挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

ブックマークする場合はログインしてください。
この作品には 〔残酷描写〕 が含まれています。

ハンター・キラーのまかないさん

作者:リューガ
WEB小説支援サイトのサンクススクエアによる、11枚小説コンテストに応募しました。
さてさて、ライバルたちの出来は?
 ハンター。
 巨大にして狂暴な捕食者。
 増えすぎると人間や生態系にさえ被害を与える。
 ハンター・キラーは、ハンターを狩る者。
 現代の貴族。
 単にハンターを狩るだけなら誰でもできる。
 だがそれは、大型の爆弾で吹き飛ばす場合など。
 ハンター・キラーは、もっと繊細な技を使う。
 ハンターの体は利用価値がある。
 例えばドラゴンの皮膚や骨、爪は鋼鉄より硬く、高性能の武器や武器として使える。
 僕らが使う木と鉄だけの銃火器や、黒いウールデニムの活動服とはわけが違う。
 肉は珍味として知られる。
 ハラワタの内容物……つまりフンは大きな畑の肥料になる。

 僕はジェイソン。
 ビビッド・コープス。
 合さる歯車のシンボルを飾る、ハンター・キラー騎士団。
 その、まかないさんだ。
 仕事場は、超大型4輪駆動の装甲車。
 赤外線を照らして闇を見る、暗視装置もついている。
 食べ物やテント、ランプやレコードなどを積み、空ければ食堂や会議室として使う。
 全面板張りの車内はイスと机を並べれば、それなりのカフェにも見える。
 今はそこで、窓からサブマシンガンを撃っている!

「ダメだ! 敵が多すぎる! 」
 運転席とカフェの間には2連装マシンガンの銃座がある。
 ハリーが、銃座の仲間が叫んだ。

 周りは薄暗く深い、杉の森。
 何千年生きているのかわからない大木が、僕らが逃げ込むのを拒んでいるようだ。

 その奥から、銀色の巨大なきらめきがいくつも迫ってくる。
 人型でありながら、人間ではありえないほど筋肉と身長があり、頭から角をはやしたのは鬼か?
 火を吹くライオンの首と、冷気を吹くオオカミの首を持つハンター。
 足の生えた人食いサメのような水中ハンター。
 肉食だけでなく、明らかに草食の象やサイも交じっている。
 そして、ドラゴンらしきものが、次々に飛び掛かっては火を吹いてくる!
 何でこんなに種類が集まって、しかも群れて襲ってくるんだ!?
 さらに厄介なことに、その種類を確信できない。

 その理由は、この車の後を見ればわかるだろう。
 ハリーが運転していた6輪駆動のクレーン付きトラック。
 くそっ!
 「世界で一番止められない車」というキャッチコピーはなんだったんだ!?
 そのタイヤは、岩の隙間にはまって動けない。
 地図を描いた人は、道の定義がわかっていないに違いない。
 森に返りかけ、岩をヤブに隠した道だ。
 僕の車はトラックを引っ張りだすため、鎖でつないでいる。

 トラックの荷台には血をしたたらせて、ハンターがいる。
 鎖と柵によって無理やりたたまれた大きな羽。
 一番上には、とげの生えた長いしっぽが折り曲げられている。
 地上で体を支えたのは、鋭い爪がのびた4本足。
 張り出したあごにナイフのような牙が並ぶ。
 その口は真っ赤な火をふき、1キロ先にも命中させる。
 火の魔法を操る、ファイヤー・ドラゴン。
 でも、それは関係ないはずだ。
 ドラゴンも飛行生物だから、見た目よりは軽いはず。
 それをトラックの積載できる限界、6トン近くに重くする物。
 ドラゴンの剣の切っ先のようなウロコに、切られることなく根を張っている植物だ。

 歯車ラン。
 本来は真っ赤なはずのウロコに、葉をスーツのようにへばりつかせている。
 植物である以上、花は咲く。
 花だとは言われないと、わからない人がほとんどだろう。
 腕や足、胸などに、平たく重なって張り付いている。
 四角い花弁を四方に伸ばす鈍色の花。
 雪の結晶のようにも見える。
 この花は金属を主成分とする。
 その硬さは、防御の呪文を書き込み、僕らの装甲車の装甲にも使えるほど。
 歯車ラン自体は昔から知られていた。
 鉱山に近い土地で、生き物の死骸に生えるんだ。

 だけど、去年くらいから生きている生き物にも生えるようになった。
 生えたハンターが一緒に生活するようになる。というのもよく知られた性質だ。
 植物食も、肉食もいっしょに。
 それをビビッド・コープスの精鋭4人は、強行軍に次ぐ強行軍でようやく、一匹手に入れた。
 そう喜んでいたのに……!

 その時、僕らのボス、ミネルバさんがかけよってきた。
 もう50代のはずなのに、今も若々しく、たくましい。
 ファイヤー・ドラゴンのウロコを使った、分厚いヨロイの下からでもわかる。
 背中から、使い込まれた太刀を抜いた。
 自分の背丈より長くファイヤー・ドラゴンの羽と爪を使っている。
 これで荷台のドラゴンにとどめを刺した。
 その太刀を振り下ろすと、トラックにつないだ鎖はあっさり切れた。

 同時に、3人の騎士が現れた。
 銃撃を潜り抜けたハンターを、4人で防いでくれる。
 水や氷を使う、青いヨロイのジェニファー。
 武器は変幻と勢いを合わせ持つ片手剣と、打撃力も大きいふくらみのある丸い盾。
 黄色は質量と破壊力を持つ土の色。
 そのヨロイのオティエノさんは、巨大なハンマーで、銀色の鬼を押し返した。

 彼らこそ、真のハンター・キラー。
 ドラゴンを狩った4人。
 伝説の神獣が語る。
 未来から過去に向かって流れる、現在を形づくる情報をとらえ使う力が、魔法。
 通常の物理ではありえない現象を起こせる。
 それは、動物たちも同じだ。
 4人の騎士の乗る馬は、一度に何百メートルもジャンプできたり、水上でも走れたりする。
 また、ハンターの体を使った装備は、使用者が魔法を使えるなら新たな魔法を与えてくれる。
例えばファイヤー・ドラゴンなら、炎の魔法を与えてくれる。
 僕にはそんな運は訪れなかった。
 ハンター・キラーの武器を、持ち上げる事すらできない。

 緑のヨロイは風。
 武器は長い、ヤリ。
 その穂先は目にもとまらぬ速さで、はるか遠くの鉄塊さえ貫く。はずだった。
「ホープ? 」
 彼女は苦しげに体を丸めながら、車の後ろに馬をつけた。
 そこのドアを開けると、ホープの体が転がり込んできた。
 ヤリが道におちた。
 馬は、しつけられたとおり、ついてくる。

「おい! どうした!? 」 
 抱えた手にべっとりとした感触。
 血がべっとりと広がる。

 外からミネルバさんが叫んでいる。
「急いで! 逃げなさい! 
 それと、航空支援を申請しなさい! 」
 そう言って駆けだした。
 前にいるもう一台の装甲車に指示するためだ。
 あっちの役割は火薬庫。
 マシンガンの銃声に続き、森から爆音が響く。
 グレネード・ランチャーでも使ったんだろう。

 僕はホープの体を床に横たえ、応急処置セットを取りに行く。
「傷はどこだ!? 答えられるか?! 」
 ホープの意識はしっかりしていた。
 カブトと胸当てを外そうとしている。
 僕が外すと、きれいな顔のアゴから頬にかけて裂けていた。
 胸当ての下は、切れてはいないが内出血している。
 とっさに避けたのだろう。
 傷自体は深くない。
 でも、まともに立てないという事は、脳が揺さぶられたのかもしれない。
 車はすぐに動き出した。

「電信は俺がやる! 」
 屋根からハリーが下りてきた。
 僕らを見て息をのむ声がする。
 それでもボスからの指示どおり、隅にある電信席に飛び込んだ。
 電波を点や線に変え、その組み合わせで文字を伝える、あれだ。
 外ではオティエノさんとジェニファーが守ってくれている。
 僕は消毒のアルコールをガーゼにとり、ホープの傷をぬぐった。
 毒らしきものは、付着していないな。
 彼女は痛みが強まって顔をゆがめるが、それでも逃れようとはしない。
「ねえ、私から連絡が来なくて、ヤキモキした? 」
 痛々しいほほ笑みからでたのは、いつもどおりの涼やかな、でもか弱い声だった。
「当たり前だろ。電信機をもっていったくせに」
 クソっ! ハンターめ!
 ホープこそ、僕らのまとめ役だぞ。
 僕らの恐怖心に向き合ってくれた。
 ハンター・キラーと無能力者の分け隔てなく、扱ってくれた。
 今僕らの胸にあるバッチ。
 ちいさな歯車ランの小さい花を組み合わせてビビッド・コープスのバッチにしたのも、彼女だ。
 これは歯車のように、僕らの力をしっかり合わさる様にという願いが込めてある。

「よっしゃ!
 援軍が来るぞ。
 爆撃機がプロペラ響かせ、30分以内に来てくれる! 」
 無線席から、明るい声が聞こえた。
 ふと思った。
 こんな山の中、ちゃんと見つけてくれるのか?

 その時、強い振動が襲い、窓の外から飛び込む光が明るいオレンジ一色になった。
 僕は、ホープに覆いかぶさってかばう。
 直後、窓ガラスが割れ、車内に飛び散った!
 運転のエマが急ブレーキ。
 だが、すぐ走りだす。
「まだ大丈夫だよ! 」
 だが、後ろを走っていた馬は、ホープの愛馬アンソニーは、見えなくなっていた。
 と思ったら、天井からドカッという音がした。
 アンソニーだ!
 道に飛び下りて、また走りだす。

「クソっ! ハッチが熱い! 」
 ハリーはマシンガンのハッチに向かったが、開けられなかった。
 代わりに、胸に下げたサブマシンガンを窓から突きだす。
「ジェイも急げ! 」
 僕は呼び声にしたがうつもりだった。
 でも、ホープに止められた。
 そでを握られて。
「ごめん……なさい」
 何で、謝る?
 傷が痛むはずなのに。
「私は、あなたたちを利用したの」
 そう言って指差したのは、胸のバッチ。
「歯車ランの花には、魔力を集める性質がある。その可能性に気付いたの。
 正確には、取り付いた部分の魔法を、ね」
 それが、どうしたんだ?
 そのおかげで、この装甲車は無事だった。
「それだけじゃない。おそらく、歯車ランが持つ魔法の反応が、生えたハンターをひきつけ合う。
 私はその性質を利用することにした。みんなにバッチにして渡してね」
 君が?
 僕らの危険を無視して、歯車にしたっていうのか……!?

「なんで、というのは愚問かな。ハンターを狩れば、人の安全のためにもなる」
 僕はきっと、答えは違うと思いながら言った。
 やっぱりホープは首を横に振った。
「そうじゃない。私は、あなたたちが怖かったの。
 魔法なんか使わなくても、ハンターを狩れる人たちが。
 それはきっと、歴史さえ変えてしまう。
 今、私たちの持つ名声、富を失うのが怖かったの……! 」
 怖い……か。
 おそろいだ。
 だから僕も、告白することにする。

「実は僕、独立を考えてたんだ」
 彼女は痛みさえ忘れた様子で、目を点にした。
「人件費が、予算の何%を占めてるか、知ってる? 」
 僕は、彼女の手をほどき、立ち上がった。
 彼女もつられて、立ち上がる。
 残ったのは腰のピストルと、予備のアサルト・ライフルが2丁。
 ライフルの1丁をホープに渡した。
「こういう武器だって、このごろ値段がうなぎのぼりだよ。
 手柄の独占を狙うのが賢い方法だと思った。
 多分、援護に来る爆撃機パイロットだって、同じようなことを考えてるだろう」
 ホープは、おずおずと銃を受け取った。

「でも、独立は止めた」
 僕はこの時、ビビッド・コープスでいる資格を失ったのだろう。
 仲間を歯車として使いつぶすことを選んだから。
 ハンターにすべての原因押し付けて。
 それでも僕はやったんだ。
「やっぱりハンターは怖いし、君には生きていてほしいよ」
 この最後の一言だけは、真実になるよう祈りながら。

 ホープの手はもう、おずおずしていなかった。

 応援が来るまで、およそ20分。
 あとは、ホープの無事を祈る誰かが欲しいな。
ツギクルバナー

評価や感想は作者の原動力となります。
読了後の評価にご協力をお願いします。 ⇒評価システムについて

文法・文章評価


物語(ストーリー)評価
※評価するにはログインしてください。
感想を書く場合はログインしてください。
お薦めレビューを書く場合はログインしてください。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ