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『俺は赤井健太、この近くの村に住んでいる。

怪我の応急処置はしたが、本格的な治療は村でないと難しい。

あの場所に留まるのは、血の匂いを嗅ぎつけて獣が寄ってくる可能性もあるから危険だ。

……』

わたしを背負った男の人は、こんなふうに声をかけながら歩いていた。

正直わたしにそれを聞く余裕はなかったけど。

足、めちゃくちゃ痛かったし。

それでも、声をかけてくれる人がいるというのは、知らない世界に独り放り込まれたわたしには救いだった。


そうこうしているうちに森が開け、高めの柵と門が見えてきた。

『ようこそ、ディアベルの村へ』


 ----------


村の小さな一軒家の前で足を止めると、

『いいか、シャルロッテさん、だ』

『シャルロッテさん?』

相変わらず余裕がなかったのでオウム返しになってしまったのだが、

『それだけ分かっていれば大丈夫だ』

と、ドアベルを鳴らすと、一人の女性が出てきた。

背は低めで温和そうな笑顔、そして、その、なんていうか恰幅の良い体型のおb…シャルロッテさん。

「あらまあ、夜分にどうしたのかと思ったけど、その女の子は?」

「帰らずの森でゴブリンに襲われていた。

怪我は左ふくらはぎに矢が一発貫通、毒はないことを確認したが衛生状態が良くないので病気になる可能性がある」

「応急処置はしたんだろ、あとはこのシャルロッテさんに任せなさい」

「お願いします。あと…できれば傷跡が残らないようにしてあげられれば」

「女の子だからねぇ。正直跡形なくってのは難しいけどやってみるさ」

何やらやり取りをしたあと、お邪魔することになったのだけど、そこからがすごかった。

傷口にあてた両手から淡い光が出たかと思うと、みるみる傷口が小さくなっていき痛みも引いていく。

当たり前だけど、初めて魔法というものを見た瞬間だった。


治療が終わりお礼を言おうとしたところで、この世界の言葉を何も知らないことにようやく至った。

あたふたと男の人を見ると、

「ありがとうございます。シャルロッテさん」

と頭を下げていた。

「あ、ありがとうございます。シャルロッテさん」

それに習ってわたしも頭を下げる。

そしてこれが、わたしが最初に使ったこの世界の言葉となった。

いいか、シャルロッテさんだ。

お気付きの方もいるかと思いますが、「」がこの世界の言葉で『』が日本語です。

読んでいる皆様が翻訳スキルを持っているようなイメージです。

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