1.ある意味ありふれた異世界転移
はっはっはっ……。
既に辺りは暗く、足元もろくに見えないなか、躓きながらも必死に逃げる。
追ってくるは暗闇に光る6つの赤い瞳。
----------
わたし、原口奈緒は高校生である。
今日もいつもの通り通学し、そこそこ勉学に励み、友達とお喋りをしながらお昼を食べて……、
気がついたら茜色に染まる夕日を眺めていた。
起こしてくれない友達に腹を立てたところで、学校ではなく四方が木々に囲まれて居ることに気づいた。
知らない光景に不安になり、遭難時には無駄に動かない方が良いといううろ覚えの知識からどうしようかと思ったところで、木々の間から人影のようなものが見えた。
それに少し安心し、道を聞こうと近づいたところで、それが人ではないことに気づいた。
背丈はわたしより低いので、140cmくらいだろうか。
褐色の肌に、額に小さな角が生えている。
その姿からファンタジーによく出てくる魔物の類と認識し、どう考えても今の自分は襲われる村人枠だと思って距離を置こうとしたところで、3体のうちの1体と目があってしまったのであった。
----------
はっはっはっ……。
後ろを振り返ると未だ4つの瞳が追ってくる。
…4つ?
減っていることに気づいたところで左足に激痛が走り倒れ込んでしまった。
見るとふくらはぎに矢が刺さっている。
追い詰められるなか、本当に恐怖を覚えると声が出ないんだとか、先回りされて射られたのかとか、妙に冷静な現実逃避と絶望をしたところで、弓矢を持った魔物の首が飛んだ。
残りの2体はすぐに散開しようとしたが、相手は更に早かったようだ。
槍のようだけどサイドに刃が付いている武器を袈裟斬りに2体目を倒すと横に大きく薙ぎ払い3体目を吹き飛ばす。
こうしてあっという間に魔物を倒したのは黒髪の男性だった。
『えっと、どちら様でしょうか』
絶望から開放されてなんとも間抜けな質問をしてしまったけど、返ってきた言葉は更に斜め上だった。
『君も日本人か?』
始めてしまいました…。
今回はゴブリン先生の洗礼でした。
異世界を印象付けるお仕事をして頂きましたが、戦闘シーンは当面はない予定です。