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患者

作者: 屋仁



腹の中を得体の知れない生き物が蠢いているようなのです。

腹の皮がぼごりぼごりと形を変えて、ごむのようにびにょりと伸びては蠢くそれに合わせてびにょりびにょりと形を変えます。

僕は其れが何時僕の腹を喰い破って産まれてくるのか気が気ではないのですが、腹の皮がびにょりびにょりとそれを押しとどめるのでどうにも産まれてきそうにないのです。

蠢きに僕がゼイゼイ息を切らしても、腹はぼごりぼごりと形を変えて其れをあやしつけますから、何時しかそいつは大人しくなりますので、僕の腹は静かになります。

僕の腹が静かでいても、其の中に得体の知れない生き物が居るのにはかわりありません。

ごむのようにびにょりと伸びきらなくとも、僕にはこの腹の中でぐうぐうと涎を垂らして眠る生き物の鼾が聞こえているようにも感じますから、落ち着ける時などございません。

いっそぼごりぼごりと蠢いている時の方が、ああ蠢いているとびにょりびにょりと伸び切る腹の皮を見つめて震えていられるのですから、僕としてはよっぽど落ち着いても居られるのです。

ああまた、ぼごりぼごりと蠢き始めました、びにょりびにょりと腹の皮が伸びきります。

薄い肉の皮がぐにゃりぐにゃりと形を変えて、僕の腹がぼごりぼごりと奇怪な音を立てております。

得体の知れない生き物が蠢いています、其れが僕の腹を喰い破って産まれてくるのをいっそ殺してくれという心持ちで待っているのですが、びにょりびにょりと伸び切る皮が其れを今もあやしております。

いっそのこと、先にこの首を落としていただきたいのですが、首の皮というのもびにょりぐにゃりと伸びるものかもしれません。

なにせこの腹と首の皮というものは繋がっておりますから。



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