第二話 ふたつの世界
殺人的な暑さはさらに猛威をふるい、各地で熱中症がでているという。
部屋のエアコンを全開にしながら寝ていたはずの悠の部屋は毎朝エアコンが切れている。
毎日不思議に思いながらも、暑さに対するイライラで悠は考えることをやめた。
妹は毎朝汗だくの悠をみて爆笑する。
非常に気分が悪い。
とまぁそんな事はおいといて。
謎の少女の事を調べないと。
「で?なんで君はこんな時間になっても家にいるわけ??」
「こんな時間ってなんだよ?」
8:32
「マズい!お前のせいで遅刻じゃねぇかよ!」
学校到着時間は8:55
朝礼もすっかり終わって、1限がはじまったところであった。
幸いながら今日の1限は生物であった。
なにが幸いだって?それは生物担当の先生が超絶かわいいSSレートだからだよ!!
「(今日も小咲先生かわいいなぁ~)」
とぼんやりしていると、横から風を切るようなチョップが来た。
「ッッッツツ・・。」
頭が勝ち割れそうな強打だ。
こんなことをしてくるのは京香しかいない。
「ちょっと、どういうつもり?こんな美少女を家の前で散々待たせておいて、学校には寝坊で遅刻。おまけに先生にデレデレするとは!」
「京香ちょっと待て、今の文章にはかなり訂正点があるな。まず第一にお前は美少女ではない!第二に寝坊したわけじゃない、コイツがっ!!」
その瞬間悠は正気に戻って右手をみた。
謎の少女はいない。
「ううん・・なんでもない。」
あれはきっと夢だったのであろう。
~翌日の朝~
「起きて悠君、起きてぇ!!」
又声がする。
外で狂ったように鳴きまくる蝉の声にまぎれて聞こえてきた。
「また夢の中にいるのか。」
悠はそっと自分の頬に手を伸ばしつねった。
「痛い・・・・」
悠は寝ぼけながら声をだした。
すると、また声が聞こえた。
「お!起きたみたいだねぇ~悠君!」
あの少女である。
悠はバっとくるまっていたタオルケットを投げた。
見知らぬ空間にいたのである。
「ここは?どこなんだよ?おい!誰か答えてくれぇ」
「だーかーら、それを今から説明するっていってんの!」
少女は得意げに話をすすめた
「改めまして、おはよう悠君!
ここは君たちが住む世界とは違う世界、いわゆる異世界という場所と君たちの住む世界の間の場所。
簡単にいうと中継地点だねぇ~」
「は?」
悠の脳の処理速度では追いつかない説明をされた。
異世界という一単語が悠の脳内を混乱させたのであった。
悠はそのまま気絶した。
「ふぇえぇええ?!ちょっと!悠君!悠君悠!!君!!!」
「ん。」
悠は気づいた。
どれほどの時間たおれていたかも分からない。
又夢だったのかな。そう考えた。
「あぁあぁ。もう一回寝よ。今日は日曜日のはず。」
窓から差し込む日光に照らされた布団に、柔らかくてあったかい枕に頼るように眠りに付こうとした。
「ん?でもこの柔らかい枕いったいなんなんだ?」
悠は目を閉じたまま枕を触ってみた。
「ひゃあ!!」
枕が喋ったのである!
悠は驚いて、まるでネコが背後にキュウリをおかれた時のように跳びあがった
「あぁぁぁっぁぁぁぁぁ!」
悠は目の前の光景に驚いた。
あの右手にいたはずの小さな少女が大きくなって自分に膝枕をしていたのである。
「ちょっと。どこ触ってんのよ!!」
少女は顔を赤くして言った。
「ごめんごめん!まさか人だなんておもわなかったもんだから(笑)」
悠は照れながら言った。
「(ラッキーだったな!)」
そんなことを考えながらも悠は冷静になった。
「何度も聞いて申し訳ないんだけど、君は誰?」
それを聞いて欲しかった様な感じでこちらを見てきた、さっきから何度も聞いているのだが。
まぁそんなことはどうでもいいだろう。
「高貴なる美少女の都シオンである!君たちの世界で言う巫女というものである!!」
白ベースにところどころ朱のラインが入っているいかにも巫女って感じの服装である。
シオンは続けていった
「ソフィアベースでは私は小さくなって君の右手から放たれる光をゆがめて存在している、しかし!イズナベースでは私は普通の大きさに戻りひとつの生命体として活動している!つまりソフィアベースでの私は映像みたいなものね。ソフィアのヴァーチャルとか呼ばれるものに近いわね!」
「ソフィアベース?イズナベース?」
「そうか、それもしらないのか。それは失礼(笑)」
「(コイツ軽く俺を馬鹿にしたな・・)」
「ソフィアベースというのは君たちの住んでいる世界、イズナベースというのはこの世界の事よ。わたしたちイズナの生命体が勝手つけたのだけど」
「要するにシオンはイズナの人間でソフィアに来る時は俺の右手にしか存在できないということか?」
シオンは不満そうに言った。
「わーたしは!人間じゃないの!巫女なの!」
悠は頭にハテナマークを浮かべた。
私たちの世界すなわちソフィアベースでは人間の職業の中に巫女があるのだから。
イズナベースでは巫女族でも存在するのだろうか?
蝉が生き生きと鳴いている。
蝉の鳴き声とむさくるしい暑さに悠は起こされた。
めずらしくアラームの前に起きた。
気分はすがすがしい。
朝食をとるために1階のリビングへと降りた。
やけにお腹がすく。
いつもなら菓子パン一個でお腹がいっぱいになるのに今日は違った。
朝からメロンパン・チョコパン、更に孔明堂のカステラまでペロリと食べてしまったのである。
「おはようございます。マスタ~」
右手から声がした。シオンが起きたのである。
昔から受け入れのはやい悠はシオンが右手に居住することを仕方なしに認めたのである。
「おはようシオン」
シオンが起きるタイミングで右手が光り、一瞬にして一本の光の筋が女の子になるというのはなんともいえない光景であり、少々、いや、かなり不気味だが、悠はそれも受け入れた。
「あ、マスタ~!」
シオンが急に声をあげた。
「なんだよ、ってかマスターってなんだよ!」
「私の契約者だからマスタ―なんですよ、それより・・・」
「それよりってなんなんだよ」
「大変申し訳ないんですがそのぉ・・」
「だからなんなんだよ!」
「今日の朝食は異常ありませんでしたか?」
「朝食?普通においしくいただいたが、それがどうした?」
「それは良かったですが、量などにお変わりはございませんでしたか?」
「量?そういえばいつも以上に食べたよーな。。」
「やっぱりでしたか。。」
「それがどうしたんだよ。」
「実はですねソフィアベースにいる間私は光をゆがめて存在します、だから食事をとることができないんですよ。それで、あなたの体内から直接栄養分を摂取させていただくんですよぉ。。なのでいままで以上にこれから食事をとって頂くことになるんですよ。。しかも・・。やっぱいいや。」
「なるほど、でしかもってその続きはなんなんだよ!」
「私大食いなので、よけいにたくさんの食事をとって頂くことになるかと・・・」
シオンは顔を赤くしていった。
「え?なんて言った?声が小さすぎてわかんねぇよ!」
悠の発言に対してシオンはさらに顔を赤くした。
まるで噴火すんぜんの火山のようである。
「マスターの馬鹿!!!!はやく学校にいけぇぇぇぇぇ!!!」
悠はなんでシオンが怒っているかわからなかったが、いつのまにか京香が大体いつも来る時間になっていたので制服を着て外に出た。予想通り京香は来ていた。
「へぇ~以外ね。あんたもやればできるんだ~」
と煽るようにいってくる京香を横目に
「うっせぇ馬鹿」と京香に聞こえるか聞こえないか位の声で言って学校の方へと歩いて行った。
右手にはシオンがいる。
京香にばれないように右手は隠しながら学校へと向かった。
今回はこの物語の設定が多く含まれる話になったのではないでしょうか?
ソフィアベースとイズナベース 二つの世界が繰り出す物語とは?
一体この先なにがおこるのでしょうか!