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ヒストリア  作者: パリィ
1章 兆し
8/66

廃棄村の戦い

初の戦闘描写…φ(:3」∠)_


「この辺でいい。降りてくれ」


村に近付くとシルバーファングのるいるいを森に降下させる。るいるいを見られてもどうとも思わないが、別に見せる理由も無い。


「全員戦闘の用意をしておけ。出来るだけ村人を助けたい。確認したいことも山ほどかあるからな」

「仰せのままに」

「はいにゃ!」

「畏まりました」


全員の返事を聞くと、遠目からでもわかるモクモクと黒煙が上がっている村の方へ進んで行く。

そして聞こえてくる悲鳴や怒声、断末魔…。スキルを使わなくても分かる距離に、確かに変異種のゴブリンとオークが群れているのが分かった。とんでもない数だ。

どこかで戦っているのか、隠れて様子を見ているのか、先行しているはずのラザエラの姿は見当たらなかった。


俺はメニュー画面からパートナーと離れていてもリアルタイムで命令を出すことのできる、主従専用の音声メッセージ欄を開く。対象者にラザエラを選択し、声をかける。


『ラザエラ聞こえるか』

『っ!?申し分かりません。少し驚いてしまいましたが聞こえております』


どうやらメッセージの音声はきちんと届いたようだった。


『今はどこだ?何をしている』

『はっ!カナタ様の位置から少し村側に隠れております。今は群れを成している変異種たちの指揮官と思われる個体をしらみつぶしに切っておりました』


指揮官だと?いよいよ謎が深まってくるな…


『そうか、変異種の指揮官と言うのも気になるが、今は目の前の村人たちだ。村の中へはリーゼを先行させる。ラザエラは戻って俺の護衛だ』

『御意』


ラザエラに指示を出し、俺は残りの3人にも手早く指示を出す。


「これから変異種どもを皆殺しにする。リーゼには村の中にいる変異種を、ルピナとパニエは後続を。俺は目の前のやつらを掃討する。やれるな?」

「問題ありません」

「パニ姉様についてくにゃ!」

「同じく問題ありません」


「よし、行け。皆殺しにしてこい」



3人が即座に移動を開始し、どこにいるのかも分からなかったラザエラも同時に戻って来て俺の後ろに立つのが分かった。

目の前では捕まった獣人やエルフ、ドワーフ、人間の男たちが嬲り殺しにされ、女たちは一か所に集められている。


ゲーム内でも見たことがある亜人種がかなりいるな…異世界ではそれが普通なのだろうか…。


「それにしても、やつら指示を出していた変異種が殺されても止まらないのか。いや、気付いて無いだけだろうな…」


ラザエラの隠密は気付かれない。正確にはとんでも無く気付き難いのだが。


「だが、まずは目の前の胸糞な光景をどうにかする。ラザエラは手を出さなくていい。俺の後ろにいろ」

「御意」


ラザエラの返事を振り返ることなく聞き届け、凄惨な光景が生み出されている場所へラザエラと共に堂々と歩き出す。


「ギィ?ギッギィ!!」

「ブヒィィィ!!」


さすがに何匹かの赤黒い肌の変異種ゴブリンやオークがこちらに気付き、手にした棍棒や錆びた剣を構えて雄たけびを上げながら走ってくる。


「お前らなんぞに武器はいらんな。ダークメイジスキル『月光の楔』」


ダークメイジスキル、月光の楔。複数のターゲットを一定時間その場に拘束させるスキル。ゲーム内では何も無い空間から白い鎖が出て手や胴体を拘束し、封剣が足を貫くと言う派手なエフェクトがあるのだが。


「ほぉ…こちらではあの派手なエフェクトは無いのか」

「そのようです」


どうやらこちらの世界では錆びた鉄の鎖が手と胴体を拘束し、ただの鉄剣が物理的にターゲットの両足を貫きその場に止めていた。


ラザエラは知っていたような口ぶりだ。というより俺たちより先に戦っていたのだからスキルを使っているはずなので、分かっていてもおかしくはないか。


「そうか。ラザエラは先に戦っていたから知っていたのか」

「…はい」


目の前では俺たちに向かってきていたゴブリンとオークたち、村の男を処刑していたオークたちや女たちを犯そうとしていたゴブリンやオークまでもが月光の楔によって身動きを止められている。


月光の楔の効果範囲が広がっているっぽいな…


生き残っている村人たちは、急に動きを止めたゴブリンとオークたちを呆然と見つめ何が起こったのか分かっていない様子だった。


「はは、そうかそうか。しかしこう戦いながらお前と会話できるなんて夢のようだな。今までは一方的な命令しかできなかったが、これからはいつでもお前とも会話ができる。うん。いいな、異世界と言うのも」


そんな中を照れ屋だと知っているラザエラを少しからかうように進む。

案の定、ラザエラは少し恥ずかしそうに首に巻いてあるスカーフに顔を半分埋める。


「ふふ。ラザエラは可愛いな。恥ずかしがり屋だが、そこがいいな」

「…ご冗談を」

「ね、ねえ!これは…これはあなたたちがやったの!?」

「ん?」


やばいやばい。普段、無表情のラザエラの貴重な恥ずかしがるシーンに気を取られていた。こっちが先だった。

月光の楔により身動きが取れなくなったオークの下敷きになっている獣人の女性がこちらに向かって叫んでいる。どうやらこの場にいる村人で男性たちは全員もう息がないようだった。


「あなたたち、こ、こいつらを何とかしてくれるの!?」

「た、助けてぇ!!」

「いやぁ!早くこいつらをどけてぇ!」


獣人の女性以外にも集められた半裸の女性たちが一斉に声を上げる。片手を軽く上げると答えてやる。


「あぁ!こいつらはここで皆殺しにする。俺の仲間がこいつらの後続と村にいる連中を討伐に行っている!!安心しろ!」

「ほ、本当っ!?」

「助かるの!?私たち!」

「お母さぁん!!うぇえええんっ!」


助けが来たことを知った女性たちが騒ぎ出すのを横目に、俺は仕上げのための初級魔法を唱え始める。


「さぁ、その醜い顔を(はじ)けさせろ。メイジスキル『アイスニードル』」


メイジスキル、アイスニードルを唱え発動する。すると、瞬時に俺の周囲に氷の棘が生まれ周囲を覆いつくす。初級魔法の一つではあるが、俺が使えばその規模と威力は中級魔法並みになる。


「行け」


俺の号令で全ての氷の棘が見える範囲のゴブリンやオークの変異種を串刺しにする。

身動きの取れないゴブリンやオークは声も上げぬまま氷の棘に貫かれ、血飛沫を盛大に撒き散らしながら即死していく。


「ふぅ。飽和攻撃はスカっとするな。おい!重傷者はいるか!?息があるものは全員連れてこい!!」


やはり変異種とは言え所詮はゴブリンやオーク。俺やリーゼたちからすると雑魚ですらない。変異種は上位種よりも強いと言われているが赤黒ではこの程度である。


異世界だからと警戒していたが結果ただの雑魚だったな


「……た、助かったの?」

「ぁ…ぁあ…」

「うわぁあああん!!」


自分たちが助かったことを喜ぶ女性と、信じられないものを見たかのように呆然としている女性たちもいた。


「すまない、あんた。名は?」


最初に声をかけてきた獣人の女性に声をかける。犬耳の金髪の女性で、着ていたであろう服はボロボロに引き裂かれている。


「えっ?あ、私はメイです。あ、あの!助けてもらってありがとうございます!でもまだ連れ去られた娘たちや子供たちがっ!!」


声を掛けるとメイと名乗った女性は慌てて駆け寄ってくる。そして連れ去られた女性たちもいるらしいが、こちらは少し目のやり場に困り直視ができない。


ゴブリンやオークは女子供を攫い、女は死ぬまで慰み者と子供を産ませる母体に、子供は食料にすると言う胸糞悪い忌まわしきテンプレがある。そして目の前にいる彼女たちはまさにその忌まわしいテンプレの被害者になりそうになっていたのだ。流石にここまで聞いてしまったら無視するのも後味が悪い。無視するつもりなど最初から無いが。


「……ラザエラ。追えるか?」

「承知」

「俺もすぐに向かう」

「御意」


その場から瞬時にラザエラの姿が消える。先程も言ったが戦って見た感じラザエラ1人でも余裕で…いや何百匹いようともやつらは指一本ラザエラには触れることすらできないだろう。


そして目の前には俺の後ろに控えていたラザエラが、瞬時に消えたことにまたも呆然としているメイに声を掛ける。


「メイと言ったな?重傷者を連れてこい。虫の息でも良い。死んでなければ全員連れてこい。動ける者たちにも伝えるんだ。それとこれを羽織っていけ。破れている服でうろうろされるのは、その、目のやり場にも困る」

「えぁ?あ!はい!」


半ば無理やりにだが俺の黒い外套を羽織らせる。メイは少しキョトンとしていたが、自分の状態を見てはっ!っと気づき顔を真っ赤にして集められた女性たちの中に走って戻っていく。


俺は走っているメイの背中を見ながら全員にメッセージを送る。


『あーあー。皆聞こえるか?』

『あぁ!カナタ様のお声が耳元でぇ!』

『カナタ様の声にゃっ!!天啓だにゃ!!』

『聴こえております。ご主人様』

『聴こえております』


『…大丈夫そうだな。離れている時は音声メッセージを使え。確かお前たちにも主従専用の小窓があっただろ?それを使えばこうして離れていても会話ができる。それでたがな。こちらは片付いた。俺はこれから怪我人の治療をする。その後連れ去られたらしい女性たちと子供たちの救出に向かうつもりだ』

『畏まりました』

『畏まりました、ご主人様』

『はいにゃー!』

『ご主人様、私はそのまま救出を最優先で?』


『ラザエラは引き続き連れ去られた女性と子供の救出を。治療が終わり次第すぐに向かう』

『御意』

『ではメッセージを切る。また用があれば繋ぐからな』


そうしてメッセージ欄を閉じると、いくつもの視線を感じそちらへ振り向く。

そこには集められ着ていたものを引き裂かれた半裸の女性たちが不安そうな顔で俺を見ている。中にはまだ年端も行かなそうな少女もいた。


ラザエラを行かせたのは間違えたかな…。


「あ、あの!」

「ん?」


1人の女性が声をかけてくる。犬耳獣人のメイではなく金髪の人間だ。


「た、助けて下さりありがとうございました!そ、その、これからどうなさるおつもりで…」

「ん。あぁ。ちょっと待ってな。確かこの辺に…」


インベントリを開くと、ある物をドサドサっとアイテム化し取り出す。それは服やローブと言った布類の山。派手なものから地味なものまでを放出した。


「すまない。こんなものしか無いが全員着て欲しい。流石に、その、目のやり場に困る」


放出された衣類には男性ものも混じっていたが、ほとんどは女性物のドレスやワンピースだ。状況や場の空気に合ってはいない気がするが、この際隠して貰えれば俺はなんでもいい。

こちらとて生粋の童貞である。画面越しの女性の裸は良く見るが、現実などでは皆無なのだ。刺激が強すぎる。


「……え?」

「聞こえなかったか?全部お前たちに与える。頼むから着てくれ。動けない者には動ける者が着せてやれ。俺は後ろを向いているから早めにな」

「え?…あ、はい!!みんな!動ける人は手を貸して!ここの服着ていいって!」


そしてバタバタと後ろで女性たちが動き出す。俺は少し興奮して元気になってしまったマイサムを落ち着かせるために、インベントリからタバコモドキを取り出し指先に火魔法で火種をだしタバコモドキに火を付ける。


そしてほんの数分のうち、吸い終わる前に声を掛けられる。


「あ、あの、着替え、ました!」


どこかカタコトの金髪の人間の女性。先程声を掛けてきた女性だ。

着方が分からないのか、少し不格好になった赤いドレスを着ていた。


「終わったか?」

「いえ、まだ何人か着替えてますが、その怪我している子が…」

「どこだ?案内してくれ」

「は、はい!」


金髪の女性に連れられて怪我人の下へ行く。そこには手足を雑に切られかなりの出血量のエルフの少女が横たわっていた。もう虫の息だがまだ息がある。傍には犬耳のメイもいた。


「あ、ぁあ、あのアリサがっ!」


メイの知り合いなのだろう。


「すぐに助けてやる。…癒せ、ライトヒール」


俺が自分で貫いた手を癒したスキル。まずはスキルで傷を塞ぐ。だが出血した血までは戻らないかもしれないと思い、念のためインベントリにある修練で作成した例の最上級ポーションを取り出し、ゆっくりと口の中に流して行く。


「けほっ…かふ…」

「ゆっくりでいい。飲むんだ」


エルフの少女の頭を自分の膝の上に乗せてやり、飲みやすいように角度を少しつけてやる。すると少しずつだが嚥下しているのが分かった。


そして少女が飲み終えるとスキルでスリープの魔法を少女にかける。寝息がスースーと聞こえ始め一命を取り留めたことが分かった。


「あの…」

「ん?あぁ。この子はもう大丈夫だ。そっちは余っている服は…無さそうだな。やっぱ足りなかったか」


金髪の人間の女性は申し訳なさそうに俯いている。


「す、すみません。まだ足りて無いようで…」

「少し待っていろ」


インベントリに服が余っていないかを確認する。何故こんなにも服があるのかと言うと、裁縫スキルの修練のために作った服を、売るでも整理するでも無くものぐさな俺はインベントリに入れっぱなしにしていたのだ。

と言っても俺のインベントリも無限では無い。もちろん上限があり、溢れて入り切らなかった服はの屋敷の地下倉庫に眠っているのだが…。


「お、まだあったな。とりあえず全て出しておく。好きに使ってくれ」

「え、ええぇ!こ、こここんなものまで!?」


取り出した服の中にはマスターランク修練で作った物が混じっていた。

見るからに使っている生地の質が違い、高級感と言うか成金感と言うか…。お金では買えない価値がありそうな服もたんまりと混じっていた。


「気にするな。倉庫で腐らせるよりはマシだ」

「そ、そんな!先程貰った服もそうでしたが、こんな…見ての通り私たちにはお返しできるものがありません…」

「いや、あるさ。とりあえず行き渡っていない者に着させてこい。他に怪我人がいたら纏めて見てやる」

「……分かり、ました」


金髪の女性はどこか釈然としない、不安げな様子で他の女性たちに声を掛け始めた。良いことをしているはずなのになんだろうか、少し罪悪感が…


『カナタ様、今よろしいでしょうか?』

『どうした?』


眠っているエルフの少女に、落ち着いた色の上着を着させているとリーゼからメッセージが飛んで着た。


『はい。こちらも村の中の掃討は先程終わったのですが…私の索敵で引っかかった生き残りは、隠れて避難していた子供達だけでした』

『そうか。子供たちに怪我は?』

『軽傷が何人か。その子たちはこちらで勝手ながら治療を施しましたので急を要する事はありません。パニエと子猫…ルピナは後続を掃討との事でしたが、私の索敵には引っかかりませんでしたし、そちらに村人は居ないと思います…』

『そうだな…念のため2人に確認してみるか…』


リーゼも範囲は狭いが索敵スキルを持っている。それに引っかからなかったということは、今ここにいる女性たちとリーゼが助けた子供達以外は全滅…。残るはラザエラが救出に向かっている女性と子供か。


『よし治療する相手が居ないのであれば俺はラザエラの援護に行く。リーゼは子供達を見ていてくれ』

『畏まりました』

『よし。パニエ、ルピナ聞こえるか?』

『お呼びですか?』

『こっちも終わりましたにゃ!カナタ様!!』

『良くやった。念のため確認するが、そちらに村人は居なかったか?』

『居ませんでした』

『居にゃかったです!』


『そうか…。ならば俺はこれからラザエラの援護に向かう。パニエとルピナはこっちで保護している女性たちの面倒を見てくれないか?できれば移動してリーゼが保護している子供達に引き合わせてやってくれ』

『畏まりました』

『了解にゃ!』


よし。後は女性たちに伝えてラザエラの援護に向かおう。


そうして、後から俺の代わりに仲間の女性が来ることを伝えてその場を後にする。

パートナー召喚画面からラザエラの現在位置を確認し走り出す。途中でシルバーファングのるいるいに乗り、村から少し離れた位置に点滅するラザエラのマーカーを目印にるいるいを走らせていった。






5000文字以上を常に書いてる人ってしゅごい…(¦3冫 ノ)ノ

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