悪役令嬢の葛藤
午前の授業をつつがなく終え、昼休み。
私はまた、シューラニオスと中庭にいた。
「で、なんで僕は君とここにいるの?」
シューラニオスはうんざりした様子で私を見やる。
「取り引きをしませんこと?」
私は一縷の望みをかけてシューラニオスに向き合う。
「聞こうじゃないか。」
シューラニオスはどうやら興味を持ってくれたようだ。私はひとつ頷くと、話を始める。
「マリン嬢と、キース様を、結ばせたいのよ。」
瞬間、シューラニオスは怪訝な顔をする。なかなか雄弁な顔だと思う。
「そんなことして、君はどうなるの?」
私はにこりと笑う。
「それが貴方への対価。私がリベス侯爵家に嫁ぐ、それがこの取り引きをあなたが断れない理由。」
「確かに、リベス侯爵家はアリアス公爵家との繋がりを欲しがっているけど、」
「あら、私じゃ不満かしら?」
シューラニオスは渋い顔をそのままに、諭すように言った。
「この取り引きには、君への利がない。」
「そんな訳ないでしょう。これは私が持ちかけた取り引き、私に利がないなんて」
「あれだけ渇望していたキースを、まさか諦めたなんて言わないでよ。」
「そんなこと、私は、キース様には、幸せになって欲しいのです。昔から、それだけ。私では、もう駄目なのですわ。」
「キースは君じゃあなきゃ、弱音を言ったりしない。マリン嬢じゃ無理だ。キースには、君しかいないんだよ。」
「いいえ、そうではありませんの。私では、彼を変えられなかった。彼を変えたのは、マリン嬢ですわ。」
「僕はそうは思わないね。それに、僕ら同士の取り引きに、家を持ち込むのは卑怯じゃない?」
「私が目的のためには、手段を選ばないこと、忘れましたの?」
「そうだった。僕があんなごっこ遊びに駆り出されたのも、君の差し金だもんな。」
「シナリオだけ書いて、あとは成り行き任せなんて、随分とずるいことするのね、と思って、表舞台に立たせただけですわ。」
「だから、表舞台に立たせるって、この僕にできる人、そうそういないからね!?」
「そうでしたの」
ふぅ、と息をつく。
「……綺麗事だけじゃ、この世は生きてけないんだよ。」
「わかっていますわ。」
「それでも、僕でいいの?」
「貴方だから、私の残りの生を預けたいと、思ったのですから。」
「後悔するよ。」
「承知の上です。でも、そうしたら、貴方に助けてもらいます。」
ふわり、と微笑む。
「……うわ、悪い顔。」
最後のつぶやきは聞こえないふりをした。
シューラニオスは面白そうなことを匂いで嗅ぎ分けたりしそうです笑




