調査
まさかの連続登校うにうに…φ(:3」∠)_
ルピナ、パニエ、ラザエラの3人に事情を説明し、再生誕の杖を使いオートリザレクションを3人に付与も完了した。
「外でリーゼが準備して待っている。行こうか」
と3人を促し屋敷の外に出る。
無駄に装飾がされてある玄関が開くと、屋敷から少し離れた先にリーゼはいた。
「待たせて悪かったリーゼ。準備?の方は大丈夫か?」
「委細、滞りなく」
「リーゼにゃ!黒いにゃ!加齢臭がするにゃ!」
「あら子猫のルピナちゃん。あなた小さいし弱いのだからカナタ様の足手纏いにならないように注意するのよ?」
「弱くないにゃ!」
あ、あれ〜?やっぱりもしかしなくても仲悪い?3人を召喚したときもルピナとパニエはリーゼのこと黒いとか言ってたけど…うーん。そんな設定書いた覚えないんだけどな…
「…口喧嘩は後にしてまずは屋敷の周辺の調査をする。護衛はラザエラに任せる。ルピナとパニエの看破と索敵を使用しつつ慎重に進むぞ」
「ご主人様。お言葉ながらこの森でしたら私1人で見通すことができると思いますが…」
パニエがおずおずと小さく手を挙げ発言する。
「あぁ、すまん。言ってなかったな。一応俺も自分の目で見ておきたいんだ。もちろん、危険があると分かれば屋敷に戻るつもりだ」
「そうでしたか。差し出がましいことを申しました。申し訳御座いません、ご主人様」
「謝ることじゃないさ、事実パニエが見てくれた方が早いのは分かっているしな」
確かに自分で足を運ぶより、パニエの能力で見てもらう方が安全で早い。だが、何となく。本当に何となくではあるが、自分の目で見ておかなければならない気がしたのだ。
「コール!シルバーファング、るいるい」
流石に徒歩では行く訳がなく、ペットで戦闘も乗り物にもなるシルバーファングを召喚する。ラザエラは少し離れて護衛してくれるらしいので乗らない。
「グルォオオォォ…」
召喚された銀色の巨大狼。ヒストリアオンライン内では複数人が騎乗でき、最大でPT単位で乗って移動ができるメジャーなペットだ。
「よしよし。るいるい、お前の背中に乗せてくれ」
シルバーファングのるいるいは、言葉を理解しているようにその巨体を伏せの状態にし、乗りやすくしてくれる。それでも背は高く乗りづらい。
俺がなんとか登りきり腰を落ち着けると、ラザエラを除いた3人は難無く騎乗する。
「……行くか。るいるい飛翔!」
そして全員が乗ったことを確認するとシルバーファングのるいるいは空に向かって走り出す。
そう。シルバーファングはある一定のレベルに達すると飛翔スキルを獲得し、空を翔けるようになる。
「おぉぉ…流石に現実で空を飛ぶと迫力が違うな。風が冷たーっ!るいるい、とりあえず真っ直ぐ進んでくれ」
「グルォォ!」
返事をするように一声鳴くと、るいるいは真っ直ぐに駆け出した。
俺の言葉は分かっているようだが、リーゼたちのように己の自我をペットたちは持っているのだろうか。
と少し疑問に思いながらも進む。見渡す限り起伏の無い森林が地平線まで続いている。
「…やはり目視で調査は時間がかかりそうだな…パニエ、済まないがやっぱりお前の力である程度周辺を見てくれないか?」
「畏まりました。すぐに分かりますので少々お待ちを」
パニエは目を瞑り、小声で詠唱を始める。そして数十秒も掛からないうちに、
「ご主人様。ここから南西の位置に人工物があります。これはおそらく集落…でしょうか」
「マジか!じゃない。本当か?距離はどのくらいだ?」
「凡そ10km程かと。…ちょっと待ってください。様子がおかしいです。…これは戦っている?いえ、襲われております」
「は?村が襲われている?一体何が起こっているんだ?るいるい!ここから南西に進んでくれ!出来るだけ早くだ」
とりあえずるいるいに指示を出しておく。どうなるか分からないが様子だけは見ておきたい。最悪戦闘になりそうだ。
「グルォオオオオオォォォ!」
るいるいはさらに高度を上げ速度を増し駆け出す。
「これは…ゼノア大陸で見た魔物と一緒?…襲っている者と村人たちの詳細が分かりました。襲っている者の正体は魔物です。赤黒いゴブリンとオーク…変異種のゴブリンとオークの群れです。そして襲われているのは…どうやら獣人種やエルフ…人間もいます」
「っ!?急げ!」
変異種のゴブリンとオークだと?何故そんなのがこんなところに…?
ヒストリアの設定では確か、魔物の変異種は数百匹に1匹の割合で生まれ、群れを成すことは無いとされている。そして変異種はその地域性を表した肌の色になりやすいらしく、色によって個体の強さも変わってくる。
赤黒いということはプレイヤーからすると上位種というほどではないが、一般人からすると災害に近い強さを誇る。
しかもゴブリンとオークか、まずいな…。
「ラザエラ!聞こえるか?この先に村がある。変異種の魔物に襲われているようだ。先に向かって様子を見てくれ。そしてできれば…」
「委細承知」
姿が見えないほど離れているはずのラザエラから、返事が少し食い気味に返ってくる。今いるメンツの中では彼女が1番足が早い。先に行かせて様子を探りつつ、出来るだけ助けてほしいという俺の思いを察してくれたのだろう。彼女はそういう性格だ。
だが逆に心配もあった。ラザエラは一対一ならば上級者プレイヤーでも負けることは万が一にも無い。だが複数人相手となると話は違ってくる。相手は変異種の魔物で、しかも群れをなしている。異世界に来て初めての戦闘になるかもしれないという不安もあり、ラザエラを先行させたことに少しずつ後悔に似た感覚がにじみ出てくる。
「…ラザエラ、絶対無理はするなよ」
小さく呟き、るいるいのスピードをさらに上げ走らせた。
ブックマークと評価してくれた方々、本当にありがとうございます。_(゜∀゜ 」 ∠)_