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かわいいワンちゃん

SMプレイの話です

「……それで、何を話せばよろしいんですか?」


沼袋さんは居心地悪そうに尋ねてくる。


「そう、ですね……。

じゃあまず、その痕を付けたのが誰か教えて頂けませんか?」


「これですか……。」


沼袋さんは自分の手首を擦った。

何度見ても綺麗な痕だ。


「……恋人ですか?」


「いえ……恋人は、今はいませんので……。

……その……風俗……です。」


「女王様ってことですか。」


「ああえっと……女王様ではなくて……」


沼袋さんはもごもごと言い淀む。

なんとなくそれで察する。男か。


「……沼袋さんは女性に興味ないんですか?」


「その……それに関してはあまり性別に拘りはありません……。

恋人は女性が良いんですが……。

それは、男でも女でも……相性と言いますか……。」


「相性?」


「……何事にも大事なことですから。」


詳しくは話したくなさそうだが、私にはとっても大事な所だ。


「相性って具体的には?

話しやすいとかですか?」


「話しやすさはそうなんですけれど…………私は……し、ばられるのが、好きなので……。それが上手な方が……。」


沼袋さんの顔は真っ赤だ。

可愛らしい。


「緊縛が。

気持ちいいんですか?」


「………………はい。」


私の視線に耐えられないとばかりに、沼袋さんは下を向く。

彼は根っからのマゾヒストなのだろう。

虐めてほしいと全身から滲み出ている。

これは、そういう趣味の人は放っておかないだろう。


「痕って消えないんですか?」


「痕……は、普段はこんな、残さないんですけど……ちょっと……盛り上がり、まして。」


「全身に?」


「腕と、お腹に少し……。」


緊縛の種類に詳しくないけれど、上半身だけを縛る縛り方をされたのだろう。

何縛りと言っただろうか。


「ええっと、プレイに手錠とか手枷とかもありますよね?

そういうのはやらないんですか?」


「聞いてどうするんですか……?」


「うーん、参考までに?」


彼は私と顔を合わせずに、テレビの方を見ながら答えた。


「使う時もありますけど……。それは家で出来るので……。」


「家で?ってことは、道具が家にあるってことですよね?」


しまった。

彼の顔中にそう書いてあった。


「あるなら見せてください。お願いします!」


「ダメです!」


沼袋さんは首をブンブン振って否定した。

その顔は真っ赤だ。


「お願いします!

私、生で見たくて見たくて、このままじゃお父さんのクレジットカードで買っちゃいそうなんです!

これがお父さんにバレたら家族会議です!お父さん泣いちゃいます!」


「買わないでください!」


「お母さんは受け入れられない娘の性癖に理解を示そうとして微妙な空気が流れてしまいます!兄とうまく話せなくなります!

妹に悪影響があったらどうしましょう、まだ12歳なんです!

こんなの家族でアダルトビデオ見た方がマシです!」


家族会議なんてたまったもんじゃない。

父は「犬の首輪と間違えたんだよな!う、うっかりさんめ。」と泣きながら言うだろう。母は黙ってカボチャを切るかもしれない。

妹はまだわからないだろうが、兄はどんな気持ちになるだろう。

多分「お、お前面白いもん買ってるな……。罰ゲームか?はは……。」と誤魔化そうとして失敗するだろう。


「そこまでわかってるなら買わなければ良いだけでしょう!」


「欲望が抑えられない!」


「お、大声でそんなこと言わないでください……!」


「お願いします!

見せてくれるだけで良いので……!

お父さんのクレジットカードと親子関係の為にも……!」


私が身を乗り出してお願いすると、沼袋さんは諦めたのか「見せるだけですよ……。親御さんの為ですからね……。」と言って部屋の奥に引っ込んでいった。

暫くすると黒い革の物体を持って戻って来た。

これが手枷……?初めて見た……。


「意外と……しっかりしてるんですね。」


「……そうですか。」


沼袋さんは不機嫌そうだ。

恥ずかしいのを誤魔化しているのだろう。

首まで赤くなっているし。


私はそっと手枷を沼袋さんから奪う。


「あ、」


「触るだけです!壊しません!」


3つの革の輪っかが革紐で繋がっている物のようだ。

大きい輪っかが首輪で、残り2つが手枷だろう。

首輪を付けて後ろ手に手枷を付けるのだ。

……想像より激しい。最高だ。


「もう良いでしょう……?」


「もう無いんですか?拘束具。」


「あったとしても見せません。」


「そうですか。

……わかりました。ギャグボールはお父さんのクレジットカードで買って本物を見ます。」


沼袋さんは「その脅しやめてください……」と言いながら奥に引っ込んだ。

ギャグボール持ってるんだ。

私はそっと沼袋さんの後をつける。


彼は奥の部屋の衣装ケースを漁っていた。

かなりの数だ。ど変態だ。


「凄いですね。」


「わあ!!!

なんでいるんですか!戻ってください!」


「沼袋さんって本物の変態ですね。」


私は彼の横に座り衣装ケースの中を見る。

沼袋さんは衣装ケースの蓋を閉じようとしたのでその前に手を挟んで自分の方に引き寄せる。

沼袋さんはそれ以上手を出しようがないのかオロオロしていた。

小娘に手をあげるつもりはないのだろう。


それにしてもこの衣装ケースはすごい。

首輪、リード、ギャグボール……。選び放題だ。バイキング出来る。


「これどう使うんですか?」


びろんと伸びた革紐を見せる。

多分ハーネスだろうか?付けてくれないとわからない。


「もうやめてください!」


「……これは……?」


リードと首輪だろうか?

その割に輪っかが細い。首はおろか男の手首にはキツイと思われる。女用?

かかげて見せると沼袋さんは顔をさらに赤くして取り上げた。

なんだったんだろう。私ももっと勉強しなくては。


「ああ、これなら分かりますよ。」


手錠だ。

自分の片腕にはめてみるとしっかり閉じた。

チャチなおもちゃではなさそうだ。


「あ、外れない。

鍵ってどこにありますか?」


沼袋さんは側に転がっていた鍵を取り出すと黙って私の腕を取り手錠を外そうとしてくれた。

その瞬間を狙っていた。

私はその手を掴んで手錠を掛ける。


「えっ、」


「鍵は預かりますね。」


小さな銀色の鍵を自分のスカートに仕舞う。


「な、にを……」


彼は困惑していた。

意味がわからない、という感じだ。


私はすみませんと笑って言って彼に首輪を付ける。

その先にはリードが繋がっている。


「鷺ノ宮さん……!」


「騙すようなことしてすみません。

着けたところ見たくて……。」


「外してください!」


「もちろんです。」


私はそう言いながら彼のネクタイを緩めて抜き取る。

そのまま彼の目を覆った。


「鷺ノ宮さん!何してるんです!?

やめてください。今ならまだ……」


「今ならまだなんですか?

警察に通報しないとか?」


私は少しだけリードを引っ張った。


「15歳の女の子連れ込んで、こんなプレイさせるなんて最低ですよね。」


「これは貴女が無理矢理……!」


「もちろんですよ。

でも、世間はそう思いますかね?

沼袋さんって幾つですか?30くらい?

30の男が、15歳の小娘にこんな風に拘束されちゃうなんてそんな情けないこと普通思いませんよ。」


沼袋さんの喉がグッと鳴る。

慌ててリードを緩める。少し引きすぎただろうか。


「すみません、苦しかったですか?」


「いえ……そうじゃなくて……。

貴女の望みが分からない。

私をどうしたいんです?」


「どうって……。

そこにエレベストがあるから、といいますか。

そこにあなたがいて、道具もあったから。」


「ふざけないでください……!」


私はまたリードを引いた。今度はさっきより強めに。


「ふざけないで?

あなたもこうなることを望んでいたんでしょう?

ゆっくり話がしたいと言っただけなのに、私を家に呼んで。道具を見せろと言えば見せて。今だって、前側で手錠してるんです。本気になればそのまま私を殴って鍵を奪えばいい。

それをしないのはどうしてですか?あなたが本気で嫌ならそうするべきでしょう?」


「殴るなんて、出来ません……」


沼袋さんは弱々しく首を振った。

その度、首輪の鎖がジャラジャラと心地いい音を出した。


「足払いでもいいでしょう?それも出来ないのはどうしてです?

それは、あなたはこんなちょっとの拘束でも服従しちゃうドの付くマゾヒストだからじゃありませんか?」


「違います……!」


「いくら口で否定しても無駄ですよ。

そんな顔赤くして息荒くして喜んじゃって。

翡翠くんも可哀想。身近にこんな変態がいるなんて。まさか翡翠くんに手出してないですよね?」


「そんなわけないでしょう!

お願いですから、もうやめてください……!」


私はリードを緩めた。

彼の体がガクンと崩れる。

私は沼袋さんの髪に触れた。整髪料で固められた髪は少し乱れていた。


「大丈夫ですよ、沼袋さん。

性交渉しなければあなたは捕まったりしませんから。

それともしたかったですか?」


「まさか!」


「ならほら、安心して?」


彼の頭を抱える。

沼袋さんは震えながら私の肩口に頭を擦り付けてきた。


「私、絶対このこと誰にも話しません。

というか、話せません。翡翠くんには特に。

だからちょっとだけ、付き合ってください。」


私は彼を少し離してネクタイの目隠しを外した。

彼は泣きそうな顔で私を見つめた。まるで子供だ。


「……僕を、どうするつもりですか?」


「酷いことはしません。

拘束したり叩いたりするだけです。写真撮ったりとかの証拠に残ることはしませんし、あなたの嫌なことは絶対しません。」


「本当に?」


私は笑って沼袋さんの頬を撫でる。


「約束します。」


その言葉に沼袋さんは安心したのか、ホッと息を吐いた。

私はその彼の柔らかくて赤い唇を撫でた。



「ねえ、沼袋さん。お口が寂しくないですか?」


私は沼袋さんにギャグボールを見せつける。

意味が分かった彼は頬を赤らめながら「……はい。」と淫らに笑った。

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