あれ?ナオはまだ?」
「イエ、キテイマス」
なんにせよ、不治の病とかでなかったのは良かった。
「仕事に影響するから来たら報告するようにしてるんだけど、ケンタは妙に気を遣うのよね」
「あー、それはわたし達の世界の文化が影響していると思います。
昔ほどじゃないけど大っぴらにするものじゃない、というのも根強いので。
逆に血が出たりとか、重い人はかなりキツい症状が出ると思うんですけど、病気とか呪いみたいに扱われることは無かったんですか?」
確か中世の歴史にそんなのがあった気がする。
「んー、そういう話は聞いたことないなぁ。
多分だけど文化や寿命が異なる種族が、共通して起きる症状だからかな。
魔法といってもそんな大規模に影響を与えるのは難しいしね」
「なるほど。
ちなみに生理用品…、何か拭いたり受け止めたりするものってありますか?」
「煮沸して乾かした布をあてたり、丸めて入れたりしてるね」
----------
「健太さん、すいませんでした」
「いや、俺の口から説明するのも難しくてな。
生活するうえでは避けられないんだし、良い機会だったかもな」
「あはは、そうですね。
でもアンナさん、退屈だからって掃除してたんですよ」
「一人遊び、というか娯楽全般があまりないからな」
「そう考えると、わたし達の世界は相当先を行っていますよね」
「ああ、今までそんな余裕なくて考えてなかったが、この世界でも実現できそうな玩具とか作ってみてもいいかもな」
どんなのなら作れるか考えながらお仕事してました。
今回は文字通り「避けられないもの」(と娯楽関係の布石)でした。
これは物語を書くうえで必ず入れたいと思っていて、かつ早めに出さないと不自然になってしまう話題でした。
(後になるほど、今まで来なかったのかよとなってしまうので)
とはいえ表現し辛いと感じてしまうのは、わたしが「こちらの世界」の住人だからでしょう。