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違和感

「それって誤魔化されてないのー?」


「誤魔化されてない……?」


私は秋津くんの言葉を反芻する。

意味がわからない。


「光ヶ丘くんが浮気してる……とは思えないけど……。」


結衣の発言に私はウンウン頷いた。

そんな不誠実な人じゃない。


「オレも浮気とは思わないけどー。

キスして良い事言ったらこいがくぼさんがワーッになってそれ以上追求しないと思ってるように感じる。」


「じゃあ光ヶ丘くんは中井さんたちと何してたの。」


秋津くんはベッドにゴロンと転がると「さー?」と気の抜けた返事をした。


私は天井を見上げた。


私は何故か秋津くんの家に居た。

というのも、放課後結衣と遊ぼうと思ったら秋津くんが何故か横から入ってきたからだ。

秋津くんは結衣にご執心らしい。

「オレの家おいでよー。」と言うとズルズルと秋津くんの家に連れられていた。


「……秋津くん、そうやって私をいじめてる?」


「違うよー!

たださ、こいがくぼさんってなんていうか……。ひかり……がおかくんの事になると、えーっと、馬鹿になっちゃうから。」


「馬鹿……。」


「あ、秋津くんは、アヤが光ヶ丘くんのことになると夢中になって細かいことに気付かないって言いたいんだよ。ね?」


「うん。」


いきなり罵られてびっくりした。

でも確かに私は光ヶ丘くんのことになると我を忘れてしまうことがある。

その最たるは学校の工具を漁って拝島くんの家に押しかけたことだろう。


「確かにその通り……。

で、でもどうして誤魔化してるなんて思うの?」


「うーん。多分ひかりおかくんって、こいがくぼさんが思ってるような人じゃないと思う。」


「どういう意味?」


「優しい人じゃないと思うってことー。」


「そんな訳ない。

光ヶ丘くんは私が困ってたら必ず助けてくれる。

結衣だって知ってるでしょ?

うちのお父さんが暴れた時、止めてくれたのは光ヶ丘くんなんだよ。」


私が図書室の本を落として怪我した時も、千川くんが喧嘩を始めた時も助けてくれたのだ。

これを優しいと言わずしてなんと言うのだ。

しかし結衣は頷かなかった。

ただ「私は怖いかな」と呟いた。


「こいがくぼさんのお父さん暴れたの?」


「え?

……ああ……うん。うちのお父さん暴れん坊将軍だから。」


秋津くんがいることをうっかり忘れて言ってしまった。

父親が屑だと人にあまり知られたくない。


「ふーん。

お父さん今どうしてるの?」


「さあ……?

捕まったんじゃない?私はよく聞いてない。

お父さんも別の病院に入院したらしいけど、そこから先は知らない。」


「そういえば、こいがくぼさんって入院したんだっけ。」


秋津くんは結衣にもたれかかって携帯を操作して何か調べ始めた。

結衣も一緒に携帯を見ている。


「こういうのってニュースにならないの?」


「こういうの?」


「暴れん坊将軍を逮捕したって。

タクシー運転手殴った人はニュースになってるのに。」


「さあ……?ニュースの価値もないんじゃない?」


「そもそもほんとに逮捕されたの?」


私は秋津くんを見た。

彼も私を見る。


「……お母さんに聞いてみないと……。」


「逮捕される時って、被害者に警察が話聞きに来ると思うけど。」


そんなことされていない。

……あれ?なんかおかしい……?


「入院してたのってなんて病院?」


「西武白獅子病院。小平さんのところ。」


「お父さんは?」


「……多摩湖白獅子病院……。」


「おんなじ系列だ。」


偶然だろうか。

私を殴った父親も私も小平さんの系列の病院に入院したことは。


「……偶然だと思う?」


「偶然じゃないなら何……?」


「ひかりがおかくんが何かしたんじゃない。

お父さんにいますぐ連絡取るべきだよ。」


頭がフワフワする。

私は言われるがまま携帯を取り出し、お父さんの番号に掛ける。

しかし「お掛けになった電話番号は現在使われておりません……」とアナウンスが流れるだけだった。


「……繋がらない……。

ば、番号変えたのかな。」


「アヤ……あのさ。」


結衣がおずおずと私の手を取った。


「光ヶ丘くんの周りにいる女の子って……全員権力がある……よね?」


「……権力?」


「小平さんは病院経営、中井さんは警察でしょ、鷺ノ宮さんと田無さんは政治家だっけ……?清瀬さんなんてこの学校の会長の孫だよ?」


「清瀬さんそうだったの!?」


「そうだよ。

って、そうじゃなくて。

おかしいと思わない?なんで光ヶ丘くんと仲のいい人は力があるの?」


おかしい。

まるで光ヶ丘くんは磁石のように吸い寄せている。


「……でも、光ヶ丘くんも力があるから……だからじゃないの?」


「逆かもしれない。

利用できそうな人を光ヶ丘くんが側に置いてるとしたら?」


「ど、どうしてよ。」


「最初からアヤを狙ってたんじゃない?

アヤのお父さんがその、どうしようもない人だって知ってて、消そうとしてたとか。」


そんなことあり得るだろうか。

私が光ヶ丘くんとまともに話せるようになったのはつい最近のことだ。

自分が彼がそこまでする必要のある人間だと思えない。


「あり得ないって……。」


「でも警察官も病院も協力してくれたら人1人消すの簡単そうじゃない?

警察が味方ならそもそも事件が起こらないわけだしー。」


わからない。何もわからない。

光ヶ丘くんは私の恋人で、クラスメイトで……。

私がまともという理由で私のことが好きだと言った人。

まともってどういう意味なのか。

あの時ちゃんと聞いておくべきだったのではないだろうか。


「私……。光ヶ丘くんに会って来る……。」


「ええ?私も行くよ。」


「オレもー。」


「いい。1人で行く。

お邪魔しました!」


私は秋津くんの家を転がるように出た。

走りながら光ヶ丘くんに電話する。

電話はすぐにつながった。


「光ヶ丘くん?

少し会って話せない?」

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